The Japanese Journal of Antibiotics
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49 巻, 1 号
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  • カルバペネム系化合物を中心に
    砂川 洵, 納田 浩司
    1996 年 49 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1928年のA. FLEMINGによるペニシリンの発見がその1頁を開いた, いわゆるβ-ラクタム系抗生剤の歴史は長く, ペニシリンが初あて医薬品として開発されて以来, 50年が経過した。その間, ペニシリン, セファロスポリンに代表される多くのβ-ラクタム系抗生剤が, 医療に多大に貢献してきていることは良く知られるところである。
    β-ラクタム系抗生剤が, 優れた抗菌活性を示すのみならず, そのメカニズムが細菌特有の細胞壁の合成阻害であることから細菌に対する選択毒性が極あて高く, 臨床において副作用の発現が少ないこと即ち, 安全性が高いことが, β-ラクタム系抗生剤が臨床の場で使い安い抗菌剤としての不動の地位を維持してきたと言える。
    事実, β-ラクタム系抗生剤の臨床の場における副作用は, アナフィラキシーショックを除けば抗菌メカニズムが異なる他の抗菌薬と比較し, その安全域の広さと障害の重篤さのいずれにおいても明らかに勝っている。しかしながら, その様に安全性が高いと考えられるβ-ラクタム系抗生剤も, 臨床においてショック以外の副作用が全く発現しないのではなく, 古くからアレルギー症状1, 2),腎毒性3), 消化器系副作用4), あるいは中枢性副作用5) などの副作用が報告されている。消化器系副作用については軽微なものが殆どであり, ショックやアレルギー, 腎毒性については各々, 皮内反応による事前チェック1)あるいは血液生化学的モニタリングなどによる対応がとられている。一方, 中枢性副作用の発現については, 中枢神経系障害, 腎不全など幾つかのリスクファクターが明らかになっているものの6), 的確なモニタリングが困難であり, まれにではあるが重篤な症状を呈するケースが報告されており7), 臨床上重要な副作用と考えなければならない。
    β-ラクタム系抗生剤に付随する中枢性副作用に関しては, 中枢性副作用が報告されているペニシリン系, セファロスポリン系抗生剤を用いたIn vitro8)及びIn vivo実験9~11) あるいは, それらの脳内移行性 (脳血液関門の透過性等) 12) についての研究が既に報告されているが, 薬剤の構造との関連即ち, 中枢性副作用についての詳細な構造活性相関研究はほとんど行われておらず, 僅かにセフェム系抗生剤について痙攣誘発性の高い抗生剤にはテトラゾール基, チアジァゾール基, ピリジン基などが側鎖に含まれていると報告されているにとどまっている13, 14)。カルバペネム系抗生剤については開発された薬剤も少なく, その中枢性副作用と構造についての詳細な報告は皆無である。
    我々は, β-ラクタム系抗生剤の中枢性副作用を克服するたあには脳血液関門の透過性を抑制するアプローチよりも, 化合物自身が中枢への作用を示さない薬物設計が, より本質的なアプローチであると考えるとともに, ペニシリン系, セファロスポリン系抗生剤と構造的に異なったカルバペネム系抗生剤であるImipenem (IPM) がペニシリン系, セファロスポリン系抗生剤と同様, 痙攣誘発という中枢性副作用を有する15, 16) ことに注目し, カルバペネム系化合物と中枢作用に関する構造活性相関を検討し, 同時に従来から知られているペニシリン系, セファロスポリン系抗生剤の中枢作用についてカルバペネム系化合物との比較という観点で考察を加え, 興味深い結果を得たので本稿で報告する。
  • RYOCHI FUJII, TOSHIAKI ABE, TSUYOSHI TAJIMA, ITARU TERASHIMA, HIDENORI ...
    1996 年 49 巻 1 号 p. 17-33
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    An investigation was made into pharmacokinetics and clinical effects of the newly-developed cephem antibiotic for injection, cefozopran (SCE-2787, CZOP), in pediatric patients.
