Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
37 巻, 4 号
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  • 藤田 尚男, 新川 康裕
    1975 年 37 巻 4 号 p. 277-289
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    甲状腺の系統発生的研究の一環として, ヌタウナギ (円口類) の甲状腺の超微構造を電子顕微鏡で観察した.
    甲状腺の濾胞は結合組織に埋まって広領域に散在するが, それぞれの濾胞は大きく, 肉眼でも識別できる. 濾胞上皮細胞は少数の徴絨毛をもつが, 多数の繊毛をもつヤツメウナギ (円口類) の場合と異なり, 繊毛はみられない. 粗面小胞体はヤツメウナギの場合と同じように扁平で, 大きい嚢状構造を呈しないし, またゴルジ装置の発達も高等動物と比べてよくない. TSHに対する反応性も弱い. これらの事実はヌタウナギでは高等動物と比べて甲状腺の機能が強くないことを示す. また細胞内に直径0.5-3.0μmの高電子密度の果粒が存在することが特徴的である.
    電顕オートラジオグラフの結果, 125I (1mCi) 腹腔内注射1時間後には, 高等動物の場合と同じように, 銀粒子のすべてが濾胞腔内にあり, ヨードの有機化の場がおもに濾胞腔内であることを物語る. 濾胞腔内のコロイドは, のみこみ (pinocytosis) によって細胞内にとり入れられる. 細胞内にみられる暗調の果粒は, 再吸収コロイドと一次水解小体との融合によってできた二次水解小体と考えられる. 毛細血管の分布はあまりよくないが, その内皮に数多くののみこみ小胞が存在するのが特徴的である. 高等動物にみられるような窓 (fenestration) はみられないけれども.
  • 山田 純三, 杉村 誠, 工藤 規雄
    1975 年 37 巻 4 号 p. 291-299
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    孵卵後6日目 (120時間) から12日目のウズラ胚 (84例) のファブリキウス嚢において, リンパ球様細胞の由来を計量形態学的に観察した.
    6日目および7日目の嚢原基にはリンパ球様細胞は認められず, 8日目の嚢固有層に初めて, 少数のリンパ球様細胞が認められた. 上皮にはこれより1.5日遅れて, 9.5日目に初めて本細胞が認められた. 上皮蕾は11日目頃に形成され始めた. この上皮蕾形成はリンパ球様細胞の上皮への侵入に先行して認められることはなかった. 9.5日目から11日目にかけて, 基底膜を通過して上皮および上皮蕾に侵入しつつある細胞が多く認められた.
    以上の所見より, ウズラのファブリキウス嚢におけるリンパ球様細胞の由来を上皮に求めるより間葉に求める方がより妥当と考えた.
  • II. 正常カイウサギおよびラットにおける心内膜表面の微細構造
    枝長 正修
    1975 年 37 巻 4 号 p. 301-312
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    カイウサギとラットの心内膜表面を走査電子顕微鏡で観察した.
    両動物ともに内皮細胞は一定の方向に特別な伸長を示すことなく, また血流方向や下層の筋の走向にかかわりなく, 多角形もしくは星形をていしていた.
    多数の長い微細絨毛様および短い顆粒状突起が内皮表面に認められたが, その密度はさまざまで, ときには全く突起を欠く平滑な細胞も見られた. これらの突起は核の膨隆部の上にあつまる傾向があった. 単一線毛がウサギにおいて確認されたが, ラットにおいてはその存在は不明瞭であった. 辺縁ひだは内皮細胞境界に常に認められた. 心臓内の部位によって, 内皮表面構造に本質的な差は認められなかった.
    弁の表面をおおう内皮細胞の形と表面構造は, 他の部位のそれと本質的に同様であったが, 内皮細胞下の組織の伸縮の状態により変形する傾向が認められた.
