Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
13 巻, 3 号
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  • 視床下部下垂体系の比較組織学的研究. 第35報
    田宮 三代三
    1957 年 13 巻 3 号 p. 331-344
    発行日: 1957/11/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    正常成犬の視索上核及び脳室旁核の神経分泌細胞における古典細胞学的所見を検索し, 次の成果を得た.
    1. 細胞の形態は多極のものが最も多く, 核は円形乃至卵円形で, 多少とも偏在し, 視索上核腹内部で漏斗に近い部分の細胞には屡々核の濃縮が認められる. また例外的に2核細胞が見出される. 核小体は明らかであり, 時としてその内部に円形又は不整形の不染の空胞が認められ, それが核小体の大部分を占めることがある(この空胞は後報のごとく渇状態において増加する).
    2. マイトコンドリア(Levi氏液, Champy 氏液, Regaud 氏液又は Zenker-formol 固定, paraffin 包埋, Regaud 氏又は Heidenhain 氏鉄ヒマトキシリン染色或は Altmann-Kull 氏染色)は短桿状のものが最も多く, 顆粒状のものがついで多く, 長糸状のものは細胞体の部分では例外的である. マイトコンドリアは細胞質内に平等に散在する場合もあるが, 又屡々核の附近或は辺縁部の Nissl 物質間に群在する場合もある. 神経線維の部分ではマイトコンドリアは長糸状で線維長軸の方向をとる.
    3. 先ずアルデバイドフクシンで神経分泌物を染出した後 Regaud 氏鉄ヒマトキシリンで重染色を行う方法, 及び先ずマイトコンドリアを染出描画した後アルデハイドフクシンで再染色を行う方法により, マイトコンドリアと神経分泌物の関係を検討したが, 量, 形態及び配列状態に関して両者の間に一定の相関性を求め得なかった, しかし分泌物が少量である場合それらが殆ど常に比較的マイトコンドリアの多い核附近に存すること及び(後報のごとく)分泌機能の昂進時にマイトコンドリアの所見に一定の変化が認められることから, マイトコンドリアの豊富な酵素系が分泌の機序に関して密接な関係を有するであろうことは想像される. しかしマイトコンドリアの直接の変形によって分泌物の形成が行われるとは考えられない.
    4. Golgi 装置(青山氏法又は Kolatchev 氏法)は黒い索の, 核をとりまく網工として現われることが多いが, 時には断片的に散在することもある. 網工のところどころに Golgi 内体に相当する空胞が認められる. 網工は核の偏在側と反対の側によく発達し, 屡々突起の根部に進入するが, 細胞体の表面には達しない.
    Golgi 装置を染色した切片を更にトルイヂン青で重染色すると, Golgi 装置の外側に Nissl 物質に現われる.
    5. 先ず Golgi 装置を銀染して描画した後, その切片をCHP法又はAF法で再染色して神経分泌物との関係を検討したが, 形態, 量, 位置に関して両者の間に一定の関係を求め得なかった. 分泌物が少量である場合, その位置は多くは Golgi 網工の内部に当るが, しかし分泌物が Golgi 装置と全く無関係に存することも多い.
    6. 神経分泌物には微細不整形顆粒状のもの, 球形顆粒状のもの及び不整形集塊状のものが区別され, 第1型のものが最も多い. CHP法或はAF法ではこれら3型の何れのものも染出されるが, その他の染色法では主として第2型のものが染色され, 従って分泌物が染出される細胞の数も少く, この型式のものがその他のものと化学的組成を異にすることが推定される. 鉄ヒマトキシリンで分泌物を染出し得なかった細胞にも, CHP法やAF法で再染色を行えば, 微細顆粒が著明に現われる. 第3型は Herring 小体の或る場合に相当する.
