The Japanese Journal of Antibiotics
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56 巻, 6 号
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  • 河野 茂, 渡辺 彰, 青木 信樹, 二木 芳人
    2003 年 56 巻 6 号 p. 531-545
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
  • シプロキサン®注第1回特別調査 (2001年)
    山口 恵三, 石井 良和, 山中 喜代治, 渡邊 直樹, 上原 信之, 賀来 満夫, 林 和, 飯沼 由嗣, 一山 智, 黒川 幸徳, 平潟 ...
    2003 年 56 巻 6 号 p. 546-573
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    フルオロキノロン系抗菌薬ciprofloxacin (CPFX) の注射薬は2000年9月に承認され, その際に6年の再審査期間が設定された。本剤の再審査申請を行うための特別調査としては, 主たる適用患者である重症感染症患者から分離された臨床分離菌を収集し, CPFXおよび各種注射用抗菌薬に対する薬剤感受性を調査する全国サベイランスを再審査期間中に3回実施することが計画されている。今回我々は, 第1回特別調査として2001年4月~6月の間に全国29施設から収集された1,220株の重症感染症臨床分離菌について, CPFXをはじめとした各種注射用抗菌薬の最小発育阻止濃度 (MIC) を微量液体希釈法により測定し, CPFXに対する各種臨床分離株の薬剤感受性を他の抗菌薬と比較した。グラム陽性菌のCPFxに対する感受性は, Enterococcus faecium, Enterococcus aviumの2菌種を除きカルバペネム系抗菌薬に比べ低かったが, methicillin-susceptible Staphylococcus aureus (MSSA), Staphylococcus epidermidis, Enterococcus faecalisのCPFXに対する感受性は, cefozopranとほぼ同等であった。また, CPFXに対するStreptococcus pneumoniaeの感受性は, Ampicillin (ABPC) susceptible Streptococcus pneumoniae (ABPCのMIC: ≤0.25μg/ml ABPC intermediate S. pneumoniae (ABPCのMIC: 0.25~2μg/ml), ならびにABPC resistant S. pneumoniae (ABPCのMIC:≥4μg/ml) において差はなく (CPFXのMIC90値は1μg/ml), セフェム系およびカルバペネム系抗菌薬でみられたペニシリン低感受性株に対する抗菌力の低下はCPFXにおいては認められなかった。CPFXに対するグラム陰性菌の感受性はカルバペネム系抗菌薬と同様に良好で, Stenotrophomonas maltophilia, Burkholderia cepaciaを除いた菌株に対するCPFXのMIC90値は≤0.063~2μg/mlの範囲であった。CPFXに対するPseudomonas aeruginosaの感受性は, 今回検討した抗菌薬のなかでは最も優れており, そのMIC90値は2μg/mlであった。CPFXは, β-ラクタム系抗菌薬に耐性のP. aeruginosa対しても, 検討薬剤のなかで最も低いMIC50値 (0.5μg/ml) を示した。今回収集されたグラム陰性菌のうち, 腸内細菌科439株およびブドウ糖非発酵菌168株において, extended spectrum β-lactamase (ESBL) 産生株およびクラスB型β-lactamase産生株 (S. maltophiliを除く) の検出を行ったところ, ESBL産生株が3株 (0.49%), クラスB型β-lactamase産生株が7株 (115%) 検出され, CPFXのこれら10株に対するMIC90は値は≤0.063~8μg/mで, そのうち5株は感受性 (CPFXのMIC≤1μg/ml: NCCLS基準) を示した。また, 日本化学療法学会抗菌薬感受性測定法検討委員会報告一肺炎のブレイクポイントーに基づくCPFXに対する主要起炎菌の感受性率にいても, 良好な結果であった。さらに, 今回の重症感染症由来各種臨床分離株のCPFXに対する感受性は1997年に我々が実施した全国サベイランスの結果と比較して大きな変動はみられなかった。以上のことより, CPFX注射薬の市販後においてもCPFXの抗菌活性は維持されているものと考えられた。
  • 阿部 友美, 佐藤 有紀, 成 昌美
    2003 年 56 巻 6 号 p. 574-583
