2匹のマウスの腹腔内に体重グラムあたり50μCiのL-DOPA-
3Hを注射し, 1時間後, 24時間後に動物を殺して胃および十二指腸粘膜の小片をグルタールアルデヒドとオスミウム酸によるいわゆる二重固定し, 光顕および電顕オートラジオグラフィーの手法で, 胃腸内分泌細胞におけるL-DOPAとその代謝産物の存在を示す放射能の分布をしらべた. 注射後1時間では, 胃腸粘膜の基底果粒細胞のうちでG, L(EG), ECL細胞等に比べて, EC細胞により多量の放射能が見出された. 注射後24時間のものでは, 一部のEC細胞にのみ放射能が残っていた. 電顕オートラジオグラフィーでは, L-DOPA-
3Hに由来する放射能は主に胃腸内分泌細胞の分泌果粒に富む細胞質にあり, ゴルジ野にはほとんど見出されなかった.
一方, 胃腸内分泌細胞における分泌蛋白質の合成経路を研究する目的で, 2匹のマウスの腹腔内に体重グラムあたり100μCiのL-ロイシン-
3Hを注射し, 30分後と2時間半後の放射能の局在をしらべた. この結果すべての型の胃腸内分泌細胞がL-ロイシンを取込み蛋白質を合成していることが明らかとなった. 注射後30分では, 放射能は主にゴルジ野にあったが, 注射後2時間半では放射能の分布と分泌果粒のそれとがほぼ一致しており, また多量の放射能を含有する分泌果粒の存在を示すと思われる銀粒子のかたまりが見られた.
以上の結果は胃腸内分泌細胞においても, ゴルジ野にて形成される分泌果粒はここですでに蛋白質を含んでおり, その後細胞質基質よりアミン等を取込んで成熟し, 開口型放出を行うことを示唆する.
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