    In 26 patients in whom pharmacokinetics were investigated, peak serum concentrations of CZOP administered at doses of 10, 20 and 40 mg/kg by i. v. injection were 21.3±10.0 (mean±standard deviation), 51.0±9.9 and 68.3±0.7 μg/ml, respectively. Serum concentrations at 6 hours after administration were 2.9±1.7, 2.3±0.9 and 4.6±2.6μg/ml, with the levels roughly above MIC90s for dominating pathogenic bacteria being maintained until 6 hours after treatment.
    Urine concentrations were in the range between 200 and 560μg/ml at 4 to 6 hours after dosing. Cumulative urine excretion accounted for 70 to 80% of dose.
    In 11 patients in whom pharmacokinetic investigations were performed, peak serum concentra tions of CZOP administered at doses of 10, 20 and 40 mg/kg by 30-min. i. v. drip infusion were 37.1, 66.3±25.5 and 95.7±8.9μg/ml, respectively. Serum concentrations at 6 hours after dosing were 1.6, 2.3±0.8 and 3.0±10.4μg/ml, respectively, with the levels above MIC90s for dominating pathogenic bacteria also being maintained until 6 hours after administration.
    Urine concentrations were 190μg/ml or more until 8 hours after dosing and the cumulative urinary excretion accounted for 50 to 70% of dose.
    In 9 patients with meningitis in whom CZOP penetration into cerebrospinal fluid was investigated, concentrations in the fluid of the compound i. v. injected at doses from 40 to 53 mg/kg were in the range between 1.6 and 43.4μg/ml exceeding MICs for pathogenic bacteria at 1 to 1.5 hours after dosing.
    In all of the 38 patients in whom pharmacokinetic investigations and clinical evaluations were performed, CZOP was good to excellent (excellent in 22 patients and good in 16 patients). Also in bacteriological evaluations, all of the 31 strains of investigated pathogenic bacteria were eradicated.
    The clinical efficacy rates for the 335 subjects for clinical evaluations were 97.0% (195/201) for patients in whom pathogenic bacteria were detected (group A), and 95.5% (128/134) for patients in whom no pathogenic bacteria were detected (group B).
    In bacteriological evaluations, the eradication rates of Gram-positive and Gram-negative bacteria were 96.3% (77/80) and 94.5% (155/164), respectively, with the eradication rate in total being 95.1% (232/244).
    Safety investigations were performed in 364 patients. Adverse reactions were reported in 11 patients (3.0%), including diarrhea (aqueous stool and soft stool) in 7 patients (1.9%) and drug rash (rash, eruption and wheal) in 4 patients (1.1%). Abnormal laboratory test values were noted in 54 patients, including eosinophilia in 20 patients (6.3%) and elevated GPT in 20 patients (6.3%). The adverse reactions and abnormal laboratory test values were not serious, disappearing or improving during the continued treatment period or as a result of discontinuation of the treatment.
    Serum and urine concentrations of CZOP, when administered by i.v. injection and 30-min. i. v. drip infusion at doses of 10, 20 and 40 mg/kg, were higher than the MICs for pathogenic bacteria until 6 hours after dosing. The drug also showed favorable penetration into cerebrospinal fluid. It was therefore considered that CZOP was a highly useful drug for the treatment of pediatric infections with sufficient bacteriological and clinical efficacy when administered at a dose of 40 to 80 mg/kg three to four times daily.
  • 池本 秀雄, 渡辺 一功, 森 健, 猪狩 淳, 小栗 豊子, 小林 邦彦, 佐藤 清, 松宮 英視, 斎藤 玲, 寺井 継男, 丹野 恭夫 ...
