Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
41 巻, 3 号
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  • 阿部 和厚, 伊藤 隆
    1978 年 41 巻 3 号 p. 195-204
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    成熟マウスのパイエル板の円蓋域を電子顕微鏡で観察した.
    パイエル板の円蓋域の構成細胞はリンパ球, 形質細胞, 大食細胞, 細網細胞である. 大食細胞は リンパ球と形質細胞の破壊片 および多様な封入体で充満する. 円蓋域を被う上皮内にはリンパ球, 形質細胞, 大食細胞が侵入する. これらの遊走細胞は上皮細胞の自由表面に近づくと, 上皮細胞の胞体内に侵入するようにみえる. 遊走細胞を核上部に含む上皮細胞の自由表面は, 腸管内腔側へ突隆し, 微絨毛も まばらになっている. また 円蓋域を被う上皮細胞は, しばしば核上部に破壊された遊走細胞を含む封入体をもつ. このような上皮細胞の構造は 上皮下のリンパ小節の存在と関連しているようにみえる.
    パイエル板の円蓋は, それを被う上皮も含めて, リンパ球その他の遊走細胞が 腸管内腔からの抗原に直接に接する反応部位と考えられる.
  • 服部 晃, 渡部 透, 和泉 徹
    1978 年 41 巻 3 号 p. 205-227
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    血管内皮の障害, 剥離に続く止血反応, すなわち壁在血栓形成過程を 走査電子顕微鏡を用いて検討した. カイウサギの頸動脈に 表面を粗くした皮下針を刺して 内皮障害を与え, 直後から2時間までの時間経過後, 同部を灌流または浸潤固定した. 内皮はほとんど完全に剥離し, 内皮下組織として 網状に配列する細線維層と基底膜が露出していた.
    血小板粘着は まず血小板が円板形のまま付着し, 続いて 辺縁部より偽足を形成し, それらをのばして 細線維をとらえながら はりつくように起こった. 出血の場合 (服部ら, 1975b) と異なり, 血小板の球状化や膨隆形成は ほとんどみられず, やがて粘着血小板の上に やはり変形の少ない血小板がゆるく凝集した. しかし 凝集の多くは その後 解離して, 1∼2時間後には一部にだけ血栓が残った. フィブリン糸は まず細く短いものが血小板の表面に出現し, やがて太く長く成長することがわかった. すなわち 血流に抗してフィブリン糸が出現することに, 血小板は重要な役割を演じていた. 血栓への白血球 (主として顆粒球) の関与は 30分後より始まった.
    剥離10∼30分後より 赤血球が内皮下組織や活性化血小板, または 長いフィブリン糸にひっかかって 涙滴状, 亜鈴状となり, あるものは萎縮し, さらに内容を失ないゴーストとなった. すなわち HELLEM らの提唱した微小溶血が壁在血栓形成の中期に起こることがわかった.
    頸動脈を軽くしごくことで, 容易に内皮の障害と それに続く上述の止血反応が起こった. 止血反応の日常性が示唆された.
  • 小松 正伸, 藤田 尚男
    1978 年 41 巻 3 号 p. 229-237
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    生後5∼9日のマウス卵管膨大部を用いて, 線毛の発生を電子顕微鏡で観察した.
    線毛発生中の細胞では ゴルジ装置が非常によく発達しており, 主として 直径40∼120μmの多数のゴルジ小胞で構成されている. 線毛発生途上の細胞では 細胞上部に 直径70∼140μmの小胞が多数存在し, これらの小胞が卵管腔側の細胞膜と癒合している像も頻繁に観察される. さらにこのような細胞では 細胞表面から核上部に向かって 直径25∼35μm, 長さ 0.7∼4μmの微細管が多数延びており, しかも微細管の下端に前述の小胞が付着していることが多い. この時期のマウスに微細管の形成を阻害するコルヒチンを投与すると, 細胞上部の微細管がほとんど消失し, 細胞表面付近の小胞もなくなる. 以上のことから, 線毛の形成に必要な多量の細胞膜は, ゴルジ野から微細管により細胞表面に運ばれることが考えられる.
    コルヒチン投与によって線維性果粒 (fibrous granule) が消失し, かわりに 直径80∼120μmの被覆小胞様の果粒が出現し, 同じ領域に水解小体様の電子密度の高い, 直径1.7∼4.5μmの小体の集団が出現する. この小体が被覆小胞様の果粒を含有する像も認められる. しかも 前中心小体の形成は ほとんど消失している. このことはコルヒチンが線維性果粒に直接働き, 前中心小体への過程が障害され, 変性した線維性果粒が水解小体により処理されることを示している. しかし, すでに完成した基底小体や線毛は コルヒチンの影響をうけない.
