モグラの鼻部無毛部皮膚の神経終末装置 (アイマー器官) を光学ならびに電子顕微鏡で観察した. そして 3種の神経終末すなわち自由神経終末, メルケル細胞ならびに有被膜終末がみとめられた.
1) 神経線維は表皮に進入するさいに髄鞘を失い, シュワン細胞を包む基底膜は 表皮下のそれに連続する. 多くの軸索は表皮細胞間隙を通り, 有棘層上層ないし顆粒層で自由神経終末として終る. 軸索は表皮内で膨大部を形成し, その部には多数の糸粒体や小胞が集積し, 神経微原線維も豊富である.
2) メルケル細胞は, アイマー器官の基底部近くに位置し, 直径1,000∼1,500Åの中等度電子密度の顆粒を多数ふくむ. この顆粒はゴルジ装置で形成されるものと推測されるが, 化学的性状は不明である. 多数の糸粒体と小胞をふくむ軸索がメルケル細胞に密接している.
3) 有被膜終末は真皮に存在する. この終末は 中心に位置する軸索と, それを幾重にも密接してとりかこむ層板細胞の扁平な細胞質突起とから構成される. 層板細胞は対側性に存在し, そのため層板は相対する2群に重疊し, その2群間に裂隙が存在する. この裂隙は物質代謝のための通路として役立つと思われる.
4) 3種の神経終末に共通する特徴は, 軸索内の糸粒体の集積と多数の小胞の存在である. これらは機械的あるいは化学的刺激を神経性興奮に転換するのに, 各軸索において同様の様式で関与しているのではあるまいか.
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