スッポンの直腸下部は幅4.5mm, 上皮は1列性円柱上皮, 固有膜内には腸隠窩の形成を見, 粘膜筋膜は発達劣勢, 筋層は内輪, 外縦の両層から成る.
肛門部の始りは幅3mm. 上皮は重層円柱上皮, 粘膜筋膜は発達良好, 筋層は直腸に於ると同じ. 之より少し下ると肛門部は幅4-4.5mmに拡大, 両側の粘膜下膜内には上皮の陥入による第I肛門嚢の形成を見る. 更に下方, 内尿道口の高さでは肛門管は幅2-3mmと狭くなり, 筋層の腹側外方に第II肛門嚢の形成を見, その腹側には射精管が走る.
肛門管は外尿道口の高さに下ると第II肛門嚢も射精管も肛門管に近づく. 更に下ると肛門管は幅4.5mmに拡がり, 両側の第II肛門嚢の肛門管への開口を見, 腹側外方には陰茎海綿体の近位部が現われる. 更に下降すると肛門管は幅5.5mmと拡大し, 射精管は腹側にある長皺襞に開口する.
肛門管はより遠位に来ると幅2-3mmと狭くなり, 多数の粘膜縦皺襞の形成を見, 尿道海綿体は腹側に現われ, 而もその中に第III肛門嚢が形成され, 之は肛門管最下部で肛門管に連結し排泄管に開く.
直腸下部では Auerbach 及び Meissner 神経叢は発達劣勢, 外来神経は多数の植物線維と僅少の知覚線維とから成る. 知覚線維は筋層又は粘膜下膜内に非分岐性及び単純性分岐性蛇行状終末に終る外, 固有膜特に腸隠窩周辺に非分岐性及び単純性分岐性終末を作る. その終末枝は波状走行の後, 尖鋭状に終る. 人及び哺乳動物に於けると同様上皮内線維は証明されない.
肛門管最近位部では Auerbach 及び Meissner 神経叢は発達良好, 知覚線維も直腸に於けるより遙かに多量, 但しその終末様式は直腸の場合に類似する. 人及び哺乳動物に於けると異って上皮内線維は見られない.
内尿道口の高さの最狭小の肛門管では Auerbach 及び Meissner 神経叢は発達愈々良好, 知覚線維も多量となり, 上皮下には稍々複雑な分岐性終末も形成される. 外尿道口の高さでは知覚終末は一層多量となる.
第II肛門嚢の開口する最大幅の肛門管では両神経叢は最高の発達を示し, 中に大型の神経細胞を含む. 知覚線維も多量に見られ, 粘膜下膜内には単純性分岐性係蹄状終末, 固有膜内には可なり複雑な分岐性終末の形成も認められる.
肛門管終末部では両神経叢は劣勢な発達を示し, 知覚線維も減少を示す. 然し筋層内には尚お蛇行状終末, 粘膜内には非分岐性及び単純性分岐性終末が形成される. 尚お非被膜性糸毬状終末が稀ならず発見される事は興味深い.
第I, 第II及び第III肛門嚢に於ても上皮下に知覚終末の形成を見る. 但し肛門管に於けるよりは遙かに少量であり且つその終末様式もより単純である.
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