1994年6月から翌年5月までの間に全国10施設において, 尿路感染症と診断された患者から分離された菌株を供試し, それらの各種抗菌薬に対する感受性を測定した。尿路感染症患者から分離された菌の内訳は, グラム陽性菌が26.8%であり, その約40%は
Enterococcus spp.が占めていた。グラム陰性菌は73.2%であり, 最も多く分離されたのが
Escherichia coliであった。これらの菌に対する抗菌薬の効果をみると
Enterococcus faecalisに対してはAmpicillin (ABPC), Imipenem (IPM) の抗菌力が最も強かった。
Staphylococcus aureusに対して最も強い抗菌力を示したのはVancomycin (VCM) で,ついでArbekacin (ABK) が良好であったが, 他の薬剤は弱かった。
Staphylococcus epidermidisに対してはMinocycline (MINO) の抗菌力が最も強く, ついでABKが良好であった。1993年度とMIC
90で比較するとMINOのMIC
90が32μg/mlから0.25μg/ml, セフェム系薬剤が64~256μg/ml以上から2~16μg/mlと良くなった。
Citrobacter freundiiに対しては,Gentamicin (GM) の抗菌力が最も強く, ついでIPMが強かった。
Enterobacter cloacaeに対してはIPMの抗菌力が最も強く, ついでGM, Amikacin (AMK), Ciprofloxacin (CPFX) 及びTosufioxacin (TFLX) の抗菌力が強かった。
E. coliに対しては, ほとんどの薬剤が良好な抗菌力を示したが, ペニシリン系薬剤は弱かった。
Klebsiella pneumoniaeに対してはCarumonam (CRMN) の抗菌力が最も良好であった。
Proteus mirabilis に対しては全般的に抗菌力は良好であったがMINOのMIC
90は128μg/mlと悪かった。1993年度とMIC
90で比較するとCefmetazole (CMZ) のMIC
90の値が16μg/mlから2μg/mlと良くなった。
Pseudomonas aeruginosaに対しては全般的に抗菌力は弱く, 最も抗菌力が強かったIPMでもMIC90の値は8μg/mlであった。
Serratia marcescensに対しても全般的に抗菌力は弱かったが,IPMのMIC
90が1μg/ml, CRMN及びGMのMIC90が2μg/mlと比較的良好な抗菌力を示した。また1993年度と比較しても全般的に感受性は良くなっていた。
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