The Japanese Journal of Antibiotics
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51 巻, 12 号
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  • 日本におけるコンセンサスを求めて
    相川 直樹, 谷村 弘, 河野 茂, 吉田 稔
    1998 年 51 巻 12 号 p. 721-734
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    深在性カンジダ症は白血病などの好中球減少患者に好発する感染症と考えられていたが, 近年, 外科あるいは集中治療室 (以下ICUと称す) 入室患者などの好中球非減少患者に発症する深在性カンジダ症も増加傾向にあることが, 欧米を中心に報告されてきている1.2)。The European Prevalence of Infection inIntensive Care (EPIC) による調査3) では, ICUにおける院内感染症の起炎菌の中で, 真菌は5番目に多く検出されていた。この増加の原因としては, 外科ならびにICU領域における, 広域スペクトル抗細菌薬の繁用, 免疫抑制薬, 抗癌薬の使用の増加, 中心静脈栄養の多用など, 深在性カンジダ症発症のリスクファクターの増加が考えられる。さらに, 医療技術の進歩によりICU入室患者の生存率が改善され, 入院期間が延長したことも深在性カンジダ症の増加に関係している。この中でも, 広域スペクトル抗細菌薬の繁用は腸管内常在菌叢を撹乱し, カンジダ症を発症しやすくするとも考えられ, 重要なリスクファクターとなる。
    深在性カンジダ症のmorbidityとmortalityに関するWEYら4) のmatchedpair法を用いた研究では, カンジダ血症は死亡の38%に寄与しており, カンジダ血症を発症したものの生存した患者の入院日数は, 対照患者に比較して平均30日も延長した。また, 好中球非減少患者において, カンジダによる眼内炎は失明など予後不良なため問題となっている。わが国においても, 真菌性眼内炎の頻度は, 中心静脈栄養施行患者の3%, カンジダ血症発症患者の約40%と報告5・6) されている。
    消化管にコロナイゼーションしているカンジダは, 消化管の大手術, 外傷および熱傷, 免疫抑制薬などの影響による消化管粘膜のintegrityの減弱により, 血中に移行することが知られている7・8) ○近年, このことが深在性カンジダ症の発症の原因の一つと考えられている。このように, 好中球非減少患者における深在性カンジダ症に関して, 最近多くの知見が得られるようになった。
    しかしながら, 深在性カンジダ症は, 血液など本来無菌である部位からの培養が陽性となる以外に, 確定診断することが困難である。このため, 臨床の現場では深在性カンジダ症の診断および治療の開始が遅れ, 予後の悪化をまねいており, 早期診断, 早期治療の必要性が認識されつつある。この点に関して, 欧米では, 好中球非減少患者における深在性カンジダ症の診断および治療のガイドラインが提案9 {12) されている。しかし, わが国ではいまだその診断と治療において必ずしも十分な議論がなされておらず, 施設あるいは主治医によって様々な考え方のもとに診療が行われているのが現状である。
    一方, わが国では, 血清学的補助診断法として, 真菌細胞壁構成成分であるβ-D-glucanを検出する方法や, Condida抗原を検出する方法が実用化されて, 深在性カンジダ症の存在を推測することが可能であるが, 欧米では血清学的補助診断法はあまり普及していない。このような背景から, わが国独自の深在性カンジダ症の診断および治療のガイドライン作成が必要と考えられる。
    そこで, 深在性カンジダ症の診断・治療のガイドラインの基礎となる情報を得ることを目的として, 会議を開催した。会議では, 全国の深在性真菌症の診断と治療に携わる機会の多い臨床家の参加を得て, 好中球非減少患者に発症する深在性カンジダ症の診断方法, 抗真菌薬の投与開始のタイミング, 投与薬剤の選択・投与・量に関して, 臨床現場での現状あるいは考え方などの情報を収集した。
  • 加藤 大典, 花木 秀明, 崔 龍洙, 小栗 豊子, 平松 啓一
    1998 年 51 巻 12 号 p. 735-745
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 (coagulase-negativestaphylococci: CNS) のVancomycin (VCM) とTeicoplanin (TEIC) に対する感受性及び培地の影響について検討した。Staphylococcus epidermidisの1980年~1981年分離菌に対するVCMとTEICのMIC値をNCCLSの基準で測定するとMueller-Hintonagar (MHA) とBrain Heart Inhsion agar (BHIA) のどちらの培地を用いた場合でも, 両薬剤に対して全て感性であった。また, 1994年~1997年分離菌のVCMに対する感性率はMHAで99.2%, BHIAで68.0%であった。同様に, TEI℃ に対するMHAとBHIAでの感性率はそれぞれ97.5%, 77.9%であり, 年次的に感性率は低下していた。1994年~1997年に分離されたS.epidermidisS. haemolyticusのそれぞれについて, VCMのMIC値 (BHIA) が8μg/ml以上の各3株と, MIC値 (BHIA) が4μg/ml以下の各3株, 計12株のVCMに対するpopulation解析を行った。その結果, MIC値 (BHIA) が8μg/ml以上のS.haemolyticus 3株では, 107CFU/100μ1の菌数の生育を完全に抑制するVCM濃度は32μg/mlであり, MIC値 (BHIA) が4μg/ml以下のS.haemolyticus 3株では, 4~8μg/mlであった。一方, S.epidermidisではMIC値 (BHIA) 8μg/ml以上及び4μg/ml以下の各3株の菌の生育を完全に抑制するVCM濃度は, それぞれ8μg/mlと4μg/mlであった。また, S.epidermidisのVCM濃度4μg/ml (BHIA) とS.haemolyticusのVCM濃度16μg/ml (BHIA) で生育してきたsub-cloneのpopulation解析を再度行うと, 107CFU/100μ1の菌の生育を完全に抑制するVCM濃度は, S.epidermidisでは親株の2倍濃度である16μg/mlを要し, S.haemolyticmsでは親株と同等の32μg/mlであった。しかし, S.haemolyticusの親株はVCM濃度8μg/mlから菌数の減少が確認されたのに対し, そのsub-cloneはVCM濃度32μg/mlから明らかな菌数の減少が確認された。
  • 石橋 凡雄, 原田 泰子, 高本 正祇, 岩永 知秋, 岸川 禮子, 牧江 俊雄, 鶴谷 秀人, 廣田 暢雄, 古野 貴, 小江 俊行, 犬 ...
