新しく開発されたβ-lactamase阻害剤であるTazobactam (TAZ) とPenicillin系抗生物質であるPiperacillin (PIPC) の力価配合比が1: 4のTAZ/PIPCについて, 保存株と臨床分離株に対する薬剤感受性試験を行うと共に, 本剤の注射剤を小児の種々の感染症に投与し, 有効性及び安全性を検討したところ, 次のような成績が得られた。
1. 薬剤感受性試験では保存菌株4菌種ll4株に対しTAZ/PIPCとPIPC, Penicillin G (PCG), Ampicillin (ABPC), Cefotiam (CTM), Cefotaxime (CTX), Ceftazidime (CAZ), Sulbactam (SBT) /Cefoperazone (CPZ) の8薬剤を, またTAZ/PIPCの投与症例から分離された3菌種中Staphylococcus aureus (S.aureus) にはTAZ/PIPC, PIPC, Methicillin (DMPPC), CTM, CTX, SBT/CPZの6薬剤, 他の2菌種に対してはこれらの6薬剤中DMPPCを除く5薬剤を用いて, 接種菌量106CFU/mlにおけるMICを測定した。
保存菌株中グラム陽性球菌の
Streptococcus pyogenes (
S.pyogenes) 45株に対するTAZ/PIPCのMIC90は0.05μg/mlで, PIPC, CTM, CAZ, SBT/CPZのMICと同じか類似の傾向にあり,
Streptococcus agalactiae (
S.agalactiae) 28株に対するTAZ/PIPCのMICは全株が0.39μg/mlで, PIPC, CTM, CAZ, SBT/CPZのMICと同じか類似した。グラム陰性桿菌中
Bordetella pertussis (
B.pertussis) 10株に対するTAZ/PIPCのMIC90は0.10μg/mlで, PIPCのMICと同じか類似し,
Haemophilus influenzae (
H.influenzae) 31株に対するTAZ/PIPCのMIC90は0.05μg/mlで, PIPC, CTX, SBT/CPZのMICと同じか類似した。TAZ/PIPCの投与症例から分離されたグラム陽性球菌中
S.aureus 2株では1株がβ-lactamase非産生菌, 1株が低産生菌で, MICは各々0.78, 3.13μg/mlを示し, 前者ではPIPC, DMPPC, CTM, CTX, 後者ではPIPC, DMPPC, CTX, SBT/CPZのMICと同じか類似した。
Streptococcus pneumoniae (
S.pneumoniae) 4株に対するTAZ/PIPCのMICは各2株が0.05μg/mlか1.56μg/mlで, PIPC, SBT/CPZのMICと同じか類似した。グラム陰性桿菌の
H.influenzae 7株では, 6株がβ-lactamase非産生菌, 1株が高度産生菌で, 前者に対するTAZ/PIPCのMICは5株が≤0.025μg/ml, 1株が0.39μg/mlで, PIPC, SBT/CPZのMICと同じか類似し, 後者の1株に対するTAZ/PIPCのMICは0.78μg/mlで, SBT/CPZのMICに類似し, PIPCのMICより小であった。
2. 臨床効果は7疾患33例中著効17例51.5%, 有効14例42.4%, やや有効2例6.1%で, 無効例はなく, 有効以上の有効率は93.9%であった。
3. 細菌学的効果は4菌種17株で判定でき, 全株が消失した。
4. 副作用は臨床効果の判定できた33例と脱落症例2例, 計35症例について検討でき, 4例11.4%に下痢が出現した。
5. 臨床検査値は末梢値の検査で血小板数の増多が32例中1例3.1%, 好酸球増多は29例中2例6.9%に出現した。血液生化学検査では21例中GPTの単独, GOTとGPTの同時異常上昇が各1例に出現した。
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