The Japanese Journal of Antibiotics
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52 巻, 1 号
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  • 大泉 耕太郎, 力丸 徹, 白石 恒明, 吉田 稔, 渡辺 憲太朗, 石橋 凡雄, 北原 義也, 原 信之, 山田 穂積, 本廣 昭, 丸山 ...
    1999 年 52 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症に対する初回治療薬としての有用性と感染症治療日数について, Imipenem/Cilastatin (IPM/CS) とカルバペネム系を除くその他のβ-lactam系抗菌薬 (CAZもしくはSBT/CPZ) の比較検討をプロスペクティブに行った。臨床評価対象例における有効率はIPM/CS群84.9% (62/73), β-lactam群74.7% (56/75) であり, IPM/CS群で高い臨床効果を認めたが有意の差はなかった。層別解析では, 呼吸器系基礎疾患のある症例においてIPM/CS群91.1% (41/45), β-lactam群73.9% (34/46), 慢性呼吸器疾患の二次感染症例においてIPM/CS群91.2% (31/34), β-lactam群66.7% (24/36) であり, IPM/CS群とβ.lactam群の間に有意な差が認められた。
    主治医判定による臨床評価対象例の感染症治癒までの治療日数はIPM/CS群12.9±0.6日, β-lactam群14.5土0.7日であり, 傾向差を認めたが有意ではなかった。層別解析では感染症重症度が軽・中等症症例においてIPM/CS群12.0±0.6日 (n=64), β-lactam群14.3±0.7日 (n=70), 呼吸器系基礎疾患のある症例においてIPM/CS群11.8±0.7日 (n=45), β-lactam群14.7±0.9日 (n=46), 慢性呼吸器疾患の二次感染症例においてIPM/CS群11.1±0.7日 (n=34), β-lactam群14.7±1.1日 (n=36) であり, いずれもIPM/CS群で有意な治療日数の短縮を認めた。感染症重症例, 呼吸器系基礎疾患のない症例, 肺炎・肺化膿症例では有意な差は認めなかった。
    一方, 委員会基準による判定において臨床評価対象例の感染症治癒までの治療日数 (体温, WBC, CRPの3つの基準をいずれも下回った時点までの日数) はIPM/CS群6.9±0.5日, β-lactam群10.3土0.7日であり, IPM/CS群において有意に治療日数の短縮が認められ, また, 生存時間解析から得られた曲線によって, 両群の治癒プロセスは視覚的にも捕らえられ, IPM/CS群の治癒プロセスの速さが確認された。IPM/CS群において主治医判定と委員会基準による判定のいずれの感染症治療日数も短い結果が得られたが, それらの治療日数の判定の結果の問にかなりの乖離を認め, 今後更に, 注射用抗菌薬の適正な投与期間について検討を加える必要がある。
    安全性 (副作用, 臨床検査値異常) は両群間の発現頻度に有意な差は認めず, 重篤なものはなく, 投与継続もしくは中止により消失した。
    以上により, 呼吸器感染症に対しIPM/CSは初期治療剤として高い臨床的有用性と治療日数の短縮を認めた。
  • NONMEMを利用したPopulation Pharmacokinetics
    櫻井 祐一, 菱川 保, 平松 信祥, 相良 靖仁, 桑原 雅明, 長崎 賢, 藤巻 智子, 藤井 良知
    1999 年 52 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新生児・低出生体重児におけるCefozopran (CZOP) の体内動態および有効性・安全性を検討した。試験に参加した全例136例のうち薬物血中濃度測定のための採血について, 保護者の同意が得られた42症例の薬物血中濃度データをPopulation pharmacokinetics (PPK) 解析法により解析し, 本薬の平均的な体内動態値および病態生理学的変動要因, 並びに個体差の程度を評価した。その結果, CZOPのクリアランス (CL), 分布容積 (Vd) は次式で記述できることが示された。
    CL=0.0452×WT1.75 (生後日数が2日以上の場合)
    CL=0.623×0.0452×WTl.75 (生後日数が1日以下の場合)
    Vd=0.455×WT
    ここでWTは体重 (kg) である。また, クリアランスの個体間変動の変動係数は20.7%, 分布容積の個体間変動の変動係数は20.0%であった。
    CZOPの消失は, 生後日数により影響を受け, 生後直後は腎機能安定時に比べ, クリアランスが約38%低いことが示された。従って, 評価例数は少ないものの, 生後日数1日以下の症例では, 投与方法の調整, 特に投与間隔の延長が望ましいと考えられた。
  • 三鴨 廣繁, 川添 香子, 佐藤 泰昌, 早崎 容, 玉舎 輝彦, 和泉 孝治, 伊藤 邦彦, 山田 新尚
