Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
39 巻, 2 号
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  • 矢嶋 俊彦
    1976 年 39 巻 2 号 p. 79-97
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ラットの気管軟骨の改築過程を微細構造的, 細胞化学的に研究した.
    気管軟骨の厚さは 観察した生後1日から54日間において一定していた. 気管軟骨の外がわの軟骨膜は 活発な線維芽細胞と細胞間膠原線維よりなり, そこには典型的な付加成長がみられた. 一方, 内がわの軟骨膜においては, 外がわの軟骨膜の線維芽細胞の2倍近い大きさの線維芽細胞様細胞が3∼4層に配列していた. これらの細胞は よく発達した細胞内小器官と 大きな空胞をもち, この空胞は線維の断片やムコ多糖類を含んでいた. 多数の細胞質突起を軟骨に出しており, その部分の基質の線維は とくに配列が不規則であつた. 空胞の中には膠原線維を含むものがあり, 強い酸性フォスファーターゼ活性を示すことなどから, 基質の膠原線維が食べこまれたものと判断された. アルカリ性フォスファターゼ活性は 外がわの軟骨膜の線維芽細胞と軟骨芽細胞の細胞膜にみられた.
    気管軟骨の内外の軟骨膜の間には 明確な機能的差異があり, 軟骨は内がわで吸収され, 外がわで付加成長してゆく. そして この改築過程において 基質吸収の役割を果たすのが内がわの軟骨膜の線維芽細胞様細胞であることが明らかとなった.
  • 村上 宅郎
    1976 年 39 巻 2 号 p. 99-103
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    走査電子顕微鏡用の組織小片を 固定前に 注射針で穿刺しリンゲル液で灌流した. この穿刺灌流は組織の血液と組織液を十分排除し, とくに血管灌流の困難な小さな試料の洗浄に有用であった. 灌流液の流路を検討するために, 同じ方法でレジンを注入したところ, もっぱら血管の鋳型が得られた.
  • 赤血球表面のフェリチンの観察
    服部 晃, 松倉 寛, 伊藤 粋子, 藤田 恒夫, 徳永 純一
    1976 年 39 巻 2 号 p. 105-115
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    フェリチンを走査電子顕微鏡を用いた免疫細胞学の標識物として利用できるかどうかをみるため, 二つの検討を行なった.
    まず フェリチン粒子が走査電子顕微鏡下で確認できるかどうかを, 純フェリチン試料で検討したところ, グルタール アルデヒド固定後 イオンスパッターによる蒸着を行なった試料にのみ, 単一のフェリチン粒子が 径約170Åの球体として観察された.
    次に 一つの応用として 赤血球のA (血液) 型抗原の局在の検討を行なったところ, 上の方法によって, 赤血球上に付着した単一フェリチン粒子を観察できることがわかった. A型抗原は, 赤血球間で, 均等な分布から不均等な分布のものまで差があったが, 赤血球の形状による差はみられなかった. ひとつの赤血球上では, 中間のくぼみの部分にフェリチンの沈着が多い傾向があった.
    結論として, 試料作製に留意し, 高分解能の走査電子顕微鏡を利用すれば, フェリチンは十分 免疫走査電顕の表面標識として利用できる.
  • 田沼 裕, 大畑 まさ子, 伊東 俊夫, 横地 千仭
    1976 年 39 巻 2 号 p. 117-145
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    1. 生後1ケ月から86才までの解剖例からとった腎周囲脂肪180例のうち, 褐色脂肪を含むのは134例 (74%) であった.
    2. この褐色脂肪は6型の細胞から成る. 第1型: 熱産生のために脂肪を酸化消費し顆粒性細胞質で充満した脂肪消失細胞. 第2型: 脂肪滴の迅速な酸化に適した小滴細胞. 第3, 4型: 脂肪を多量に貯蔵している中・大滴細胞. 第5型: 多房性褐色脂肪細胞から単房性白色脂肪細胞への移行型. 第6型: 第1型とともに出現し, 脂肪滴は減少し, 滴の間の顆粒性細胞質が増加した, 脂肪を酸化消費しつつある細胞.
    3. 第1型と第6型が出現することは, 褐色脂肪に熱産生のため脂肪酸化が進行し, 褐色脂肪細胞の一部が脂肪滴を失いつつあることを示す. 180例中65例 (36%) に見られた.
    4. 本研究では両細胞の出現を見て褐色脂肪に熱産生があることを推定した。1歳未満の乳児では多数の第1と第6型がしばしば第2型とともに出現することから, 迅速で多量の熱産生が推定され, 乳児では褐色脂肪が体温維持のため熱産生を行うという説が支持された. 同様に小児と10歳児でもかなり高度の熱産生能が想定された. 高年者を含む成人でも第1と第6型は17∼40%に出現し, 時に第2型を伴い熱産生能の存続を暗示する. 人の褐色脂肪は高年者においても体に加わる刺激に対して, 貯蔵脂肪を酸化して反応することが明らかとなった.
    5. 焼死, 溺死, 出血死, 薬物中毒死などにおいて第1と第6型がしばしば多数に出現することは, 褐色脂肪に著明な脂肪の酸化が, ノルアドレナリン量の上昇によって, おこることを暗示する.
    6. 肝硬変その他の死因の解剖例の腎周囲脂肪に発見された“小型細胞質性細胞”は, おそらく萎縮した脂肪消失細胞 (第1型) である.
  • 1976 年 39 巻 2 号 p. 147-148
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
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