    1996 年 49 巻 1 号 p. 34-70
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我々は1981年以来全国各地の病院・研究施設と共同で呼吸器感染症分離菌を収集し, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性, 患者背景と分離菌などを経年的に調査してきた1~8)。今回は, 1992年度の調査結果を報告する。
    1992年10月~1993年9月の間に全国20施設において, 呼吸器感染症患者549例から採取された検体を対象とした。これらの検体 (主として喀痰) から分離され, 起炎菌と推定された細菌は690株であった。このうち, MICの測定ができた菌株数は669株であった。その内訳はStaphylococcus aureus 101株, Streptococcus pneumoniae 121株, Haemophilus influenzae 122株, Pseudomonas aeruginosa (non-mucoid) 92株, Pseudomonas aeruginosa (mucoid) 32株, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis 52株, Klebsiella pneumoniae 28株, Escherichia coli 5株などであった。
    主要菌株の抗菌薬に対する感受性は, 各薬剤とも前年とほぼ同様の成績を示した。S. aureusではOxacillinのMICが4μg/ml以上の株 (methicillin-resistant S. aureus) が62株, 61.4%を占め, 前年に比べ耐性菌の発現頻度に上昇傾向が認あられた。
    又, 患者背景と感染症と起炎菌の推移等についても検討した。
    患者背景については, 年齢別の分布では高年齢層の感染症が多く, 60歳以上が60.8%を占あ, 高齢者の割合は前年とほぼ同程度であった。疾患別の頻度では, 細菌性肺炎, 慢性気管支炎がそれぞれ30.4%, 29.5%と多く, 以下気管支拡張症, 気管支喘息の順であった。疾患別の起炎菌の頻度についてみると, 細菌性肺炎ではS. pneumoniae 20.4%, S. aureus 19.4%, P. aeruginosa 17.5%, 慢性気管支炎ではH. influenzae 22.2%, S. pneumoniae 15.1%, 気管支拡張症ではP. aeruginosa 37.5%, H. influenzae 18.8%, 気管支喘息ではS. pneumoniae 29.8%, H. influenzae 21.3%, P. aeruginosa 14.9% が上位を占あた。
    抗菌薬の投与の有無日数ごとにみた分離菌についてみると, 投与前に分離頻度が多い菌はS. pneumoniae 24.4%, H. influenzae 23.4% である。一方, S. aureus 18.6%, P. aeruginosa 29.9%では逆に投与後に頻度が多い傾向を示したのは前年と同様の結果であった。又, 投与期間が8~14日の例では, 前年同様P. aeruginosa 24.2% と頻度が多く, 4~7日ではS. aureus 及びP. aeruginosa がそれぞれ25.6%と分離頻度は高かった。
    因子・手術の有無によるMRSAの分離頻度は「有り」で70.7%(53/75),「無し」で34.6% (9/26) となり, 因子・手術の有りの例でMRSAの分離頻度が高い傾向を示した。抗菌薬の投与前後におけるMRSAの分離頻度は「投与前」で40.4% (19/47),「投与後」で85.7% (36/42) となり, 抗菌薬投与後で明らかに高値を示した。
  • 第1報 Pseudomonas aeruginosa を対象とした成績
    鈴木 由美子, 古口 昌美, 田中 節子, 深山 成美, 石原 理加, 小田 清次, 出口 浩一
    1996 年 49 巻 1 号 p. 71-82
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新鮮分離Pseudomonas aeruginosaを対象としたCefpirome (CPR)と, 各種抗生物質の試験管内抗菌併用効果の検討を目的に, CPR単独とCPRと他薬剤の併用による最小発育阻止濃度 (MIC) を測定して, 以下の結果を得た。
    1. Piperacillin (PIPC), Aztreonam (AZT), Imipenem (IPM) との併用, すなわちCPR+β-ラクタム系薬剤 (β-Lactams) の併用効果は, 抗菌スペクトルの拡大と共に, CPR又は併用薬剤のsub-MIC濃度存在下における抗菌力の増強が認められた。sub-MIC濃度存在下における効果はCPR+PIPC及びCPR+AZTは強く, CPR+IPMはやや緩慢であり, それらの併用効果は双方の薬剤に対する感性株においては生じるが, 双方に対する耐性株では生じる可能性が少ないことが示唆された。また, CPR+Fosfomycinの併用効果はCPR+PIPC, CPR+AZTとほぼ同様な傾向が認められた。