    1999 年 52 巻 1 号 p. 24-33
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    注射用カルバペネム系抗菌薬パニペネム・ベタミブロン (Panipenem/Betamipron, PAPM/BP) の周産期妊産婦細菌感染症症例に対する治療効果の検討を行い, 以下の成績を得た。
    総投与症例41例のうち, 投薬違反症例 (1日1回投与) 1例, 感染症状不明確3例, 臨床検査未実施3例の合わせて7例を除く34例を評価対象とした。投与方法は, 本剤1回0.5gを1日2~3回点滴静注, 3~14日間投与であった。委員会判定による臨床効果は79.4% (27/34) の有効率であった。細菌学的効果は, 27例で評価可能で, 菌消失率 (菌消失例+菌交代例) が77.8% (21/27) で, 61株中49株 (80.3%) が消失した。副作用としては, 安全性評価例41例中1例で, 点滴静注中に, 軽度の頭痛・悪心が投与開始日より投与終了日直後まで認められ, 投与終了翌日には, すみやかに消失した。臨床検査値異常は, 41例中1例で, 軽度のGOT, GPT, LDHの上昇が認められ, 投与終了後回復したが, 併用薬の影響も考えられた。以上の成績から, PAPM/BPは, 周産期妊産婦の細菌感染症に有用な薬剤と考えられるが, 特に安全性の確認のためには, 妊産婦における体内動態を含め, さらに症例の検討が必要であると考えられる。
  • 笠井 隆夫, 鶴岡 勉
    1999 年 52 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Escherichia coli (E.coli) c73-18あるいはE.coli O124をマウスの腹腔内に接種の後, Fosfomycinを経口投与して, 菌の消失する前に脾臓を採取し, それぞれFosfomycin耐性の株FRCl4あるいはFRK104を, ほとんどが感受性菌であった菌の集団の中より分離した。これらの株のin vivoでの命運を調べる目的で, 以下の諸性質を調べた。Fosfomycin のFRC14に対するMIC値は25μg/ml, FRK104に対しては100μg/mlであり, それぞれ親株の4倍あるいは8倍の値であった。炭水化物の利用性を調べた結果, FRC14は, 親株の利用するsn-Glycerol 3-phosphate (G3P) を利用しなかったが, 調べた他の炭水化物は親株と同様に利用したので, 本株はglpT変異株と考えられた。一方, FRK104は, 親株の利用するG3Pの他Glucoseなどの多くの炭水化物を利用せず, Glucose 6-phosphate (G6P) のみを利用した。本株のG3Pの利用性は, cAMPの添加で回復した。従って, FRK104はptsI変異株と考えられた。両耐性株は, それぞれの親株と比較して, マウスの致死作用が低下していた。E.colic73-18をマウスに接種した時, 経時的に血中および脾臓中でその菌数が増加したのに対して, FRC14は, 減少または消失した。FRK104は, モルモットにおける角結膜炎起因能が低下していた。
  • 山口 聖賀, 佐藤 節子, 鳥屋 実, 辻 明良
    1999 年 52 巻 1 号 p. 41-56
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    アミノグリコシド系抗菌薬であるIsepamicin (ISP) とβ-ラクタム系抗菌薬であるPiperacillin (PIPC), Ceftazidime (CAZ), Imipenem (IPM) をPseudomona saeruginosa PAOlに作用させた時に遊離されるEndotoxin (Lipopolysaccharide, LPS) 量をin vitro殺菌試験及びヒト血中濃度シミュレーションモデルを用いて比較検討した。
    ISPは1/4, 1, 4MICで強い殺菌力を示し, 遊離LPS量は6時間後までほとんど変化しなかった (IMICにおける2, 4, 6時間後のLPS量の平均値は28±2ng/ml) 。PIPC, CAZの1, 4MICでの殺菌効果は4時間目から顕著に見られ, その時に多量のLPSが遊離した (PIPC, CAZの1 MIC, 4時間後のLPS量はそれぞれ515ng/ml, 493ng/ml) 。また, PIPC, CAZを1/4MICで作用させた場合, 菌はControlと同程度に増殖し, 4, 6時間後の遊離LPS量は1, 4MICで作用させた場合よりもさらに増加した。IPMは1/4, 1, 4MICで殺菌効果を示し, 遊離LPS量の増加は6時間後までみられなかった。
    ヒト血中濃度シミュレーションモデルで検討したところISPは強い殺菌効果を示し, 8時間まで菌の再増殖とLPSの遊離を抑制した。PIPC, CAZのシミュレーションでは菌体の伸長, 溶菌に伴って4時間後に多量のLPSを遊離した。IPMは殺菌力がISPについで強く遊離LPS量も少なかった。しかし, 8時間後には菌の再増殖に伴って遊離LPS量は増加した。8時間までに培地中に遊離されたLPSの総量は少ないものからISP<IPM<CAZ<PIPCの順であった。
