The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
52 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 猪狩 淳, 井上 松久, 西野 武志, 渡辺 直樹, 上原 信之, 吉田 浩, 今福 裕司, 柴野 正, 佐藤 誠子, 小林 功, 高橋 綾 ...
    1999 年 52 巻 4 号 p. 279-291
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    臨床分離株のカルバペネム系抗菌薬耐性傾向を検討する目的で全国21施設の参加による研究グループを組織し, 臨床分離株に対する, カルバペネム系抗菌薬の抗菌力を中心に検討した。すなわち1996年10月から12月までに各施設で分離された11菌種, 1241株に対する, 17種類の抗菌薬の最小発育阻止濃度 (MIC) を微量液体希釈法により測定した。その結果, カルバペネム系抗菌薬は, MSSA, S.pneumoniaeに対し強い抗菌力を示し, E.faecalisに対してもABPC, PIPCと同程度の抗菌力を示した。しかしMRSAに対するβ-ラクタム薬の抗菌力は弱かった。カルバペネム系薬はH.influenzaeに対しても抗菌力は強く, 中でもMEPMが最も優れていた。E.coli, K.pneumoniae, E.cloacae, S.marcescens, B.fragilis groupに対してもカルバペネム系の抗菌薬は強い抗菌力を示し, 他のβ-ラクタム系抗菌薬より優れていた。しかし, S.marcescensから耐性株が認められ, P.aeruginosaに対するカルバペネム系抗菌薬の抗菌力は, CAZと同程度であり, 耐性株も少なからず認められた。
  • 高橋 孝行, 辻原 佳人, 志村 等, 蜂谷 かつ子, 高橋 重夫, 原田 雅明, 高橋 貞嗣, 松本 文夫
    1999 年 52 巻 4 号 p. 292-301
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    最近各種臨床材料より分離したインフルエンザ菌131株に対する経口β-ラクタム薬, ampicillin (ABPC), cefaclor (CCL), cefotiam (CTM), cefteram (CFTM), cefpodoxime (CPDX), cefdinir (CFDN), cefditoren (CDTR), cefcapene (CFPN) およびfaropenem (FRPM) のin vitro抗菌力を検討し, 以下の結果を得た。
    横浜市内の6施設よりの分離株131株に対する感受性ピークは, ABPCでは0.20μg/ml, CCLでは1.56μg/ml, CTMでは0.39μg/ml, CFTMでは0.O13μg/ml, CPDXでは0.05μg/ml, CFDNでは0.20μg/ml, CDTRでは0.013μg/ml, CFPNでは0.013μg/ml, FRPMは0.39μg/mlであった。CDTR, CFPN, CFTMなどは, 優れた抗菌力を示した。ABPC感性菌 (ABPCのMIC<0.78μg/ml) は98株 (74.8%), β-ラクタマーゼ産生菌19株 (145%), β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性菌14株 (10.7%) であった。
    CDTRは, 2MIC濃度以上において短時間殺菌作用を示し, 2MICおよび4MIC濃度添加6時間後において, それぞれ約2.2logおよび約2.7logの生菌数の減少を認めた。CFPN, CFDNも同様の殺菌作用を示した。また, CFTMを2MICおよび4MIC濃度添加6時間後において, 約1.3log, 2.7logの生菌数の減少であった。CPDXの2MICおよび4MIC濃度添加群においては, 6時間後に約1.6logの生菌数の減少を認めたのみであった
  • 井上 松久, 齋藤 玲, 清水 義徳, 渡辺 彰, 河合 忠, 林 和, 菅野 治重, 久保 勢津子, 生方 公子, 猪狩 淳, 小栗 豊子 ...