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    2000年6月から2002年3月までの2年間に, 全国各地の医療機関15施設で分離された臨床分離株に対するcefmetazole (CMZ) の抗菌力を年次的に検討すると共に, その他の注射用β-ラクタム剤cefbzolin (CEZ), cefbtiam (CTM), sulbactam/cefbperazone (SBT/CPZ), nomoxef (FMOX) と比較した。被験菌は, 第1回調査として2000年6月から2001年3月までに分離された13菌種575株と第2回調査として2001年4月から2002年3月までに分離された同13菌種548株を用いた。本調査の2年間の年次推移を見てみると, 検討菌種に対するMICg0はほとんど変動していなかった。各菌種の耐性率 (CMZのMIC≥32μg/mL) は, methicillin-susceptible Staphylococcus aureus (MSSA, 0%→0%), methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA, 73%→87%), Staphylococcus epidermidis (19%→32%), other coagulase-negative Sltaphylococcus spp.(other CNS, 13%→18%), Escherichi acoli (4%→1%), Klebsiella pneumoniae (3%→4%), Klebsiella oxytoca (0%→0%), Proteus mirabilis (2%→2%), Proteus vulgaris (14%→7%), Morganella morganii (7%→0%), Proviclencia spp.(17%→0%), Paptostraptococcus spp.(0%→0%), Bacteroides frragilis (10%→11%), other Bacteroides spp.(79%→88%) であった。MRSA, S. apidermidis, other CNS, other Bacteroides spp. で, 耐性率の増加傾向が認められた。また, B. fragilisでも10%の耐性菌が分離され, 今後の動向に注意が必要である。対照薬との比較では, CMZはMSSAに対しては, CEZ, CTM, FMOXより弱く, SBT/CPZより良好であった。MRSA, S. apidermidis, other CNSに対しては, 検討したすべての薬剤の抗菌力が弱かった。
    グラム陰性菌に対して, CMZは概してCEZ, CTMより優れ, FMOXより弱かった。B. fragilis, other Bacteroides spp.に対して, CMZは概してCEZ, CTMより優れ, SBT/CPZ, FMOXと同等か若干弱かった。今回の結果と市販前のCMZの抗菌活性を比較したところ, 活性の低下はほとんど認められず, 良好な抗菌力を維持していることが示された。
  • その3. 感受性の推移
    熊本 悦明, 塚本 泰司, 松川 雅則, 国島 康晴, 広瀬 崇興, 茂田 士郎, 山口 脩, 荻原 雅彦, 石橋 啓, 高橋 和郎, 吉田 ...
    2003 年 56 巻 6 号 p. 584-673
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    2001年9月から12月までの問に全国10施設において, 尿路感染症と診断された患者から分離された菌株(Staphylococcus aureus, Enterococcus faecalis, Escherichia coli, Klebsiella spp., Pseudomonas aeruginosa) を供試し, それらの各種抗菌薬に対する感受性を測定し, 1992~2000年と2001年の感受性を比較した。比較は菌種を単純性尿路感染症と複雑性尿路感染症 (カテーテル非留置とカテーテル留置を含む) に分類して行った。
    S. aureusの薬剤感受性は, 2000年度までの成績と変わりなく, Vancomycin (VCM) に対する感受性が最も良好で, MICは1μg/mL以下であった。E. faecalisはAmpicillinとImipenemに対して良好な感受性を示し, MIC90は1~4μg/mLであった。また, VCMに対しても良好な感受性 (MIC90: 2μg/mL) を示した。E. coliはペニシリン系薬剤以外の薬剤に対して良好な感受性を示した。セフェム系薬剤ではCefbtiam (CTM) のMIC90が0.25~0.5μg/mL, 様にCefbzopran (CZOP) では≤0.125μg/mLと良好で耐性化は認められていなかった。前年度報告された複雑性尿路感染症におけるキノロン系薬剤に対する感受性の低下が, 今年度も認められた。Ktebsiella spp.の感受性は, いずれの薬剤に対しても大きな変化は認められず, ペニシリン系薬剤を除き, 全般的に良好であった。セフェム系薬剤ではFlomoxef, Cefpirome, Cefixime, ならびにCZOPが良好で, 両感染症におけるそのMIC90は≤0.125μg/mLであった。P. aeruginosaの薬剤感受性は全般的に低かったが, キノロン系およびカルバペネム系薬剤に対しては, 感受性 (MIC:≤0.125~2μg/mL) を示す株が比較的多く検出された。
