家鷄の色素上皮の大さ, 核の位置, 色素出現状態を檢べ, なほ網膜諸層の分化の状況とその厚さを發生學的に觀察した研究である. 孵化3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 12, 16, 18日の鷄胎, 生後1週間, 成長し終つた鷄の眼球を固定し, パラフイン切片とし, 染色したものを鏡檢し, 計測した.
先づ色素上皮の細胞の胞體の高さは發生の初めに急に減じ, 幅は孵化7-9日に急に増し, 以後あまり變らず, 柱形から扁平となる. 核の長さは徐々に減じ, 幅は孵化7-9日に急に大となる. 核は發生の進むにつれ, 胞體の脈絡膜側面より網膜側面に移動するが, その後もとに戻る. 色素は孵化3日に眼杯の背側部に現はれ, しかも細胞の脈絡膜側部に多い.
次ぎに網膜の厚さは初め著しく増すが, 網膜に各層が現はれ始めた後はあまり變らない. 網膜には先づ視神經節細胞が現はれ, 次いで内外顆粒層が生じ, 最後に杆錐状体層が現はれる. 杵錐状体層の網膜全層に對する相對厚は孵化中に増すが, 生後はあまり變らない. 外顆粒層と内顆粒層のものは發生の進んだものほど小である. 外網状層のものは變らず, 内網状層のものは孵化とともに増し, 生後はあまり變らない. 網膜の双極細胞の核部分は發生の進むにつれ, 視細胞に近づき, 即ち双極細胞は Kappers 氏の神經生物制位の法則に從ふものである.
抄録全体を表示