  • 小林 繁
    1975 年 37 巻 4 号 p. 313-333
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    2匹のマウスの腹腔内に体重グラムあたり50μCiのL-DOPA-3Hを注射し, 1時間後, 24時間後に動物を殺して胃および十二指腸粘膜の小片をグルタールアルデヒドとオスミウム酸によるいわゆる二重固定し, 光顕および電顕オートラジオグラフィーの手法で, 胃腸内分泌細胞におけるL-DOPAとその代謝産物の存在を示す放射能の分布をしらべた. 注射後1時間では, 胃腸粘膜の基底果粒細胞のうちでG, L(EG), ECL細胞等に比べて, EC細胞により多量の放射能が見出された. 注射後24時間のものでは, 一部のEC細胞にのみ放射能が残っていた. 電顕オートラジオグラフィーでは, L-DOPA-3Hに由来する放射能は主に胃腸内分泌細胞の分泌果粒に富む細胞質にあり, ゴルジ野にはほとんど見出されなかった.
    一方, 胃腸内分泌細胞における分泌蛋白質の合成経路を研究する目的で, 2匹のマウスの腹腔内に体重グラムあたり100μCiのL-ロイシン-3Hを注射し, 30分後と2時間半後の放射能の局在をしらべた. この結果すべての型の胃腸内分泌細胞がL-ロイシンを取込み蛋白質を合成していることが明らかとなった. 注射後30分では, 放射能は主にゴルジ野にあったが, 注射後2時間半では放射能の分布と分泌果粒のそれとがほぼ一致しており, また多量の放射能を含有する分泌果粒の存在を示すと思われる銀粒子のかたまりが見られた.
    以上の結果は胃腸内分泌細胞においても, ゴルジ野にて形成される分泌果粒はここですでに蛋白質を含んでおり, その後細胞質基質よりアミン等を取込んで成熟し, 開口型放出を行うことを示唆する.
  • 高屋 憲一
    1975 年 37 巻 4 号 p. 335-341
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    新鮮血をコロジオン膜をはった銅製グリッド上で保温 (4分間37°C) すると, 血小板は伸展して薄くなる. これを空気乾燥すると, 電子顕微鏡下にいろいろな微細構造がよく保存されている. Granulomere には高密度の暗調小体 (200-300nm直径) とより小型で同様な密度をもつ小体 (約50nm直径) が見られる. そのほか, やや大型で高密度の顆粒をもつ小体は, 糸粒体とリソゾームに相当すると思われる. さらに若干の小体が記載された. Hyalomere には空胞があり, 細管で細胞表面とつながっているものも見られる.
    エネルギー分散型X線マイクロアナライザーを用いて分析を行なつた結果, 大小両型の暗調小体に多量のカルシウムと燐およびいくらかの塩素が含まれることが明らかとなった. これらの元素の化学的な結合状態は不明であるが, 生体塩基貯蔵に意義あるものと思う. この方法は他の組織にも広く応用可能と思われる.
  • 服部 晃, 神保 長三, 飯泉 俊雄, 伊藤 粋子, 松岡 松三
    1975 年 37 巻 4 号 p. 343-364
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    初期の止血反応の機序を明らかにするため, カイウサギの頸動脈を皮内針で穿刺して出血させ, 1∼45秒後に心臓側よりグルタルアルデヒドを注入して固定し, 穿刺部を切り出し, グルタルアルデヒドとオスミウム酸により, 再および後固定を行なった. 臨界点法で乾燥し, 金パラジウムの蒸着をほどこした標本を電界放射型走査電子顕微鏡で観察した.
    穿刺により動脈壁に径約0.25mmの穴が生じ, その縁には内皮細胞の遊離とよじれによって, 幅およそ30μの内皮下組織が露出した. そこにはコラゲン細線維が単独で波状にうねったり, 束となって網状に配列していた.
    血栓形成の第一歩は, これらのコラゲン線維に円板形の血小板がまばらに粘着することであった. 粘着血小板は偽足や膨隆を生じるとともに, 他の血小板と凝集することにより, 血流によりさまざまに変形しながらも, 血流に抗して血小板血栓がまず薄く穴の縁に形成され, 時間とともに厚くなり, 45秒後には穴の壁や縁に盛り上るにいたる. この間の血小板粘着, 凝集の形態は, 既報のヒト血小板の生体外におけるそれとほぼ一致していた. なおコラゲン線維に引っかかって, 変形あるいはしぼんだ赤血球が観察されたことにより, 溶血によるADP放出が, 血小板凝集を多少とも促進すると考えられた.
    血小板の二次凝集を抑制するといわれるアスピリンは, これらの過程の速度を1/2∼1/3に低下させることが確認された.
  • 1975 年 37 巻 4 号 p. 365-367
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
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