  • 疋田 宗生, 寺島 清香, 板橋 孝壽, 佐藤 優子, 岡本 了一, 井上 松久
    2003 年 56 巻 6 号 p. 674-680
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    2000年に各種臨床材料から分離した緑膿菌288株を用いて, 感受性ディスク法による経時的薬剤感受性変化について詳細に検討した。その結果, 薬剤特異的に二重リングの阻止円が形成されることが判明した。この現象はカルバペネム系薬の中ではMEPMにおいてのみ認められ, その陽性率は比較的高く, 供試した菌株の50%に及んだ。一方, CAZ等のセフェム系薬でも同様に二重リングの阻止円像が見られた。この二重リング現象を増殖曲線に及ぼす影響とAmpC型β-ラクタマーゼの酵素誘導能の両面から調べた結果, 二重リング現象は, MIC以下の薬剤濃度における殺菌力の差異に大きく関係しているものと推定された。
  • 大城 知子, 福富 由美子, 高柳 恵, 草場 耕二, 永沢 善三, 青木 洋介, 永山 在明
    2003 年 56 巻 6 号 p. 681-690
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    2002年から2003年に成人および小児患者の呼吸器, 尿路, 婦人科領域由来材料より分離されたStreptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Escherichia coli, Klebsiel pneumoniae, Haemophilus influenzae, Branhamella catarrhalis各々40株およびPeptostreptococcus spp. 22株を対象に, 経口セフェム系薬6剤の抗菌力を測定した。なお, 近年耐性化が問題視されているS. pneumoniaeおよびH. influenzaeについては, penicillin intermediate S. pneumoniae (PISP), penicillin-resistant S. pneumoniae (PRSP) また, β-lactamasenegative ampicillin-resistant H. influenzae (BLNAR) 株を中心に収集し検討した。
    S. pyogenesに対し, cefaclor (CCL) を除きセフェム系薬のMICは全株≤0.03μg/mLと良好な抗菌力を示した。
    Peniciliin-susceptible S. pneumoniae (PSSP) 7株に対し, 全ての薬剤が良好な抗菌力を示し, cefteram (CFTM), cefditoren (CDTR) のMICは全株0.125μg/mL以下の強い抗菌力を示した。PISPとPRSPを合わせた耐性株に対する抗菌力は, いずれの薬剤もPSSPに比べMICの上昇がみられた。CDTRのMIC90が1μg/mL, CFTM, cefeapene (CFPN) が2μg/mLと, 他のセフェム系薬に比べると良好な抗菌力を保っていた。
    E. coliに対し, セフェム系薬のMIC90は0.5~8μg/mLと薬剤間に差がみられた。CFTMのMIC90が0.5μg/mL, CDTR, CFPNが1μg/mLと良好な抗菌力を示した。また, CCLのMICが32μg/mL以上を示す高度耐性株が4株認められ, これに対し, 他のセフェム系薬もMICは上昇する傾向を示した。
    K. pneumoniaeに対し, セフェム系薬のMIC90は0.25~1μg/mLと良好な抗菌力を示した。なお, amoxicillin (AMPC) のMICは全株16μg/mL以上であった。
    H. influenzae 40株のうち, β-lactamase negative ampiciilin-susceptible H. influenzae 23株に対する各薬剤のMIC90は, CCLが64μg/mLと高値を示し, 他のセフェム系薬でも0.25~8μg/mLと差がみられた。BLNAR 15株に対しては, CDTR, CFTMは全株MIC 1μg/mL以下の優れた抗菌力を示したが, cefdinir (CFDN), cefpodoxime (CPDX) てはMIC90は8μg/mLを示し, CCLでは全株が16μg/mL以上のMICを示した。β-lactamase産生2株はABPC高度耐性株であった。
    B. catarrhalisは全株β-lactamase産生株であり, セフェム系薬はAMPCと比較するとCCLを除き比較的良好な抗菌力を保っていた。
