2002年8月から2003年7月までの間に, 全国13施設において尿路感染症と診断された患者から分離された菌株を供試し, それらの各種抗菌薬に対する感受性を測定した。 尿路感染症患者491症例から分離され, 起炎菌と推定され感受性を測定できたものは578株で, その内訳はグラム陽性菌が177株 (30.6%), グラム陰性菌が401株 (69.4%) であった。
Staphylococcus aureusに対する抗菌力はVancomycin (VCM) の抗菌力が最も強く1μg/mLですべての菌株の発育を阻止した。
Staphylococcus epidermidisに対してはCefotiam (CTM) をはじめとするセフェム系薬剤の抗菌力は比較的良好であった。
Enterococcus faecalisに対してはAmpicillin (ABPC), Imipenem (IPM) およびVCMの抗菌力が最も強くMIC90は2-4μg/mLであった。 Clarithromycin (CAM) に対する高度耐性株 (MIC: ≥256μg/mL) が48.3%認められたが, Cefozopran (CZOP) に対しては, 全く認められなかった。
Escherichia coliに対するセフェム系薬剤の抗菌力は全般的に良好であった。 なかでも, CefPirome (CPR) およびCZOPは最も強力で, そのMIC90は0.125μg/mL以下であった。 また, キノロン耐性のE.coli株 [Ciprofloxacin (CPFX): MIC≥4μg/mL] が13.5%検出され, 前年度よりも増加した。
Citrobacter freundiilこ対するセフェム系薬剤の抗菌力は全般的に弱かったが, CZOPおよびCPRは非常に強力で, そのMIC90はそれぞれ0.25μg/mLおよび0.5μg/mLであった。
Klebsiellapneumoniaeに対するセフェム系薬剤の抗菌力は良好で, なかでも, Cefmenoxime (CMX), Cefixime (CFIX), Flomoxef (FMOX), CPRおよびCZOPは, 強力な活性を示し, そのMIC90は0.125μg/mL以下であった。
Serratia marcescensに対しては, Meropenem (MEPM) が最も強く, ついでCPR, CZOPの順に強力であった。
Proteus mirabilisに対する抗菌力は, CMX, Ceftazidime (CAZ), CPR, MEPM, Carumonam (CRMN) およびLevofloxacin (LVFX) が最も強く, そのMIC90は0.125μg/mL以下であった。 セフェム系薬剤では, CMX, CPR, CAZについでCZOPおよびCFIXが強力で, そのMIC90は0.25μg/mLであった。
Pseudomonasaeruginosaに対する各種薬剤の抗菌力は全般的に弱く, IPMおよびAmikacin (AMK) のMIC90が16μg/mLであった以外は, いずれの薬剤も64-≥256μg/mLであったが, CZOPの抗菌力は比較的良好 (MIC50: 8μg/mL) であった。
我々は, 泌尿器科領域において重要な疾患である尿路感染症について, 1979年以来, 分離菌の頻度, 各種抗菌薬に対する感受性を測定し, 患者背景および感受性の経年的変動について検討を続けてきた1~23)。
本年も若干の知見を得る事ができたので, その1では感受性, その2では患者背景, その3では感受性の推移について報告する。
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