    7. Nissl 物質(純アルコール固定, セロイヂン包埋, チオニン又はトルイヂン青染色)の所見は細胞の大さによって異る. 即ち, 小形細胞には Nissl 物質を多量に有するものと殆ど有しないものとの2型があり, 中形細胞では塊状のものが辺縁部に並び粉末状のものが内部に散在し, 大形細胞では少数の塊状のものが辺縁部より少し内側に離れて存し, 粉末状のものが幾分多量に散在することが多い. 一般に塊状のものが中心部に存することは例外的であり, 虎斑状或は核周輪を呈することは認められない.
    8. アルデハイドフクシンとトルイヂン青による重染色で Nissl 物質と神経分泌物の関係を検討すると, 小形細胞ではその2型を通じて神経分泌物は常に少量で核附近にあることが多く, 中形細胞では Nissl 領域を除き略々均等に分散してその量は細胞の大さに応じ, 大形細胞は分泌物に満ちている. 塊状の Nissl 物質と分泌物との間には明るく不染に止まる一帯が認められる.
    9. これらの所見から, 中形細胞において神経分泌物が増量するとともに, Nissl 物質は減少し, 細胞は大形となり, その分泌物が突起内或は細胞体外に放出されると, 細胞は縮小して Nissl 物質も分泌物もともに少い小形細胞となり, ついで Nissl 物質を貯え, 分泌物の形成を始め, 両者の増大とともに漸次細胞が大形になる, という週期が推定される. 小形細胞の2型は分泌週期の開始と終了の2相に相当する所見と解釈される.
  • 視床下部下垂体系の比較組織学的研究. 第36報
    田宮 三代三
    1957 年 13 巻 3 号 p. 345-354
    発行日: 1957/11/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    前報に正常犬の視床下部神経分泌細胞における細胞学的諸所見を記載したが, 本篇においては引きつづき行った実験的渇状態, 即ち抗利尿ホルモンの需要増大, 換言すれば視床下部の神経分泌機能の昂進が推定される状態の, 成犬の神経分泌細胞を細胞学的に検索した成果について記載した. 要旨は次の如くである.
    1. 実験的渇状態の神経分泌細胞では核容積の増大が認められ, 且つ核小体の内部に空胞が出現乃至は増加する傾向が著しい. 細胞の大さについては大形細胞の減少が気付かれるが, これは恐らく神経分泌物が直ちに線維内に移動し, 細胞体に蓄積することが少いためと思われる.
    2. マイトコンドリアは主として核の周囲及び核と突起の間の細胞質域に多数に認められ, 細胞質内に平等に散在する細胞が少くなる. また糸状のマイトコンドリアを有する細胞が増加し, 顆粒状のマイトコンドリアのみを有する細胞が少くなる.
    2. Golgi 装置は細胞質の殆ど全域に拡がる傾向を示し, Golgi-内体に相当する空胞も増加し, また断片形の Golgi 装置を有する細胞が多くなる. この形のものもやはり細胞質の全域に拡がつている. 固定標本における Golgi 装置が人工産物であるとしても, 実験的条件下におけるその変化は細胞機能の変調を示す意義を失わないと考えられる.
    4. Nissl 物質に関しては集塊状のものが主として細胞の周辺部に存する点は正常時と同様であるが, 個々のものが著しく不整形となり, 全体の配列が乱れ, 正常犬における如き定型的な周辺輪の像は甚だ稀となる. 細胞中心部にも集塊状のものが現われ, 屡々核膜に密着せる所見もある. 小形細胞にも殆ど常に相当量の Nissl 物質が認められ, 比較的大形の細胞にも塊状の Nissl 物質を多量に有するものが少くない. 神経分泌核に属しない神経細胞ではこの場合 Nissl 物質の減少が認められるが, 神経分泌細胞ではその点明らかでない.
    5. 神経分泌物は減少し, 微細顆粒状のもののみが, 比較的核に近い領域, 即ちマイトコンドリアの主として認められる領域に略々一致して, わずかに染出される.
