2004年8月から2005年7月までの間に全国14施設において, 尿路感染症と診断された患者から分離された菌株 (
Staphylococcus aureus,
Enterococcus faecalis,
Escherichia coli,
Klebsiella spp.,
Pseudomonas aeruginosa) を供試し, 各種抗菌薬に対する感受性を測定した。菌株を単純性尿路感染症由来と複雑性尿路感染症由来 (カテーテル非留置とカテーテル留置を含む) の2群に分類し, 1995-2003年の感受性と比較した。
S.aureusの薬剤感受性は, 2003年度までの成績と同等で, Vancomycin (VCM) およびArbekacin (ABK) に対して最も強い感受性を示した。
E.faecalisの薬剤感受性も2003年度までの成績とほぼ同等であった。
E.coliのセフェム系薬剤に対する感受性は全般的に良好で, Cefbzopran (CZOP) のMIC
90は1995年以降0.125μg/mL以下であり最も安定していた。Cefpirome (CPR) およびCefbtiam (CTM) に対する感受性も良好であったが, Cefaclor (CCL), Cefixime (CFIX), Cefbodoxime (CPDX) に対する複雑性尿路感染症群の感受性は大きく低下した。カルバペネム系薬剤に対する感受性も良好であったが, 前年度まで良好だったCarumonam (CRMN) に対する感受性は低下傾向を示した。また, キノロン系薬剤に対する感受性の変動は大きく, 単純性尿路感染症群では2003年以降, 複雑性尿路感染症群では2000年以降急激な低下を示しており, 耐性株の出現が示唆された。
Klebsiella spp.の薬剤感受性は, 前年度Cefazolin (CEZ), CTM, CCL, CPDX, Cefditoren (CDTR) に対して低下したが, 本年度は前々年度のレベルにまで回復した。その他のセフェム系薬剤に対する感受性は, 1995年以降比較的安定しており, 特にCZOPに対して最も高い感受性 (MIC
90≤0.125μg/mL) を維持している。カルバペネム系薬剤およびCRMNに対する感受性も良好であった。アミノグリコシド系薬剤に対する感受性はCZOPより低いものの1995年以降安定な推移を示している。
P.aeruginosaの薬剤感受性は全般的に低く, その感受性は1995年以降ほとんどの薬剤で大きく変動している。単純性尿路感染症群に対してMIC90が大きく変動しているものは, Ceftazidime (CAZ), Cefsulodin (CFS), CZOP, Imipenem (IPM), Meropenem (MEPM), Aztreonam (AZT), CRMN, Gentamicin (GM) ならびにTobramycin (TOB) で, 複雑性尿路感染症群に対しては, CFS, CZOP, MEPM, GMならびにCiprofloxacin (CPFX) であった。Amikacin (AMK) に対する複雑性尿路感染症群の感受性は比較的安定していた。MIC
50の年次推移からみて, 比較的安定して高い抗菌力 (MIC
50: 0.5-2μg/mL) を有している薬剤はTOBついでIPMであった。
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