    1999 年 52 巻 4 号 p. 302-312
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 欧米を中心に問題となっているvancomycin-resistant Enterococcus faecium (VREF) の本邦における有無を調査する目的で全国19施設が協力し, 1995年4月から1996年6月までに分離されたEnterococcus faecium についてRP59500, vancomycin (VCM) 等各種抗菌薬に対する感受性動向及びvancomycin耐性遺伝子をPCR法により調査した。また, 併せてpenicillin-resistant Streptococcus pneumoniae (PRSP), methicillin-resistant Staphylococcusaureus (MRSA) の感受性動向も検討した。その結果, MIC8μg/mlのVCM中等度耐性Enterococcus faecium 2菌株が分離されたが, これら2菌株の最終同定及びPCR法による耐性遺伝子の検出は, 参加施設の種々の理由により実施出来なかった。
    一方, vancomycinに対して中等度耐性及び耐性を示すMRSA, PRSPは検出されなかつた。E.faecium, PRSP, MRSA は, RP59500, VCMに対し, 良好な感受性を示した。また, 他の腸球菌からMIC8μg/mlのvancomycin中等度耐性E.gallinarum, E.casselifiavus, E.flavescens がそれぞれ10, 4, 2菌株検出され, PCR法で耐性遺伝子を検討した結果van C1, C2 がそれぞれ検出された。またこの中のE.gallinarum 1菌株からvan Bも同時に検出された
  • 中栄 正隆, 菅原 芳秋, 佐々木 弘子, 安井 浩美, 今井 千晶, 長谷川 やすえ, 大坂 和代, 柴崎 浩一, 梨本 光枝
    1999 年 52 巻 4 号 p. 313-321
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1990年1月から1994年12月までの5年間に歯科および医科領域の各種臨床材料から分離されたメチシリン耐性Staphvlococcus aureus (MRSA) 125株の薬剤耐性型, コアグラーゼ型, MRSAファージ型を調べた。
    vancomycinに対する感受性は良好で, 耐性菌は認められなかった。耐性菌分離率から薬剤は次の3群に分けられた。低度分離率群: minocycline, chloramphenicol, streptomycin, imipenem (分離率16.8~40%), 中等度分離率群: cefrnetazole, amikacin, gentamicin, tetracycline (分離率45.6~62.9%), 高度分離率群: oxacillin, ampicillin, piperacillin, ceftizoxime, cefoperazone, cefazolin, erythromycin, oleandomycin, kitasamycin, clindamycin, kanamycin, tobramycin, ofloxacin (分離率97.6~100%) 。MIC90はVancomycinが1.56μg/ml, minocyclineが25μg/mlであったが, 他の薬剤は100~>100μg/mlと高値を示した。施設別にみると, 医科病棟ではimipenem, gentamicin, minocycline耐性菌が, 歯科病棟でch10ramphenicol, streptomycin耐性菌が他と比べて多く分離された。
    薬剤を4グループに分けた薬剤スコアーで表わすと, 耐性型は39通りに分類された。methicillin高度耐性菌は84.8%で, その内ペニシリナーゼ産生株は44%だった。マクロライド系は全ての薬剤に耐性を示すA群菌が96.8%を占めた。アミノグリコシド系ではtobramycin耐性菌, gentamicin-tobramycin耐性菌, Streptomycin-gentamicin-tobramycin耐性菌がほぼ同じ頻度で分離された。施設別では医科病棟でgentamicin-tobramycin耐性菌が, 歯科病棟でstreptomycin-gentamicin-tobramycin耐性菌とtobramycin耐性菌が他施設に比して多く分離された。その他の薬剤ではofloxacin耐性菌が最も多く分離された。
    コアグラーゼ型ではII型 (65.6%) とIV型 (29.6%) でほとんどを占めていた。'90~'92の歯科病棟分離株ではIV型が82.1%と多かったが, '93~'94分離株では90.6%がII型であった。
