患者・家族から医療機関に寄せられる苦情は、患者の生命・身体のみならず、病院組織に対する重大な危険をもたらす場合がある。一方で、医療機関にとってケアの質を向上させるものとしてその利活用の方策が模索されてきたが、2014年に、Readerらがシステマティック・レビューにより、苦情の分類法を確立することで、ようやく今後の利活用への展望が開けた。本研究では、この分類法の日本語版を作成し、わが国での苦情等の患者意見に適用し、利用可能性を検証するとともに、苦情の傾向を検討する。
結果として、日本語版苦情分類法はわが国の苦情に対しても利用可能であった。また、わが国での苦情の傾向が海外の傾向と異なること、診療領域ごとに多い苦情カテゴリーが存在することが明らかとなった。
日本語版苦情分類法の確立によりこれを用いた知見の蓄積が可能となり、わが国でも病院ごとの苦情対応から、組織を超えた組織改善への利活用へと展開することが可能となったといえる。
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