  • 上田 遐
    1957 年 13 巻 3 号 p. 355-374
    発行日: 1957/11/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    人顔面神経核の上端は外旋神経核の下端より稍々上方に現われ, 0.3mm下降すると本核は背側, 中間及び腹側群の3群に分かれ, 更に下降すると神経細胞の激増により中間群は内側及び外側の2亜群に, 腹側群は内側, 中間及び外側の3亜群に分けられる. そして本核は下オリーブ核の上部の高さに来ると, 背側群, 中間群, 腹側群の順に消失する.
    本核の運動神経細胞は40-60μ大で多数の神経突起を出す. 突起間は凹状を呈す. 軸索突起は細いが強染性で, 1細胞から1条, 稀に2条出る. 又2叉状分岐を示すものもある. 短突起は弱染性であるが, 甚だ太く, 次第に分枝に岐れ, 終末枝は尖鋭状に終る. 尚おこの細胞は1核性を一般とするが, 稀に2核性を示し, 細胞体内には発達良好な黄色色素の集合を見る.
    人顔面神経核にも猫の場合と同様, 然しより小量に小型の植物神経細胞を見る. その多くは紡錐状を呈し, 比較的大型の核は細胞体の中心外に位する. この細胞は本質的には網様体に所属する. その他本核内には猫に於ける様に円味のある大型細胞も見られるが, 果して知覚性であるかは分らない.
    顔面神経核に対する外来線維として第1に三叉神経脊髄路からの知覚線維がある. 之はその腹側部から内側方に向う微細枝と背側部から植物線維を伴うものとから成る. 第2は聴神経線維で, 之は前者の腹側方を内側に走り顔面神経核の腹側部に入る.
    第3は錐体からの運動線維である. 之は内側部の外弓状線維に入り, 縫線で他側のものと交叉し, 然る後他側の内弓状線維に移行して顔面神経核に到る. 尚お錐体から外弓状線維に入り, 外側方に進み, 同側の顔面神経核に到る運動線維も存在する様である.
    以上各種外来線維は本核内に来ても殆んど分岐吻合を示さない事は甚だ興味深いが, とその終末様式が洵に不明にされる事は甚だ遺憾であった.
  • 伊藤 幸孝
    1957 年 13 巻 3 号 p. 375-389
    発行日: 1957/11/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    人外耳道骨部では上壁外半丈は小規模な軟骨部の組織像を示すが, その他の諸壁は甚だ菲薄に構成され, 極めて特異的組織像を示す. 即ち鼓膜に於ける様に表皮は甚だ背が低く, 真皮乳頭層も発達甚だ劣勢, 且つ表皮に対し乳頭形成を示さない. のみならず皮下組織内には発達良好な縦走性の平滑筋束で包囲されている小静脈の存在を見, 真皮網状層には血管に関係なく走る多数の平滑筋線維の走行を見る.
    外耳道軟骨部の神経分布は一般有毛性外皮に於けると略ぼ同様で, 知覚線維の多くのものは毛髮神経楯或は管の中に入って弱い叢状終末を構成して終り, 他の小数の知覚線維は真皮乳頭層に進んで非分岐性及び単純性分岐性終末となって終る. 但しこの乳頭層に来る知覚線維の量は一般有毛性外皮に於けるよりは多少より多く, 外陰部外皮に於けると略ぼ同じである. 然し後者に於けると異って, この部には陰部神経小体も Pacini 氏小体も決して認められない.
    外耳道骨部の知覚神経分布には甚だ興味深いものがある. 先ず多少の耳垢腺や毛嚢を所有する上壁外半の知覚神経分布は軟骨部の夫に類似する. 但し表皮下に形成される知覚終末は後者に於けるよりも多量に発見される.
