Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
38 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 市川 操, 市川 厚
    1975 年 38 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    スナネズミの耳下腺を電子顕微鏡で観察し, つぎのような特徴ある微細構造を認めた.
    腺房細胞は漿液細胞に共通した細胞構築をそなえるが, 分泌顆粒の内容は二相性を示し, 密度の高い均質な, 大形球状の中心部と, 密度の低い微細線維状ないし微細顆粒状の基質から成る辺縁部とが区別される. 後者は組織化学的に酸性ムコ物質に富むことが証明された. 前者は, その性状から主としてチモゲン物質から成ると考えられる. このような顆粒内容の二相性は, 固定法や染色法のちがいにも, 動物の年令や分泌顆粒の成熟度にも関係なく, すべての検体にみられることから, 従来ほかの動物でいわれているような, 標本作製時に生じた人工産物, あるいは未熟な顆粒にみられる一過性の現象ではなく, 本動物に特有な恒常的な構造であると考えられる.
    導管系は, 齧歯目のほかの種におけると同様, 介在部, 顆粒性膨大部, 無顆粒性線条部, 導出管などに区別される. 小葉内のすべての導管系の上皮細胞に, 直径50∼60Åのマイクロフィラメントとデスモソームの発達, 基底細胞膜に接して存在する内径200∼300Åの細管の網工が認められた. これらの構造の機能的意義について考察した.
  • J. A. C. NAVARRO, D. SOTTOVIA-FILHO, M. C. LEITE-RIBEIRO, R. TAGA
    1975 年 38 巻 1 号 p. 17-30
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    The development and sequence of eruption of the maxillary cheek-teeth of rabbits were studied by histological methods.
    The presence of three deciduous molars which were replaced by correspondent premolars and of three permanent molars without predecessors was confirmed. The eruption of the maxillary deciduous molars was shown to begin at 4 days postnatally and that of the permanent molar at 9 days, while the eruption of the premolars occurs from 24 days on, replacing the deciduous molars which are exfoliated. The last tooth to erupt is the M3. At 32 days all the permanent cheek-teeth are erupted.
    The deciduous molars are completely developed at birth, root resorption starting at 4 days.
    On the first day the premolars are in the bell stage and in the M1 and M2 amelogenesis is taking place.
    After 27 days the development of the permanent maxillary cheek-teeth is completed. Dentinogenesis, amelogenesis and cementogenesis were observed in all of them.
  • 藤本 淳
    1975 年 38 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    成熟カイウサギにサイクロヘキサマイド1日量2∼10mgを10日間投与し, 葉状乳頭の味蕾に生じた変化を 正常例と比較しながら電子顕微鏡で観察した.
    ほとんどの味蕾は変性を示し, かつ多数の細胞壊死が認められた. また正常例でみられる周辺細胞の有糸分裂像は ほとんど認められなかった.
    細胞は微細構造から3型に分類されるが, 投与後 第1型はライソゾームの増加を示す反面細胞壊死に至るような変性像の所見に乏しく, 第2型と第3型細胞は一様に強いフィラメント様変性を示し, 為に細胞の電子密度が高まり, また正常例では認められない粗面小胞体の拡張を示した. さらに これら両型の細胞壊死も正常例と有意の差をもって増加した.
    味蕾細胞は限られた寿命をもち, 絶えず周辺の上皮細胞が有糸分裂によって増殖し, 転化, 成熟, 変性しているものであるが, 3型の細胞が この生活環の各段階を示すものか, あるいは 各型が別個に幼若細胞より それぞれの機能的意義をもって分化, 変性していくのか, いまだ議論の余地がある. 本実験の目的はサイクロヘキサマイドによる細胞変性過程における各細胞型の動態を観察することにあったが, 各型相互の転移を示すような所見は得られなかった.
  • 田沼 裕, 山本 将, 伊東 俊夫, 横地 千仭
    1975 年 38 巻 1 号 p. 43-70
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    1. 生後1カ月から86才までの解剖例からとった腎周囲脂肪125例のうち, 褐色脂肪細胞を含む例は72% (90: 125) であつた.
    2. 乳児では全例が最も多量の褐色脂肪細胞を含み, 腎周囲脂肪は ほとんど褐色脂肪細胞のみから成るが, 小児と10才代に減少が始まり, 40才代以後には著明に減少し, 腎周囲脂肪の持つ褐色脂肪の量は一般に少ない.
    3. この褐色脂肪組織量の変化には個体差がある. ある例においては早期に腎周囲脂肪から褐色脂肪組織が消失するが, ある例においては非常に高年にいたるまで残存した. 86才の1例において腎周囲脂肪に褐色脂肪細胞が証明された.
    4. 多房性褐色脂肪細胞は次の諸型に分類された. 第1型 脂肪消失細胞, 第2型 小滴細胞, 第3型 中滴細胞, 第4型 大滴細胞, 第5型 厚い細胞質縁をもつ単房性褐色脂肪細胞と偽単房性褐色脂肪細胞, 第6型 多房性細胞質豊富細胞. 乳児では すべての細胞型が同定された. 小滴細胞は乳児期に続くすべての年令期に一般に少ない. 40才をすぎた成人に見られる普通の細胞は中滴と大滴細胞であった. 脂肪消失細胞は特殊な細胞で 通例多房性細胞質豊富細胞を伴う.
    5. 腎周囲脂肪の小葉は 中央部を占める褐色脂肪細胞野と, 白色脂肪細胞から成る周辺層とから形成される. 後者は乳児においては薄いが, 年令とともに厚さを増し, 小葉の内部にひろがる.
    6. 本研究の所見は褐色脂肪細胞が年令とともに継続的に白色脂肪細胞によって置きかえられることを暗示する. 厚い細胞質縁をもつ単房性褐色脂肪細胞と偽単房性褐色脂肪細胞は, おそらく多房性褐色脂肪細胞と単房性白色脂肪細胞との間の移行型である. これらの細胞型は各年令期を通じて見出され, 褐色脂肪細胞の白色脂肪細胞への転化が継続的に行われることを示唆する.
  • 原崎 弘章, 鈴木 郁男, 田中 二郎, 花野 英城, 鳥巣 要道
    1975 年 38 巻 1 号 p. 71-84
    発行日: 1975年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    正常サル (Macaca fuscataM. irus) 心内膜内皮の表面微細構造を走査型と透過型電顕で観察した. 心内膜は一層の内皮細胞におおわれ, 個々の細胞は細胞辺縁のひだ状の隆起と, 細胞中央に存在する核を被う隆起により識別される. また 細胞表面は多数の微細絨毛様突起におおわれる. 内皮細胞の大きさや その表面構造は 部位により著しい差を示した. とくに後天性弁疾患の多い僧帽弁や大動脈弁では, 細胞辺縁の隆起は微細絨毛様突起の連続より形成され, 細胞表面の微細構造は大小の飲みこみ小胞と密接な位置関係をもち, 流血中の物質の取りこみに何らかの役割を果たすものと考えられる. これらの表面微細構造の生物学的意義を明らかにすることは後天性弁疾患の機序解明に役立つであろう.
feedback
Top