イヌとラットの脾臓に脾動脈からリンゲル液を潅流して血液を充分に洗いだし, 続いて緩衝したグルタールアルデヒド液を注入して固定した. この脾臓の赤脾髄の割面を走査電子鏡で観察し, また同じ標本の樹脂包埋組織切片を透過電子鏡で検索した.
1. イヌとラットの脾洞の壁は孔あき格子構造で, 杆状細胞とその細胞突起からなり, ウサギで観察した所見 (MIYOSHI, FUJITA and TOKUNAGA, 1970) と同じであったが, 若干の明瞭な動物差が認められた.
2. 脾洞と脾柱静脈の間に孔のない移行部静脈洞が分化していた.
3. 脾索は細網細胞の突起で作られた迷路状の網目であった. 切片を透過電子鏡で見ると, 細網細胞の紐状の突起に抱きこまれ, あるいははさまれて走る細網線維が認められた.
4. 細網細胞は静脈や脾洞の壁に突起をのばし, 足底状に細胞質を広げて固着していた.
5. 脾洞の外表面では, この細胞質から出る細い突起が主として杆状細胞の方向とは直角にのびていた. 杆状細胞のひとつの側突起はひとつの細網細胞突起で裏打ちされていた. 両細胞要素間に細網線維 (たが線維) がはさみこまれていることは, 切片の透過電子鏡観察によって知られる.
6. 脾索細網の網目には大きい球状の大食細胞が, 細網線維によってからめられていた. この大食細胞の一型は泡状の突起に被われる細胞で, 他の一型は葉状の突起をもつものであった.
7. 透過電子鏡で見ると前者の型は微細顆粒状のライソゾームを持ち, 後者の型の細胞は粗大顆粒状のライソゾームや食べこまれた大きな細胞破片を持っていた.
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