    上壁外半以外の骨部諸壁に対する知覚線維は量的にもより多く, 可成り太い神経束に含まれて皮下組織から真皮に向う. 而もその多くは弱い発達の乳頭層の中に進んで終末を形成する. 又鼓膜に近づくに従って知覚線維は一層量を増し, 而もこの部の表皮の中に入って終かと思われるものも認められ, この状態は鼓膜外皮部に於けると類似する. この知覚線維は甚だ太いもの, 中等大のもの, 可成り細いものとに区別されるが, 之等は何れも分岐する事なく, 或は単純な分岐を行って表皮直下に専ら尖鋭状に終っている.
    その他骨部では稀ならず側頭骨の骨膜に接して形成さるれ太い線維に由来する分岐性知覚終末の存在も認められる.
  • 河合 忠夫
    1957 年 13 巻 3 号 p. 391-399
    発行日: 1957/11/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    The author, who has previously investigated the secretory function of the parotid gland cells when histamine in the blood was increased by injections of 3mg of histamine hydrochloride daily for the periods of 1, 15, 30, 45 and 60 days, has now attempted to observe the secretory function of the submandibular gland cells under the conditoin in which histamine increased in the blood and an anti-histamic action of the parotid saliva, which has previously been demonstrated by FUJIE, was perfectly excepted. For this purpose, the author has extirpated the parotid glands totally, because the experimental result in which the remarkable increase of histamine in the blood according to the total extirpation of the parotid glands was demonstrated, has been reported by NAKAO.
    It was concluded from the observations on the quantitative fluctuation of the secretion vacuoles in the gland cells, on the form of plastosomes, on the size augmentation of the cell nuclei, on the dilatation of the gland lumen, the intercalated portion or the striated duct and on the contents in them, that the secretory function (the production and the discharge of the secretory substance) of the submandibular gland cells had become active, regardless of the administration of diet, after the extirpation of the parotid gland, and that it greatly resembled the cell function of the parotid gland cells, which the author formerly observed. However the nucleic acid in the nuclei of the submandibular gland cells, which is believed to participate in the compound of the secretory substance in the cells, increased less than in the nuclei of the parotid gland cells. Here it is noticed that the secretion of the former gland cells may differ from the one of the latter gland cells, though the cells of both glands are serous cells of the same kind.
    According to these conclusions, it is regarded on the one hand that, if the parotid gland were perfectly extirpated, the saliva secreted in the oral cavity seems to be compensated by the submandibular gland, and on the other hand that, it should not cause wonder if a difference between the parotid and submandibular saliva can be found in the internal secretion theory of the salivary gland (OGATA) and in the anti-histamic action theory of saliva (FUJIE).
  • 山口 二郎
    1957 年 13 巻 3 号 p. 401-414
    発行日: 1957/11/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    犬卵巣門内には人の場合よりも遙かに発達劣勢な神経叢が形成され, 之は多数の植物線維と少量の知覚線維とから成る. 尚お植物線維は此部の血管壁神経叢との間に吻合を行っている. 卵巣門から髄質に向う神経束は更に微細枝に岐れ且つ吻合を行って髄質神経叢に移行する. 本叢も人の場合よりは遙かに小規模に作られる. 然し本叢から皮質内に向う神経線維は甚だ良好な発達を示している.
    犬卵巣内でも植物線維の終末は Stöhr 氏終網で表わされ, 血管壁のみならず到る処其形成が認められる. 例えば卵巣間膜寄りの卵巣白膜にも植物線維の進入を見, 此部の結合織内に又屡々上皮層直下に終網が形成される. 但し終網は上皮細胞の中迄は入らない. 尚お上皮層に由来する上皮嚢形成の著明な場所では嚢間結合織が甚だ劣勢であるが, 此中にも稀ながら終網の形成を見る.
    犬原始卵胞の神経分布は人の場合より良好である. 即ち終網は卵胞細胞層に外接して可なり豊富に発見される. 発達途上にある顆粒層所有の犬卵胞でも其神経分布は人の場合に比し遙かに良好, 即ち卵胞膜の中には可なり多量の植物線維が入り, 之等は終網となって結合織細胞, 小血管及び毛細管に分布する. 又其1部は顆粒層の基礎層内に入る.
