1997年6月から翌年5月までの問に全国9施設において, 尿路感染症と診断された患者から分離された菌株 (
Enterococcus faecalis,
Staphylococcus aureus, Escherichia coli,.Klebsiellaspp., Pseudomonas aeruginosa) を供試し, それらの各種抗菌薬に対する感受性を測定し, 1989~1996年と1997年の感受性を比較した。比較は菌種を単純性尿路感染症と複雑性尿路感染症 (カテーテル非留置とカテーテル留置を含む) に分類して行った。E.faecalisではAmpicillin (ABPC) とMinocycline (MINO) に対して1995, 1996年に認められた感受性株の減少が回復した。また単純性尿路感染症においてキノロン系のOfloxacin (OFLX) とTosunoxacin (TFLX) の感受性が良くなりMIC
90は1989年以来の低値を示した。SaureusについてはImipenem (IPM) とClindamycin (CLDM) に対して1996年に感受性株の増加がみられたが, 1997年は再び減少した。その他の薬剤に対してはあまり変化はなく, Arbekacin (ABK) とVancomycin (VCM) は良好な感受性を維持していた。E.coliではMINOに対する感受性が1996年に比べ, MIC
90でみて3段階良くなり19
90年以降で最も良好であった。また1995, 1996年に認められたキノロン系薬剤に対する複雑性尿路感染症での感受性の低下は認められず, ほぼ1994年以前まで回復した。
Klebsiella spp.ではあまり変化はなくペニシリン系薬剤を除き良好な感受性を示したが, 一部を除くセフェム系薬剤に対して単純性尿路感染症で低感受性株が増加した。P.aeruginosaでは1996年に低下したCefbzopran (CZOP), IPMおよびモノバクタム系薬剤に対する複雑性尿路感染症での感受性の低下は回復したが, 1996年に良くなったキノロン系薬剤に対する複雑性尿路感染症での感受性が再び低下した。
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