2005年に全国の一次医療機関由来の各種患者検体から得た臨床分離株 (好気性グラム陽性球菌6菌種550株, 好気性グラム陰性菌10菌種700株, 嫌気性菌3菌種150株) に対する経口抗菌薬のMICを測定し, 薬剤感受性を検討した。その結果, 好気性グラム陽性菌の
Staphylococcus属,
Streptococcus属に対して, セフェム系抗菌薬ではcefcapene (CFPN), cefditoren (CDTR), cefteram (CFTM) の抗菌力が強く, ニューキノロン系抗菌薬ではmoxifloxacin (MFLX) とtosufloxacinが強かった。試験菌株に対しニューキノロン系抗菌薬は全般に強い抗菌力を示したが, MRSAでは耐性株が多く認められた。また,
Streptococas pneumoniaeではマクロライド系抗菌薬に低感受性および耐性を示す株が70%以上認められた。一方, 好気性グラム陰性菌に対してセフェム系抗菌薬は,
Proteus属以外の検討菌種において概ね良好な抗菌力を示し,
Haemophilus influenzaeでは特にCFPN, CDTR, CFTMが強い活性を示した。ニューキノロン系抗菌薬では
Proteus mirabilisおよび
Providencia属以外の検討菌種で強い抗菌力を示し, 特に
H.influenzaeや
Moraxella catarrhalisなどには極めて強い活性を有していた。今回の一次医療機関由来の臨床分離株の成績は, 我々が別途実施している三次医療機関を主とする臨床分離株の感受性と比較すると, MSSAでキノロン耐性株が少なく,
Streptococcus pyogenesでマクロライド耐性株が多いなどの異なる傾向がみられた。こうしたことから各種抗菌薬の使用状況等も考慮し, 感受性動向を正確に把握するため, より適切な調査を継続していくことが必要である。
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