    犬卵巣では閉鎖卵胞は少量に見られる. 此事は犬卵胞の神経分布は人の場合よりも豊富である事に由ると考えられる. この閉鎖卵胞でも新生血管特に毛細管に沿って終網の形成が認められる.
    卵巣髄質内では血管を含む結合織内に終網の強力な形成が認められる. 又卵巣網に於てもその上皮層に外接する終網の形成, 又髄索の周囲にも終網の形成を見る. 然し両上皮管に対する終網の発達は決して良好ではなく, 無論上皮細胞内に入る終網は認められない.
    犬卵巣内にも人の場合と同様に知覚終末の存在が認められた. 之は幹線維が髄鞘を失った後, 分岐する事なく或は2-3の分枝に岐れ, 其先端は尖鋭状又は鈍状に終る. 即ち非分岐性及び単純性分岐性終末として表わされ, そして人卵巣に見られる様な複雑性分岐性終末の形成は認められない. 尚お以上知覚終末は髄質の中に或は皮質内に, 又卵巣間膜寄りの白膜内に形成されている. 又卵巣間膜内にも知覚線維並びに其終末が所々に発見されたが, 終末はここでも非分岐性及び単純性分岐性終末で表わされていた.
  • 栗原 英雄
    1957 年 13 巻 3 号 p. 415-431
    発行日: 1957/11/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    クロトン-オリーブ油を皮下に注射して起させた犬の炎症の滲出物と人の熱性炎と結核性寒性炎の塗布内に見られる諸物象の分子構造の密度がアツァン染色により観察せられた.
    犬の実験的炎症の初期には非細胞成分は無構造の基礎物質が主であり, これは構密度が低く, 過ヨード酸 Schiff 氏反応が陽性, Feulgen 氏反応が陰性である. 炎症が進むと, 自由細胞が増し, これが崩解するから, 多くの粒状, 塊状, 線維状, 網状などの物象が出来る. これ等の有形物象は初め概して密構であり, 基礎物質と違って過ヨード酸 Schiff 氏反応は陰性で, Feulgen 氏反応は陽性に現われる. 炎症が治癒に向うと, 有形物象の超構密度が低くなり, その数が減じ, 終りに滲出物質は無構造の基礎物質と疎構の粒状物象のみになる.
    その塗布を電子鏡検すると, 炎症の初期には径5-100mμの微粒子のうちでは6-15mμのものが最も多く, 炎症が進むと1時やや小径の6-10mμのものが多いが, 治癒期には6-15mμのものが多くなり, 終りにそれが屡ば連鎖を作る傾向を示すのが見られる.
    人の熱性膿の所見の経過はほぼ上記の急性炎の最盛期以後の経過に一致する. 人の寒性膿の塗布の非細胞成分には切開時にも有形物象が少く, その後の経過中にも塗布の所見があまり変化しない. そして概して有形物象の分子構造の密度が熱性炎のときに比して低く, 塩基好性が強いのが特徴である.
  • 北出 俊一
    1957 年 13 巻 3 号 p. 433-438
    発行日: 1957/11/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    生後1週間, 2月, 3年の金魚 (硬骨魚) の腹側大動脉とアカエイ (軟骨魚) とクロダイ (硬骨魚) の背側大動脉をホルマリンで固定し, レゾルチンフクシン, アツァン法, ヘマトキシリンとエオシンで染めて観察した.
    金魚の腹側大動脉は弾性型に属し, 心臓から直接伝わる周期的な血圧の変動を著しく均等にする. 成熟するにつれて, その血管壁の内膜が肥厚し, 中膜の弾性板が厚くなり, 外膜に膠原線維が増える.
