両棲類 (クロサンショウウオ, イモリ, ヒキガエル, トノサマガエル), 鳥類 (ジューシマツ, ニワトリ), 哺乳動物 (ネコ, イヌ, マウス, モルモット) およびヒト胎児の頸動脈小体-とくに主細胞の支配神経-の超微構造が電顕的に比較研究された.
すべての動物において, 頸動脈小体の構造上の基本単位は, 主細胞と支持細胞と神経終末との特有な複合体によって形成されていた. これらの複合体の中では, 神経終末と主細胞との間に 特別な接着装置が構成されており, これらは 形態的には化学的シナプスの条件をすべて満足していた. シナプス小胞の局在部位により, 主細胞の表面にみられるこれらのシナプスは2種類に分類された. 第1のものは遠心性シナプスと思われるもので, 前シナプス要素に相当する神経終末内に, コリン作動性神経終末にみられるシナプス小胞に類似した, 直径約40mμの芯のない小胞が多数含まれていた. 本研究ではこの種のシナプスは すべての動物で見出された. 他の種類のシナプスでは, 主細胞のシナプス膜に直接する部位の細胞質に, 直径30~40mμで, 顆粒状の芯のあるシナプス小胞が集積していることから, 興奮は主細胞から神経へ伝えられると考えられた. 本研究では この種のシナプスはクロサンショウウオ, ジューシマツ, マウスおよびモルモットで見出され, これらこそ化学受容の興奮伝達の部位に相当すると考えられた. 頸動脈小体の主細胞はすべての動物で相同であると仮定して, これらが遠心性と求心性の二重の神経支配を受けている可能性が示された. 両棲類と鳥類の頸動脈小体では, 異様に膨大した軸索が しばしばみられ, その中には糸粒体やミエリン構造やグリコゲン顆粒などが密集していた. これらの軸索の異常と, 哺乳動物の頸動脈洞で記載されている圧受容性と思われる膨大した軸索との 微細構造上の類似性が考察された.
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