雄兎膀胱基底部の粘膜固有膜と上皮の中にも人及び2-3他動物に於けると同様知覚神経終末の形成を見る. 但しその量は少く且つ終末は非分岐性及び単純性分岐性終末で表わされるに過ぎない.
兎尿道には知覚終末はやや多量に発見される. 先ず尿道膨大精嚢部では中径及び大径知覚線維に由来する分岐性終末が縦走性平滑筋線維に富んだ固有膜, 更に上皮の中に形成される. 終末線維は太さの変化に富んだ太い線維から成り, 且つ特有な迂りを示す事が多い.
尿道前立腺部では前者に於けるよりもより多くの知覚終末が発見される. 然しここでも小体様終末は認められず, 終末は専ら単純性分岐型で表わされ, 多くは上皮下に又1部は上皮内に見出される. その他厚い固有膜の外層内にも稀ならず発見される. 終末枝の性状は膨大精嚢部に見られたものと略ぼ同じ.
尿道筋部では尿道筋に平滑性の内層を欠く為に犬や猫の場合の様な特殊分岐性終末は形成されず, また山羊尿道筋内に見られる陰部神経小体の如きも見られない. 知覚終末は尿道固有膜及び上皮内に非分岐性及び分岐性終末として表わされ, その構成は前立線部に於けると類似するが, 一般により複雑性を示す.
発達良好な海綿体で包囲される尿道海綿体部の近位部に分布する陰茎背神経からの知覚線維は猫, 山羊及びモグラの場合よりも多く, 然し犬に見られる様な小体様終末に終る事なく, 何れも非分岐性及び単純性分岐性終末に移行する. 終末線維は太さの変化に富んだ太い線維で表わされ, 不規則な迂り或は弱い糸球状走行を示す事が多く, その多くは上皮下又は上皮内に拡がる.
尿道海綿体部の遠位部にも知覚線維はかなり多いが, その終末様式は近位部に於けるよりも単純, 特に亀頭内で然りで, その多くは中径又は小径の終末枝で構成される非分岐性或は単純性分岐性終末から成り, 終末枝は上皮下に又稀ならず上皮内に終る.
兎の前立腺, 無対性精嚢, 有対性の輸精管とその膨大部に対する知覚線維の分布状態は之等器官の位置的及び構造的特異性に基き人や他動物の場合とかなりの差異を示す. 前立腺実質内には知覚線維は殆んど見られないが, 導管周囲には発見され, その終末は大径又は中径線維に由来する非分岐性及び単純性分岐性終末で表わされ, 多くは上皮下に, 又稀ならず上皮内に構成される.
輸精管膨大部には知覚線維の進入は甚だ少い. これに反して精嚢特に遠位部には知覚線維がかなり多く見られ, 筋膜, 固有膜更に上皮内に進んで終る. 終末は太い線維に由来するものが多く, 一般に太さの変化と不規則な迂りを示す分岐性終末で表わされる. Cowper 氏腺には知覚線維は発見されなかった.
陰茎海綿体は陰茎体から亀頭先端部に迄延びているが, その白膜周囲に見られる Pacini 氏小体は亀頭内に限られ, その数も甚だ少く僅少の層板と巾広い内棍とから成る小型のものである. 白膜にはやや多くの知覚線維が進入, その内外両層間に分岐性終末及び少量の陰部神経小体を作る. また内層内に深く入り込む分岐性終末も所々に発見される.
亀頭の粘膜下膜内には陰茎背神経からの多数の小神経束が見られ, その中の知覚線維は亀頭粘膜内に進み, 陰部神経小体II型と非分岐性及び分岐性終末とに終る. 前者は太い線維に由来する単純性分岐性終末を容れる小型のものであるが, 稀ならずやや大型のものも発見される. 後者は一般に中径又は小径の線維に由来し, 終末枝は固有膜内に尖鋭状に終る. そして上皮の中まで進むことはない.
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