ネズミの肝臓をグルタールアルデヒドで潅流固定した後, 村上の改良タンニン酸オスミウム法で処理した試料を徳永らの凍結割断法を用いて割断し, 金パラジウムの薄層蒸着を施して, 走査電子顕微鏡により, 肝類洞の内皮細胞とクッパー細胞を観察した.
類洞をおおつている内皮細胞の細胞質には, 数多くの窓が開いている. 窓には大きなもの (1-3μm) と, 小さなもの (0.1μm以下) がある. 内皮細胞の縁は波うっていて, 隣の内皮細胞とは, しっかりと接着しているところと, ゆるやかに重なり合っているところとが見られた. またいろいろな大きさの隙間が内皮細胞間にみられた. この細胞間の隙間は, 細胞内の窓よりは数がすくない.
中心静脈や門脈路に近接する類洞では, 小さな窓だけがみられ, この部分では類洞は, ふつうの有窓性毛細血管としての性格をもっている. 大きな窓は, 小葉の大部分を占める中間域の類洞に見られ, 類洞とディッセ腔との主な交通路となつている.
クッパー細胞は, 門脈路の周辺に多数みられ, 表面観の上で, 薄く伸展した有窓性の内皮細胞からは. はっきりと区別される. クッパー細胞の表面から突出している数多くの細胞質突起は次の3型に分けられる. (1) 太く, 水平方向に走る突起, (2) 微絨毛様の突起, (3) 糸状と葉状仮足.
微絨毛様突起は, 密にこの細胞をおおっている. 糸状仮足はこの細胞の縁から出て, 内皮細胞の表面に接着している. 葉状仮足は類洞壁の表面にひろがっている.
クッパー細胞は, ふつう, 内皮細胞がとぎれてできた大きな孔の上にまたがるようにして現われ, 糸状仮足によって内皮細胞の縁につなぎ止められている. かなり大きな細胞間の隙間が, クッパー細胞のまわりに見られる.
また, 二つのクッパー細胞が, 糸状仮足によって相互に連絡しているのが観察された. クッパー細胞と培養マクロファージとの形態的類似性が論じられた.
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