    Peptostreptococcus spp. のMIC90は0.25~2μg/mLであった。
  • 形態変化およびShiga toxinsの産生に及ぼす影響
    高田 利彦, 田端 麻紀子, 渡部 宏臣, 鶴岡 勉
    2003 年 56 巻 6 号 p. 691-696
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    In vitroにおけるEscherichia coli O157: H7に対するfosfomycin (FOM), ampicillin (ABPC) norfloxacin (NFLX), chloramphenicol (CP) およびkanamycin (KM) 作用時の殺菌作用, 形態変化およびshigatoxins (Stxs: Stx1およびStx2) の菌体内蓄積と遊離について検討した。作用濃度としては, 高濃度として16MIC, 低濃度として1/4MICを選択した。各抗菌薬の16MICを作用させた場合, 細胞壁合成阻害薬のFOMおよびABPCでは強い溶菌作用を示した。この溶菌によりStx1の菌体からの遊離が認められたが, Stxsの蓄積は認められなかった。核酸合成阻害薬のNFLXおよび蛋白合成阻害薬のKMでは, 一部に溶菌像とわずかの伸長化が観察され, Stxsの蓄積と遊離量は少なかった。蛋白合成阻害薬のCPでは形態変化は観察されなかったものの, Stxsの蓄積および遊離量は少なかった。一方, 各抗菌薬の1/4MICを作用させた場合, FOMでは強い溶菌作用とStx1の遊離が認められたが, Stxsの蓄積は認められなかった。ABPCおよびNFLXでは溶菌作用は弱く, 菌の伸長化とStxsの蓄積および遊離が認められた。特にNFLXではStx2の蓄積および遊離が顕著であった。KMおよびCPでは, 形態変化およびStx1の蓄積は観察されなかったが, Stxsの遊離が認められた。以上の結果は, FOMが腸管出血性大腸菌感染症において, 発症初期における経口投与で病状の重篤化を抑制する効果があるとの臨床報告を支持している。
  • 特にtime above the MICによって評価される抗菌薬を対象に
    小松 方, 中村 彰宏, 相原 雅典, 島川 宏一, 岩崎 瑞穂, 長坂 陽子, 福田 砂織, 松尾 収二
    2003 年 56 巻 6 号 p. 697-704
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    β-ラクタム剤等の時間依存型抗菌薬では, 投与された抗菌薬の血液中濃度が菌のMICをどれくらいの時間上回るか (Timeabove MIC%, 以下TAM) で有効性が決定される。この理論に基づき簡易にTAMを算出するプログラムを作成し, MICブレークポイントを導き出した。β-ラクタム剤を健常成人に投与したときのpharmacokinetics parameterを用い, 8時間の投与間隔を想定してTAMが40%以上を抗菌薬の有効域として求めたMICブレークポイントと, 日本化学療法学会が設定した肺炎のブレークポイントとを比較した結果, ほとんどの薬剤で±1MIC以内で一致した。一方, NCCLSブレークポイントとの比較では, 1日3回投与した場合, 著者らが算出したMICブレークポイントの方が, ampicillin (1g, 静注), piperacillin (2g, 静注), cefotaxime (1g, 静注) およびcefrnetazole (1g, 静注) では2管, amoxicillin (0.25g, 内服) およびcefaclor (0.5g, 内服) では3~4管低く算出された。今後, このようなシステムが感染症検査室に導入され, わが国の用法用量に適合したMICブレークポイントが検査室から医師に伝えられるとすれば, これまで用いられてきた感染菌のMIC値に偏重した抗菌薬選択から, 抗菌薬のpharmacokineticsとpharmacodynamicsを絡めた適正な投与スケジュールが提案できると考えられた。
  • 特にキャンディン系抗真菌薬ミカファンギンの抗菌力
    小松 方, 相原 雅典, 島川 宏一, 岩崎 瑞穂, 長坂 陽子, 福田 砂織, 阿部 教行, 松尾 収二
    2003 年 56 巻 6 号 p. 705-711
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    2002年11月から2003年2月までの3ヶ月間に当院で分離された酵母様真菌92株に対するキャンディン系抗真菌薬のミカファンギン (MCFG) を含む既存抗真菌薬の抗菌力測定を行った。最小発育阻止濃度 (MIC) の測定は日本医真菌学会法に準拠した。C. albicans (55株), C. tropicalis (20株), C. glabrata (8株), Chrusei (5株) の4菌種に対する抗真菌薬のMIC80%はMCFG: ≤0.03~0.125μg/mL, amphotericin-B: 0.125~0.25μg/mL, 5-fluorocytosine: ≤0.125~16μg/mL, itraconazole: 0.25~2μg/mL, fluconazole: 0.5~32μg/mLに分布した。