  • 熱海 佐保子
    1978 年 41 巻 3 号 p. 239-258
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    イガイの平滑筋において, 筋小胞体の微細構造と 筋肉の収縮および弛緩時の細胞内カルシウムの分布状態の変化を ピロアンチモン酸法により検討した. 筋小胞体は, 小管状と小胞状の部分が交互に連なって 筋細胞の長軸方向の要素を形成し, その間をつなぐ 横軸方向の要素も 少ないながら みとめられる. 小胞状の部分は細胞膜と表面結合を形成する. ピロアンチモン酸法により筋小胞体, ミトコンドリア, 細胞膜内葉に沈澱が形成されるが, この沈澱の主成分は, カルシウムとアンチモンであることが, ナトリウムを除いた溶液での潅流, 沈澱のEGTA, EDTAに対する感受性, および エネルギー分散型, 波長分散型の両X線解析によって証明された. これらの沈澱は, 筋細胞の収縮時には細胞質全体に微細顆粒状に分散してみられるが, さらに収縮の頂点から弛緩するまでの各相でピロアンチモン酸処理すると, ミトコンドリアと細胞膜内葉には 速かに多量の沈澱がみられるのに対し, 筋小胞体では徐々に沈澱の量が多くなる. このことは, 三つの細胞内カルシウムの貯蔵部位のうち 筋小胞体が収縮と弛緩の調節に主たる役割を演じていることを示唆する. キャッチ状態では, ピロアンチモン酸処理筋で, 太いフィラメントの融合は観察されなかった.
  • J. A. C. NAVARRO, D. SOTTOVIA-FILHO, R. TAGA, J. L. TOLEDO-FILHO
    1978 年 41 巻 3 号 p. 259-266
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    The prenatal development of cheek-teeth of rabbits was studied by histological methods. Females from 15 to 30 days of gestation were sacrificed and their fetuses were collected and decapitated. The heads were fixed in buffered neutral formalin and paraffin embedded. Sagittal and frontal sections of 7μ were obtained and stained with hematoxylin-eosin. The first tooth-germs observed were the m3 and m3, in the animal of 16 days of fetal life. One day after the m4 and m4 are observed in the bud stage. The last teeth to initiate development in the fetal rabbits are the M3 and M3 at 30 days. Only the m3, m4, m3 and m4 start cementogenesis in the prenatal stage.
  • L. C. U. JUNQUEIRA, W. COSSERMELLI, R. BRENTANI
    1978 年 41 巻 3 号 p. 267-274
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    Organs of fish, amphibian, reptile, bird and mammals when stained by Sirius Red and studied with polarization microscopy present different colors in regions where collagens I, II and III have been described.
    Collagen type I presented a yellow, orange or red color while collagen type III appeared green. Collagen type II, present in cartilage and chondrosarcoma showed a variable color according to the tissue and the species. Its color and morphology however always permitted its clear distinction from collagens type I and type III.
  • 村上 正浩, 杉田 新, 島田 達生, 吉村 正
    1978 年 41 巻 3 号 p. 275-283
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    成熟ニホンザルの精嚢を走査電子顕微鏡で観察した. 多数の精子が嚢腔表面に散在し, そのあるものは正常の形態を保っているが, あるものは崩壊している. 精嚢の内腔面を縁どる上皮細胞は線毛を欠き, 軽く内腔に向け突出しており, 均等に分布した微絨毛を備えている. 割断面で見ると, 上皮は分泌性の円柱細胞と ときにその間に介在する基底細胞ら構成されており, ほかの動物で これまでに報告された 透過電子顕微鏡による所見とよく一致する.
    この研究で特記すべき所見は, 上皮表面に多数の大食細胞が在存することであり, またこれら大食細胞が崩壊した精子を大量にたべこんでいることである. 大食細胞は何らかのきっかけで精嚢腔にはいり込んだ精子の除去を行なうのであろう.
  • 小林 繁, 後藤 健太郎, 狩野 健一
    1978 年 41 巻 3 号 p. 285-290
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    3H-ドパ腹腔内投与後15分から1時間 のマウス副腎髄質のクロム親和細胞内での放射能について, オートラジオグラフィーを使って調べたところ, 対照群の正常マウスでは A細胞の放射能がNA細胞のそれより有意に高かったが, 下垂体剔出 (経耳法) 9日後のマウスでは, これら両型のクロム親和細胞に含まれる放射能は ほぼ同様であった. この結果より, クロム親和細胞には 外来性ドパまたはその代謝産物に対する 特別の取りこみ機構があり, この機構がA細胞では NA細胞におけるよりも活発に作動するように下垂体が支配している可能性が考えられた.
  • 1978 年 41 巻 3 号 p. 291-292
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
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