内科, 泌尿器科, 外科, 整形外科, 産婦人科, 耳鼻咽喉科, 眼科, 皮膚科, 口腔外科および形成外科領域の各種感染症を対象とし, Biapenem (BIPM) 注射剤を1回150mg, 300mgあるいは600mgを1日2回点滴静脈内投与し, 本薬の臨床的有用性をオープン試験にて検討した。併せて, 組織移行性について検討した。
1.総症例256例中, 臨床効果, 細菌学的効果, 副作用および臨床検査値異常の解析対象症例数は, 各々214例, 170例, 252例, 251例であった。
2.臨床効果 (有効率) は, 全体で85.5% (183/214例), 敗血症2/2例, 蜂巣炎・リンパ管炎6/8例, 外傷・手術創・熱傷創感染76.2% (16/21例), 骨髄炎・関節炎4/6例, 扁桃周囲膿瘍・扁桃周囲炎92.9% (13/14例), 慢性下気道感染症83.3% (15/18例), 肺炎7/7例, 複雑性尿路感染症83.3% (30/36例), 胆嚢炎・胆管炎100% (14/14例), 腹膜炎88.2% (15/17例), 内性器感染症86.5% (32/37例), 骨盤腹膜炎8/9例, 角膜潰瘍, 眼窩感染, 全眼球炎などの眼科領域感染症2/4例, 中耳炎1/2例, 副鼻腔炎4/4例, 顎炎・顎骨周辺の蜂巣炎93.3% (14/15例) であった。このうち, 他抗菌薬無効例に対する有効率は86.4% (70/81例) であった。
3.起炎菌として複数菌感染を含む170例より, 300株が分離され, その細菌学的効果 (菌消失率) は85.3% (256/300株) であった。
4.副作用は252例中11例 (4.4%) に, 11件認められ, 症状は皮膚症状5例, 消化器症状3例, 問質性肺炎2例, 気分不良1例であった。いずれの症状も投与継続中または中止・終了後に消失した。臨床検査値異常は251例中31例 (12.4%) に, 50件認められ, 主な所見は好酸球増多とAST, ALT, γ-GTP, Al-pの上昇などであった。
5.体液・組織内濃度は, 主に本薬300mgを60分かけて点滴静脈内投与された46例, 212検体において検討された。喀痰中濃度は投与終了後6時間までで0.1~2.5μg/gであった。体液・組織内最高濃度は, 胆汁, 中耳粘膜, 扁桃組織, 前房水, 骨組織で0.2~1.8μg/g orml, 胆嚢組織, 上顎洞粘膜, 篩骨洞粘膜, 口腔組織, 皮膚, 女性性器, 関節液, 関節組織, 熱死組織では, 2.0~5.7μg/g or mlであった。子宮動脈血 (血漿) 中, 骨盤死腔液中濃度推移は肘静脈血 (血漿) 中濃度とほぼ同様な濃度推移を示した。
以上の成績から, 本注射剤は中等症以上の, あるいは難治性の各種感染症に対して有用な薬剤であることが, 臨床効果, 細菌学的効果および安全性の上から確認された。
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