  • TSUYOSHI TAMAMURA, KIYOSHI SATO
    1999 年 52 巻 1 号 p. 57-67
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Kasugamycin, a unique aminoglycoside antibiotic, has been used for many years solely for crop protections1).In general, aminoglycoside antibiotics possess broad and strong inhibitory activity against both Gram-positive and -negative bacteria, however, kasugamycin merely exhibits limited activity against phytopathogenicmicrobes such as Pyricularia oryzae and certain strains of pseudomonads.
    Recently, in human and animal chemotherapy, it has been seriously concerned about the emergenceof multiply resistant bacteria by consumption of a large amount of antibiotics not only for therapy butalso for growth-promotion of farm animals.
    It was believed that kasugamycin, the agricultural antibiotic, does not undergo any cross-resistancewith other clinically important aminoglycoside antibiotics because of its weak or almost no activityagainst common pathogenic microbes except for some phytopathogenic fungi and pseudomonads. However, no confirmative study on this fact has been published so far.
    In this study, we compared activity of kasugamycin with those of twelve clinically usedaminoglycoside antibiotics against susceptible standard strains and well-characterized aminoglycosideresistantstrains as well as clinically isolated strains, in order to show the least potential of kasugamycin to create cross-resistant human pathogens against clinically important aminoglycoside antibiotics.
  • 内田 勝久, 山口 英世
    1999 年 52 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Trichophyton mentagrophytesをモルモットの足底部皮膚に実験的に感染させて作成した足白癬モデルを用い, 試験薬pyrrolnitrinとclotrimazoleの1: 2 (0.6%) 配合液剤 (ピロエース®W) の治療効果を検討した。実験は1%miconazole nitrateを対照薬とし, 両剤は1日1回ないし1日2回, 4週間連続局所投与を行い, 治療終了後の局所皮膚組織の培養試験の成績に基づいて薬効を判定した。
    治療終了時における感染強度を指標とした試験薬の真菌学的治療効果は, 1日1回投与の場合には感染対照群および基剤対照群の各々に比べて有意 (p<0.0001) にすぐれ, 対照薬投与群と同等であった。また1日2回投与した場合は対照薬の1日1回投与より有意 (P<0.001) にすぐれた治療効果を示した。
    一方, 治療終了後の培養陰性個体数を指標として比較すると, 試験薬の1日2回投与群は80%と最も高く, 次いで対照薬の1日1回投与群の10%であり, 試験薬の1日1回投与群, 基剤対照群および感染対照群のいずれにも陰性化個体はまったく見られなかった。
    以上の試験成績から, 1日1回投与時の試験薬と対照薬の治療効果は同等であるが, 試験薬の1日2回投与では対照薬の1日1回投与よりすぐれた治療効果を示すことから, 承認用法に従って治療を行った場合の試験薬ピロエース®Wはより優れた臨床的有用性をもつ可能性が期待される。
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