    背側大動脉は鰓動脉からの血液を集めて尾方に送るものであり, 血圧の変動が少く, アカエイのものもクロダイのものも筋型に属し, その中膜の弾性成分は両者に同じ程度に発育している. 外膜の弾性成分はアカエイによく発達し, 膠原線維はクロダイに多い.
    クロダイの腹側大動脉には弾性成分が細かい蜂窩状の構造をする.
  • 松永 勝己
    1957 年 13 巻 3 号 p. 439-453
    発行日: 1957/11/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    涙阜及び半月状皺襞は10ケ月胎児に於て既に良好な発達を示し, 従って成人との間に特記す可き組織学的及び神経分布上の差異を示さない.
    涙阜の深層は毛嚢腺と微毛所有の毛嚢の外に屡々 Moll 氏腺, 副涙腺及び小 Meibom 氏腺を所有する. 表層は反之この部に続く眼瞼結膜と同一粘膜から構成される. 即ち上皮は Contino その他の所見と異なり涙阜の頂部と雖も他の部と同様に粘液細胞を含む重層円柱上皮から成り, 固有膜は胎児では線維細胞に富んだ結合織から成るが, 成人では淋巴球に富んだ網状組織から構成される.
    以上の組織像並びに眼瞼縁の内側角には毛嚢の発生を見ない事から考えると, 涙阜は瞼眼縁の内側角丈に由来する (Contino) ものではない. そして涙阜の表層は眼瞼結膜と同一粘膜に由来し, 深層は眼瞼外皮部の深層陥没によって生じたものと思考される.
    半月状皺襞の粘膜は眼瞼結膜及び涙阜に於けると同一性状を示す. 但し淋巴球の集合は僅少, 又線維細胞と血管とに富んだ特殊小皺襞の形成も見られて興味深い. 涙阜に移る眼瞼結膜は他の一般結膜 (瀬戸) よりも知覚線維に恵まれない. 従って之に続く涙阜の粘膜でも前者同様知覚線維の分布は劣勢, 僅かの非分岐性或は単純性分岐性終末を見るに過ぎない. 勿論上皮内線維や糸毬状終末は何処にも証明されない.
    涙阜の深層の神経分布は一般有毛性外皮に於けると略ぼ同様である. 但し知覚線維の量は遙かに少い. 知覚線維の大多数は毛嚢頸内の毛髮神経楯 (瀬戸) 内に単純な叢状終末を形成して終る. 之は体表に見られるどの毛髮知覚線維の終末よりも単純なものである. 知覚線維の1部は毛嚢腺の周辺に沿って上昇し, 粘膜内に既述の最単純性終末を作る.
    半月状皺襞の粘膜内にも知覚線維の進入を見るが, その量は涙阜粘膜に対するものよりも多少多いが, 眼瞼結膜に於ける通性に従って尚お甚だ劣勢である. 終末様式も甚だ単純で一般に非分岐型で表わされる. 唯強い結合織から成る特殊皺襞では神経叢の形成も見られ, 又単純な分岐性知覚終末も発見される. 然し上皮内神経はここでも認められない.
    植物線維は涙阜及び半月状皺襞に於ても体の他の部に於けると同様何れも Stöhr 氏終網に移行する.
  • 鈴木 喬
    1957 年 13 巻 3 号 p. 455-469
    発行日: 1957/11/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    犬の眼瞼も組織学上人の場合と本質的差異を示さないが, 然しその構成要素の発達及び配列状態に於て可なり著明な動物差が見られるから, その神経特に知覚神経分布の上にも人との間に可なりの差異が認められる.
    眼瞼結膜の知覚神経分布は人でも劣勢であるが, 犬では一層劣勢, 特に眼瞼板に沿って然りである. これはこの部の固有膜の発達が極めて劣勢である事に由る. 即ち僅少の知覚線維は専ら非分岐性終末に移行して上皮下に終り, そして人に見られる様な糸毬状終末の如きは何処にも見られないし, 又上皮内線維も証明されない. 反之眼瞼板を離れてより深部の結膜になると, 固有膜の発達もより良好, 従ってこの中に進む知覚線維も稍々豊富となり, そしてこれ等は非分岐性終末の外, 単純性分岐性終末に移行して上皮下に終る.