耐性菌分離頻度はfluconazole耐性のC.tropicalisが20%, susceptible dose dependentを含むと33%に, またC.albicausのfluconazole耐性株も5%, susceptible dose dependentを含むと11%認められたが, MCFGはこれらのアゾル耐性Candida属に優れた抗菌力を示した。耐性菌の同一性をrandomly amplified polymorphic DNA patternで分析を行なった結果, fluconazoleに≥16μg/mLを示したC. tropicalis6株にいて3株は同一パターンを示し, また, 同一病棟由来株であったが, C. albicans6株は全て異なったパターンを示した。
  • 藤木 玲, 力丸 徹, 相澤 久道, 川山 智隆
    2003 年 56 巻 6 号 p. 712-718
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    軽症あるいは中等症の非定型肺炎が疑われた成人市中肺炎患者26例に対して, clarithromycin (以下CAMと略す, クラリシッド ®) 200mg/回1日2回投与による同薬の臨床的有用性を検討した。起因病原体として最も多く認められたのは, 非定型病原体であるMycoplasma pneumoniaeの10例 (38.5%) で, そのうち8例は中等症であった。次いで多かったのはHaemophilus influenmeの3例 (11.5%) で, PSSPが2例 (7.7%), Chlamydia pneumoniae, Streptococcus constellatusおよびPRSPはそれぞれ1例 (3.8%) ずつ, 残り8例は起因病原体が不明であった。β-ラクタム系抗菌薬の前投与を受けていた15例を含む全例でCAMによる治療は有効で, 全例が治癒した。特記すべき有害事象は認められなかった。細菌性および非定型肺炎の鑑別は治療方針を決める上で非常に重要であるが, 臨床的には困難な症例も多く, 若年例, 軽~中等症で重篤な基礎疾患を有さない例では呼吸器感染症の病原体に幅広いスペクトラムを有するCAMのようなマクロライド系薬剤が有用であり, 同薬剤を第一選択治療薬として用いることが適切と考えられた。
  • 山口 広貴, 内納 和浩, 横山 博夫, 松本 卓之, 小田切 繁樹
    2003 年 56 巻 6 号 p. 719-736
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    細菌感染症が疑われる体温38℃以上の急性上気道感染症にレボフロキサシン300mg分3または400mg分2が処方された症例2,353例を追跡調査して, 症状に応じた本剤の適切な投与方法を検討した。
    1) 体温を指標とした治癒率は, 400mg分2投与群の方が300mg分3投与群に比べ有意に高かった。また, 投与開始時の体温が38.5℃以下の症例では両群間に有意差は認められなかったが, 38.6℃以上の症例では, 400mg分2投与群が300mg分3投与群に比べ有意に高い治癒率を示した。
    2) VASによるQOLの改善については, 両群間に有意差は認められなかったが, 38.6℃以上の症例では, 400mg分2投与群の方が300mg分3投与群に比べ3日目, 5日目, 6日目の時点で有意に高い改善を示した。
    3) 再診率は, 400mg分2投与群の方が300mg分3投与群に比べ有意に低かった。また, 38.5℃以下の症例では両群間に有意差は認められなかったが, 38.6℃以上の症例では400mg分2投与群の方が300mg分3投与群に比べて有意に低い再診率を示した。
    4) 非ステロイド性消炎鎮痛剤 (NSAIDs) は64.3%の症例に併用されていたが, NSAID併用の有無別の治癒率に有意差は認められなかった。
    5) インフルエンザウイルス陽性例は12.7%であり, そのうち41.3%に抗インフルエンザ薬が併用されていたが, レボフロキサシン単独投与群, 抗インフルエンザウイルス薬併用群の治癒率に有意差は認められなかった。
    6) 副作用発現率は400mg分2投与群で0.84%, 300mg分3投与群で0.50%であり, 両群間に有意差はなく, 重篤な副作用も認められなかった。以上, 細菌感染症が疑われる体温38.6℃以上の急性上気道感染症に対してレボフロキサシンを投与する場合, 400mg分2投与は治療効果, 患者QOL, 再診率の点で300mg分3投与より優れており, 安全性を含め推奨し得る投与方法と考えられた。また, 38.0℃~38.5℃の症例に対しては, レボフロキサシン300mg分3投与で十分な治療効果が期待できることが確認された。
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