    MRSAファージ型では18種類に分類され, 薬剤耐性型とコアグラーゼ型を加えた3法から125株のMRSAは56型に分類された。これら3法による型別で, ある時期に特定の病棟での同型の菌株による流行が窺われた。
  • 豊永 義清, 金村 英秋, 北野 正尚, 三井 弓子, 石原 俊秀, 星合 美奈子, 大野 理香
    1999 年 52 巻 4 号 p. 322-332
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児市中肺炎に対するCeftriaxone (CTRX) 50mg/kgの1日1回投与の臨床的.細菌学的検討を行い, 以下の結果を得た。
    対象となった48例のうち著効が36例 (75.0%), 有効が9例 (18.7%), やや有効が2例 (4.2%), 無効が1例 (2.1%) であった。有効率は93.7%であり, 無効1例を除く47例 (97.9%) で本剤投与中に解熱し, 臨床症状および胸部X線上の異常陰影の軽快または改善が認められた。
    単独菌感染は34例 (70.8%), 複数菌感染は14例 (29.2%) であり, ほぼ全症例 (45例) でstreptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeの一方あるいは双方が検出された。
    細菌学的効果は48例のうち44例 (91.7%) で菌消失が認められた。他の4例 (8.3%) に菌交代が生じていた。
    検出菌に対するCTRXのMIC90H. influenzaeで0.2μg/ml, PSSPで≤0.025μg/ml, PISPで0.1μg/ml, PRSPで0.39μg/mlであった。
    CTRX 50mg/kg 1時間点滴静注終了時の血中濃度は89.7±25.2μg/ml, 24時間後は6.6±0.9μg/mlであり, 24時間を通じて検出菌のMIC90を十分に上回っていた。
    副作用と考えられた異常症状は全例に認められず, 臨床検査値も投与前後に測定が可能であった症例については異常変動を認めなかった。
    本邦では地域により異なる場合もあるが, 一般的には3歳未満の場合は入院・外来を問わず医療費が免除されており, もし, 入院治療になった場合, 保護者が随時付き添うことのできない患児の精神的負担は計り知れぬものがある。また, 3歳以上の場合は入院と外来ではかかる医療費に差が生じ, 入院の場合は経済的負担も大きくなる。従って, 安易に外来治療を推奨するのではないが, 市中肺炎の場合には新たな治療法の一つとして, 外来治療を試みる価値は十分にあると考えられた。
    以上より, 小児市中肺炎に対するCTRXの1日1回投与は, 臨床的・細菌学的有用性に優れており, 1回投与が今後の検討にもよるが, 安全性においても確立されるなら, 外来通院治療も選択肢の一つとなるであろう。
  • グラ厶陰性桿菌について
    黒山 政一, 岡本 恵美子, 矢後 和夫
    1999 年 52 巻 4 号 p. 333-352
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    臨床の場における抗菌薬選択の一指標とするために, 厚生省が実施した「抗生物質感受性状況調査報告」を用いて, 代表的なグラム陰性桿菌について, 種々の抗菌薬に対する感受性率の年次推移 (1993年1月~2月調査から1995年7月調査) を解析した。
    解析対象とした3年間における主な抗菌薬に対する代表的なグラム陰性桿菌の感受性率は, FOMに対するEscherichia coli, Citrobacter freundii, Enterobacter aerogenes及びProteus mirabilisの感受性率, MINOに対するCitrobacter freundii, Klebsiella pneumoniae及びEnterobacter aerogenesの感受性率がやや増加し, CMZに対するHaemophilus influenzaeHaemophilus parainfluenzaeの感受性率がやや低下しているものの, 各年次とも殆ど変化なく一定していた。
    また, グラム陰性桿菌が適応として認められている主な抗菌薬では, 各年次とも比較的良好な感受性率が認められた。しかし, Enterobacter cloacae, Enterobacter aerogenes, Serratia marcescens及びPseudomonas aeruginosaは, 一部の抗菌薬に対して低い感受性率を示した。一方, ST, CMZ, LMOX, GM及びAMKは適応としては認められていない一部のグラム陰性桿菌に対して良好な抗菌力を示した。
    抗菌薬の選択に際しては, 原因菌の同定を行い, その感受性試験を実施することが原則である。しかしながら, 時間的な余裕がなく, 迅速な選択が必要となる場合には, 今回の解析結果 (臨床分離菌の各種抗菌薬に対する感受性率の推移のグラフ化) が抗菌薬選択の一指標となるものと思われた
feedback
Top