    2. Gentamicin, Tobramycin, Amikacinなど, CPR+Aminoglycosides (AGs) の併用効果は共通して抗菌スペクトルの拡人と共に, CPR又はAGsのsub-MIC濃度存在下における抗菌力の増強が生じており, CPR耐性株に対する効果も同様であった。しかし, AGs耐性株においては併用効果は低かった。
    3. CPR+β-Lactams,CPR+AGsのいずれにおける併用効果も,対象株の薬剤感受性に依存していたことから,これらの併用による有用性は起炎菌の薬剤感受性の検討を避けて論じることはできない。
    4.上記いずれの組み合わせにおいても, 拮抗を示唆する結果は認あられなかった。
    Cefpirome (CPR)は, ヘキスト社とルセルーユクラフ社が共同で開発した注射用のセフェム系抗生物質である1-8)。CPRは各種細菌が産生するβ-ラクタマーゼに安定であると共に,β-ラクタマーゼに対する結合親和性が低く, 更に透過性が向上している1-4)。その結果, CPRはStaphylococcus spp.やGlucose nonfermentative Gram-negative rods (G)NF-GNR にも抗菌スペクトルが拡大された。
    我々は既に多剤耐性菌を対象としたCPRの抗菌活性に関する検討を行っているが8), 今回はCPRの抗菌スペクトルと抗菌作用を考慮して,(G) NFGNRの多菌種を対象としてCPRと各種抗生物質の試験管内における抗菌併用効果を検討した。本論文はその第1報である。
  • 鈴木 由美子, 古口 昌美, 田中 節子, 深山 成美, 石原 理加, 出口 浩一, 小田 清次, 中根 豊, 福本 寅雄
    1996 年 49 巻 1 号 p. 83-94
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1995年に検出した化膿性髄膜炎及び肝・胆道系感染症由来株を含む臨床分離菌株に対するCeftriaxone (CTRX) の抗菌活性を検討することを目的に, 対照薬剤を含めた最小発育阻止濃度 (MIC) を測定して, 以下の結果を得た.
    1. Benzylpenicillin低感受性又は耐性株を含むStreptococcus pneumonioe, 及びβ-ラクタマーゼ産生Haernophilus influenzaeに対するCTRXのMIC90は0.05μg/ml,≤0.025μg/mlであり, CTRXが示したこれらの値は対照薬剤に勝っていた.
    2. Extend broad-spectrum β-lactamase (EBLA) 産生が示唆されたEscherichia coli, Kleb-siella pneumoniae subsp. pneumoniaeに対するCTRXのMIC分布は, Ceftazidime,Flomoxefなどに勝っていた.
    3. 上記の結果からは, 市中肺炎, 化膿性髄膜炎及び肝・胆道系感染症に対するCTRXの有用性が示唆された.
  • 村上 修一, 三砂 將裕, 東内 真一, 中西 昌嗣, 小川 亮介, 和気 敦, 永田 一彦, 森 直樹, 塚田 順一, 中田 浩一, 織田 ...
    1996 年 49 巻 1 号 p. 95-105
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    今回我々は, 急性骨髄性白血病, 急性リンパ性白血病, 悪性リンパ腫, 成人T細胞性白血病, 多発性骨髄腫等の造血器疾患に合併した深在性真菌症に対するFluconazoleの臨床効果について多施設で検討した。
    Fluconazoleの経口剤または注射剤のいずれかを79例の深在性真菌症患者に100mg/日から400mg/日を投与したが, そのうち60例で臨床効果が判定可能であった。60例の深在性真菌症のうち27例が確診例で,33例が疑診例であった。
    有効率は確診例で81.5%(22/27), 疑診例で57.6%(19/33), 合計68.3% (41/60) であった。本検討では自覚症状を伴う副作用は認あられなかったが, 臨床検査値異常は9例 (11.4%) に認あられ, その内訳はGOT, GPT,Al-P, LDH,総ビリルビン, 尿蛋白, 血清ナトリウム, 血清クロールの軽度上昇, および血清カリウム軽度減少が認あられた。
    以上, Fluconazoleは造血器疾患に合併した深在性真菌症に対して優れた有効性と高い安全性を有する薬剤と考えられた。
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