セフェム系抗菌薬cefozopran (CZOP) の臨床分離株に対する市販後の抗菌力を調査し, その他のセフェム系, オキサセフェム系, ペニシリン系, 並びにカルバペネム系抗菌薬の抗菌力と比較した。さらにbreakpointMICから算出された耐性率を基に, 感受性の年次推移を検討した。対象とした臨床分離株は, 1996年から2000年の間に臨床材料から分離されたグラム陽性菌: メチシリン感受性
Staphylococou saureus (MSSA), メチシリン耐性
S. aureus (MRSA), メチシリン感受性
Staphylococcus epidermidis (MSSE), メチシリン耐性
S. epidermidis (MRSE),
Staphylococcus haemolyticus, Staphylococcus saprophyticus, Enterocoocus faeoalis, Enterococcus faeoium, Enterococcus avium, Streptococcus pyogenes, Streptococcus agalactiae, ペニシリン感受性
Streptococcus pneumoniae (PSSP), ペニシリン中等度耐性
S. pneumoniae (PISP), ペニシリン耐性
S. pneumoniae (PRSP),
S. millerigroup並びに
Peptostreptococcus spp.の16菌種1,913株である。
MSSAおよびMSSEに対するCZOPの抗菌力は, 他のセフェム系薬剤とほぼ同等で, MRSEに対しても優れた抗菌力を示したが, MRSAに対する抗菌力は弱かった。
S. haemolyticusに対するCZOPの抗菌力は, 他のセフェム系薬剤同様に強力なものではなかった。CZOPの
S. soprophyticusに対する抗菌力は, 他のセフェム系薬剤に比較して同等, あるいは強力であった。CZOPの
E. faecalisに対する抗菌力は, cefbirome (CPR) と同等で, 他のセフェム系薬剤よりも強力であった。
E. faeciumおよび
E. aviumに するCZOPの抗菌力は, 他の薬剤と同様にほとんど認められなかった。CZOPの
S. pyogenesに対する抗菌力は, cefotiam (CTM), cefepime (CFPM) およびCPRと同様に非常に強力であった。
S. agalactiaeに対するCZOPの抗菌力も良好であった。PSSP, PISP, 並びにPRSPに対するCZOPの抗菌力は他のセフェム系薬剤より強力であった。“
S. milleri” groupに対する抗菌力はbenzylpenicillinが最も強かったが, CZOPを含めたセフェム系薬剤も良好な抗菌力を示した。CZOPの
Peptostreptococcus spp.に対する抗菌力は良好であったが, cefazolin (CEZ), CTM, cefmetazole (CMZ) よりも弱いものであった。CZOPのbreakpoint MICに基づく各菌種の耐性率を算出した結果, MRSAが96.5%, PRSPが93.1%, PISPが60.0%, S. haemolyticus が40.3%,
E. faecalisが22.3%, MRSEが15.9%の耐性率を示した。この耐性率の結果は, CFPMとほぼ同等であったが, cFPMに対して
E. faecalisは90.8%の耐性率を示しており,
E. faecalisに対してはCZOPの良好な抗菌力が維持されていることが明らかであった。
今回の5年間にわたる調査結果から, グラム陽性菌に対するCZOPの抗菌力に大きな経年的変動は認められなかったが, PISPおよびPRSPのCZOPに対する感受性が低下している可能性が示唆された。
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