1996年6月から翌年5月までの間に全国10施設において尿路感染症と診断された患者から分離された菌株を供試し, それらの患者背景について性別・年齢別と感染症, 年齢別感染症別菌分離頻度, 感染症と菌種, 抗菌薬投与時期別の菌と感染症, 因子・手術の有無別の菌と感染症などにつき検討した。
年齢と性及び感染症の関連についてみると, 男性の症例は40歳以降で年齢と共に増加し, 感染症については複雑性尿路感染症の割合が増加した。女性では加齢による症例の増加はなかったが, 複雑性尿路感染症の占ある割合が増加するのは男性と同様であった。女性について50歳以上が占める割合を経年的にみると, 60歳以上の各年齢層でやや増加傾向がみられた。年齢別・感染症別の菌分布は単純性及びカテーテル非留置複雑性尿路感染症で似ており,
Escherichia coliと
Enterococcus faecalisの分離頻度が高かった。カテーテル留置複雑性尿路感染症では20~49歳の症例では
E. coliが最も多く分離されたが, 50歳以上では
Pseudomonas aeruginosaの分離頻度が最も高かった。また
Klebsiella spp.の分離頻度は感染症に関係なく年齢と共に増加する傾向にあった。感染症と菌分布及び抗菌薬投与前後の感染症別菌分布をみると, P.aeruginosaは感染症が複雑になるに従い, また抗菌薬投与後の症例で分離頻度が高く, 逆に
E. coliは感染症が単純な方で, また抗菌薬投与前の症例で分離頻度が高かった。分離菌を因子・手術の有無別, 感染症別にみると, 単純性及びカテーテル非留置複雑性尿路感染症では
E. faecolisは無で多く分離され,
E. faecalisは有で多く分離された。カテーテル留置複雑性尿路感染症では
E. coli及び他の感染症に比べ分離頻度の高い
P.aeruginosaは有で多く分離され,
Enterobacter spp.は無で多く分離された。
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