    犬眼瞼板は発達良好な Meibom 氏腺を含む強力なものであるが, 之に進入する知覚線維は人の場合よりも少く, 又その終末様式も遙かに単純, 一般に単純性分岐性終末として専ら眼瞼板の周辺部に形成される. 但しこの終末も特有な太さの変化に富んだ太い線維から構成される点では人の場合と異ならない.
    犬の眼瞼縁は固有膜の発達が甚だ劣勢であるから, 之に対する知覚線維及びその終末の発達も人の場合に比し甚だ劣勢, 人に見られる様な特有な糸毬状及び系蹄状終末の如きは決して認められず, 非分岐性及び単純性分岐性終末形成が僅かに見られるに過ぎない.
    犬眼瞼縁の外側角及び眼瞼外皮部は一般有毛性外皮に所属する. 従ってその中に来る可なり多量の知覚線維は多くは知覚性毛髮神経線維として比較的発達良好な毛髮神経楯又は管 (瀬戸) 内に来て稍々複雑な叢状又は鋸歯状終末に終る. 他の1部の知覚線維は乳頭層内に進む. 之は人の場合よりもより多量に存し, 専ら非分岐性及び単純性分岐性終末に移行して終る. 但し表皮内にまで入る線維は見られない.
    犬眼瞼外皮部には乳頭層に対する表皮の陥入による紡錐状の特殊上皮膨隆の形成を見る. この膨隆直下の乳頭層内には可なり多量の知覚線維が来て稍々複雑な分岐性終末に移行する. その終末枝は上皮直下に専ら尖鋭状に終り, 上皮基底部との間に密接な関係を示す. この特殊上皮膨隆部は恐らく犬眼瞼に特有な或種感受器を表わすものと考えれる.
  • 佐藤 龍也
    1957 年 13 巻 3 号 p. 471-485
    発行日: 1957/11/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    7-8ケ月人胎児の睾丸及び副睾丸の神経分布に関する研究成績は次の様に要約される. 睾丸及び副睾丸に於ても植物神経線維の発達は甚だ良好で, 其終末は何れも Stöhr 氏終網で表わされ, 之は各組織細胞に対し接触的主宰関係を示す.
    精系神経叢は専ら副睾丸頭及び睾丸に入る. この神経叢の中には少量の知覚線維も含まれていて, その多くは睾丸網に進むが, 1部は副睾丸頭の中に入る.
    睾丸網では知覚線維は成人に於けると同様に, 睾丸網の周囲又は網間結合織内に非分岐性及び単純性分岐性終末を形成して終る. その終末枝は屡々太さの変化を示し, その先端は専ら上皮下に尖鋭状に終るが, 又屡々更に睾丸網の1列性上皮内に入って上皮内線維に移行するものもある. その他睾丸では睾丸白膜内に進んで専ら非分岐性終末に移行する知覚線維も稀乍ら認められる.
    副睾丸頭に来る知覚線維の多くは輸出小管の間質結合織内に睾丸網に於けると同様, 非分岐性及び単純性分岐性終末を形成して終る. 然しここでは上皮内線維に移行する終末枝は殆んど見られない. 又睾丸鞘膜内板に進み, 専ら上皮下に非分岐性及び単純性分岐性終末に移行する知覚線維も稀ならず発見される.
    以上睾丸網及び輸出小管内に見られる知覚終末は生殖腺の分泌物の蓄積感を感受する外, 性欲にも密接な関係を示すものであり, 睾丸鞘膜内板内の知覚終末は外圧を鋭敏に感受せしめるものと考えられる.
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