ニワトリ胚子 十二指腸上皮の接着複合体の発達の推移を おもにフリーズ-エッチング像によって追跡した.
不完全な閉鎖帯は すでに孵卵6∼7日の胚子の十二指腸上皮に存在する. 上皮細胞の外側細胞膜の上端に位置するこの時期の閉鎖帯は1∼7本の線條からなり, その深さは平均0.2μmである. 各線條は途切れが多く, 線條の交叉はほとんどない. この時期の閉鎖帯は, “very leaky”型 (CLAUDEとGOODENOUGHの分類) に相当する. しかし, 三つ以上の細胞が接している部分では, 線條が上皮細胞の基底側へ向かって深くのびる.
閉鎖帯の下方のP面では, 3∼10個の膜内粒子が密に集合している像が しばしば観察される. この膜内粒子の集合は, 周囲を膜内粒子の少ない暈に囲まれている. 外側細胞膜のP面の中程の高さの部位には, 暈をもたない5∼10個の膜内粒子の疎な集合像も観察される. これらの膜内粒子の集合は 最も原始的なギャップ結合と考えられる.
孵卵9日になると, 閉鎖帯の線條は互いに交叉する頻度が増加するが, 線條そのものの途切れは6∼7日のものよりも多い. また交叉した線條によって囲まれる面は角ばっている. 孵卵12日には これらの線條は不足部分が補われて連続し, 走行も波状の滑らかなものとなる. また線條は 平均5.3本に増加し, 深さも 平均0.3μmと深くなる.
ギャップ結合を形成する膜内粒子は増加を続け, 孵卵9日では多角形の集合体を示すようになる. 9∼15日には 種々の段階のギャップ結合を見ることができる.
その後も閉鎖帯は発達を続けるが, 18日以後には著名な変化を示さない. 孵卵18日には線條数は 平均7.2本, 深さは 平均0.4μmを示す. この値は“intermediate to tight”ないし“very tight”の閉鎖帯に相当する.
この頃には ギャップ結合もその径を増して, 直径0.3∼0.4μmのものが多くなってくる. またギャップ結合を形成する膜内粒子の中央には, 直径約20Åの小孔が観察される.
これらの全過程を通じて, ギャップ結合と閉鎖帯が接触することは決してなく, 閉鎖帯とギャップ結合は各々独立して発達する.
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