    1998 年 51 巻 12 号 p. 746-758
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    sulbactam/ampicillin (以下, SBT/ABPCとする) の老人性肺炎に対する有効性, 安全性を評価する目的で, ce飴tiam (以下, CTMとする) を対照薬として封筒法による群間比較試験を実施した。SBT/ABPCは1回3.0g1日2回, CTMは1回1.0g1日2回, いずれも7~14日間点滴静注投与を原則とした。
    九州地区13施設, 合計68例の老人性肺炎患者での検討結果は以下のとおりであった。
    1. 安全性検討対象症例は68例でSBT/ABPC群37例, CTM群31例であった。有効性の解析対象症例は50例でSBT/ABPC群27例, CTM群23例であり, 両薬剤群問の背景因子に偏りは認められなかった。
    2. SBT/ABPC群の有効率は96.3% (26例/27例) であり, CTM群の73.9% (17例/23例) に比較して有意に優れていた (Fisher: p<0.05)。
    3. 細菌学的効果は, SBT/ABPC群は10例全例, CTM群は4例全例が消失であった。
    4. SBT/ABPC群及びCTM群において副作用は認められなかった。
    5.臨床検査値異常変動は, SBT/ABPC群で37例中4例 (10.8%) に認められ, それらは軽度のGOT上昇, GPT上昇, A1-P上昇であった。CTM群では31例中1例 (3.2%) に認められ, 軽度の血小板増多であった。両群問の発現率に有意な差は認められなかった。
    以上の成績より, 老人性肺炎に対してSBT/ABPCはCTMに優る有効率が示され, 副作用及び臨床検査値異常変動の発現率に差は認められず老人性肺炎に対して高い有用性が期待される薬剤であることが示された。
  • 千村 哲朗
    1998 年 51 巻 12 号 p. 759-763
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    細菌性腟症, 腟炎に対するEcological treatmentとして, Bio-threeの腟内投与の影響について検討し, 以下の成績を得た。
    1. 細菌性腟症及び腟炎症例 (n=16) を対象とし, Bio-three (E.faecalis T-110, C. butyricum TO-A, B.mesentericus TO-A, pH 6.9±0.3) の2g 1回のみを腟内投与し, 投与3日後の腟内性状及び腟内細菌叢への影響を検討した。
    2. 投与後の腟内性状は, 帯下量, 腟内発赤などの臨床所見で改善傾向を認め, 腟内pHは有意な低下を認めた (5.29±0.24v5.4.31土0.37, P<0.05)。
    腟内細菌叢の変化では, 投与前に35株が検出されたが, 投与3日後でグラム陽性菌で16/30株, グラム陰性菌で2/2株が消失した。この結果, 菌消失率は7/16, 一部残存1/16, 菌交代6/16であった。
    以上の結果より細菌性腟症・腟炎に対するBio-three療法の臨床的意義が示唆された。
  • グラム陽性球菌, グラム陰性球菌について
    黒山 政一, 岡本 恵美子, 矢後 和夫
    1998 年 51 巻 12 号 p. 764-778
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    臨床の場における抗菌薬選択の一指標とするために, 厚生省が実施した「抗生物質感受性状況調査報告」を用いて, 代表的なグラム陽性球菌, グラム陰性球菌について, 種々の抗菌薬に対する感受性率の年次推移 (1993年1月, 2月調査から1995年7月調査) を解析した。<BE>対象とした3年間における主な抗菌薬の感受性率は, OFLX及びSTに対するStreptococcuspyogmes (group A) とStreptococcusagalactiae (group B) の感受性率がやや増加する傾向を示し, CCLに対するStreptococcus pneumoniaeとMoraxella (Branhamella) catarrhalisの感受性率がやや低下する傾向を示したものの, 各年次とも殆ど変化なく一定していた。<BE>また, グラム陽性球菌, グラム陰性球菌が適応として認められている主な抗菌薬の感受性率は, 各年次とも比較的良好な値を示していた。しかし, Staphy10cocousaureus, StaphylococcusepidermidiS及びEntemoccus faecalisは, 一部の抗菌薬に対して低い感受性率を示す傾向が認められた。一方, <BE> CMZ, VCM, LMOX, ST及びMINOに対して, 適応としては認められていない一部のグラム陽性球菌, グラム陰性球菌は, 良好な感受性率を示す傾向が認められた。<BE>抗菌薬の選択に際しては, 原因菌の同定を行い, そして, その感受性試験を実施することが原則である。しかしながら, 時間的な余裕がなく, 迅速な選択が必要となる場合には, 今回の解析結果 (臨床分離菌の各種抗菌薬に対する感受性率の推移のグラフ化) が抗菌薬選択の一指標となるものと思われた。
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