ゴマフグの下垂体について, とくに端葉に存在する2種の塩基好性細胞の細胞型と機能を決定するために, 幼魚, 成熟魚ならびに老成魚について比較検討し, さらに抗甲状腺剤 (チオウラシル) で甲状腺の活動をおさえることによって腺細胞に現われる変化を検索した.
下垂体は, 端葉前部, 端葉軸部, 中間葉および神経性部の4要素から成る. 幼魚の端葉前部には, 神経葉に接する鉛ヘマトキシリン陽性の酸好性細胞 (A
1), アルデヒドフクシンとPAS反応に陽性の塩基好性細胞 (B
1), および周辺部に密集する小型の酸好性細胞 (C) の3種が区別できる. 端葉軸部には, オレンジGで好染され神経葉と接している大型酸好性細胞 (A
2)と, これを取りまく小型の色素嫌性細胞 (B
2) が存在する. 中間葉は, 鉛ヘマトキシリン陽性で塩基好性の細胞 (I
1) とPAS反応に弱陽性の酸好性細胞 (I
2) から成る.
これらの細胞のうち, B
1細胞のみがチオウラシル処理によって, 肥厚と脱顆粒など, 高い活性を示したので, これが甲状腺刺激細胞と同定された. またB
2細胞は生殖腺の成熟に伴って, アルデヒドフクシンとPAS反応に陽性となり, 細胞の大きさと数が著しく増大し, 老成魚では去勢細胞が認められた. したがってB
2細胞は生殖腺刺激細胞と推察された.
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