Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
41 巻, 4 号
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  • 和泉 徹, 服部 晃, 樋熊 紀雄, 田村 康二
    1978 年 41 巻 4 号 p. 293-308
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    特発性心筋症の細胞学的変化とその意義について検討した. 対象はうっ血型 (6), 肥大型 (5), 対照 (2) の計11例であった. 右室より心内膜心筋を生検する方法で, 標本を採取し, 光学および電子顕微鏡で観察した.
    心筋線維横径は, 対象の2峰性分布に比し, うっ血型では多峰性の, 肥大型では4峰性の幅広い分布を示した. おもな細胞学的変化は, 心筋原線維の走向異常とZ帯異常であった. うっ血型では, まばらな原線維が無秩序な走向配列 (ルーズ型) を示したのに対し, 肥大型では, 豊富な原線維がからみ合った走向異常 (タイト型) が特徴的であった.
    Z帯異常としては, 肥大型の全例にZ帯の拡張, 分枝ないし騎乗 (1型) が顕著にみられ, うっ血, 肥大両型の少数例に細線維の塊状密集 (2型) や編目状細線維配列 (3型) が観察された.
    タイト型走向異常と1型Z帯異常は, 肥大型心筋症の細胞学的診断根拠と考えられた.
  • 山田 まりえ, 小沢 英浩
    1978 年 41 巻 4 号 p. 309-323
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    メダカの歯胚を用い, 象牙質の初期石灰化機構につき, 微細構造学的, 細胞化学的に検索した.
    象牙芽細胞は歯胚中心部に重層柱状に配列し, 粗面小胞体, ゴルジ体の発達が著しく, 歯胚基底側に位置する細胞は, 象牙質基質側に面して多数の微絨毛様細胞突起を有する.
    象牙質の初期石灰化像は哺乳類と類似し, 細胞外小胞構造, いわゆる基質小胞が未石灰化の象牙質基質の膠原原線維間に高頻度に出現することで特徴づけられる. 基質小胞は直経約30-150nmで, ほぼ均一な形態を示し, 歯胚基底側の象牙芽細胞遊離端に近接して最も多く観察され, 微絨毛様突起との関係を暗示している. 石灰化開始部位では, 基質小胞中に針状結晶が出現し, さらに それらの小胞群を 多糖類顆粒と思われる構造が取り囲むようになる. 小胞内部の結晶は, その数と長さを増し, その結果, 小胞は結晶軸方向に伸びたような形態を示すようになる. 結晶化が進むと, ついには小胞膜は不明瞭になるが, 脱灰標本では 結晶は消失し, 小胞膜の破片が認められる. これは 結晶成長に伴う小胞膜の断裂化を意味するものと考えられる. これらの過程を通して, 小胞間に存在する膠原原線維と結晶の相関は観察されなかった. しかし, 石灰化が更に進行すると, 結晶は明らかに成熟した膠原原線維に沿って配列し, 石灰化の成熟度が増加していることを示している. アルカリフォスファターゼ活性は, 象牙芽細胞膜と基質小胞に強く認められ, 基質小胞の細胞膜由来を示唆している.
    以上の結果に基き, メダカ歯胚の象牙質石灰化と基質小胞の関係を論じた.
  • 岡本 壽男, 石村 和敬
    1978 年 41 巻 4 号 p. 325-337
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ニワトリ胚子 十二指腸上皮の接着複合体の発達の推移を おもにフリーズ-エッチング像によって追跡した.
    不完全な閉鎖帯は すでに孵卵6∼7日の胚子の十二指腸上皮に存在する. 上皮細胞の外側細胞膜の上端に位置するこの時期の閉鎖帯は1∼7本の線條からなり, その深さは平均0.2μmである. 各線條は途切れが多く, 線條の交叉はほとんどない. この時期の閉鎖帯は, “very leaky”型 (CLAUDEとGOODENOUGHの分類) に相当する. しかし, 三つ以上の細胞が接している部分では, 線條が上皮細胞の基底側へ向かって深くのびる.
    閉鎖帯の下方のP面では, 3∼10個の膜内粒子が密に集合している像が しばしば観察される. この膜内粒子の集合は, 周囲を膜内粒子の少ない暈に囲まれている. 外側細胞膜のP面の中程の高さの部位には, 暈をもたない5∼10個の膜内粒子の疎な集合像も観察される. これらの膜内粒子の集合は 最も原始的なギャップ結合と考えられる.
    孵卵9日になると, 閉鎖帯の線條は互いに交叉する頻度が増加するが, 線條そのものの途切れは6∼7日のものよりも多い. また交叉した線條によって囲まれる面は角ばっている. 孵卵12日には これらの線條は不足部分が補われて連続し, 走行も波状の滑らかなものとなる. また線條は 平均5.3本に増加し, 深さも 平均0.3μmと深くなる.
    ギャップ結合を形成する膜内粒子は増加を続け, 孵卵9日では多角形の集合体を示すようになる. 9∼15日には 種々の段階のギャップ結合を見ることができる.
    その後も閉鎖帯は発達を続けるが, 18日以後には著名な変化を示さない. 孵卵18日には線條数は 平均7.2本, 深さは 平均0.4μmを示す. この値は“intermediate to tight”ないし“very tight”の閉鎖帯に相当する.
    この頃には ギャップ結合もその径を増して, 直径0.3∼0.4μmのものが多くなってくる. またギャップ結合を形成する膜内粒子の中央には, 直径約20Åの小孔が観察される.
    これらの全過程を通じて, ギャップ結合と閉鎖帯が接触することは決してなく, 閉鎖帯とギャップ結合は各々独立して発達する.
  • 高橋 嘉幸, 坪内 平吉, 小林 寛
    1978 年 41 巻 4 号 p. 339-349
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    正常のコイの肝臓では 伊東細胞は光学ならびに電子顕微鏡的に肝臓の類洞壁 すなわちディッセ腔内に見いだされるが, 大多数の脊椎動物のものとは異なって 細胞質内に ほとんど脂肪滴をもたない (空の伊東氏細胞). しかし多量のビタミンAを投与すると, 伊東細胞の細胞質が増大し, 脂肪滴が出現して, それらの大きさと数は ビタミンAの投与量にほぼ比例して増す. この事実は 多量のビタミンA投与が 空の伊東細胞を脂肪滴をもつものに転換させ, 投与された過剰のビタミンAが伊東細胞内に新しく用意された脂肪滴の中に貯えられることを示唆する. 実験的ビタミン過多のコイで, 肥大した伊東細胞は細胞質内に脂肪滴を蓄積するとともに 微細線維の増殖を示した. 肝小葉内の類洞周囲腔における線維形成と, 伊東氏細胞の細胞質内における線維の増殖との間の関連性が論議された.
  • 平 一男, 柴崎 晋
    1978 年 41 巻 4 号 p. 351-366
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    マウスの喉頭と気管の上皮にみられる無線毛細胞について電子顕微鏡を用いて検索した. この細胞はフラスコ状, あるいは高円錐形で, 上皮内に通常単独にあり, まれに少数個が集団をなしてある. せまい面で気道内腔に接し, 多数の微絨毛が刷子縁様構造を形成している. 細胞質内には, つねに豊富な微細線維束や小顆粒 (直径60∼170nm) が含まれる. この細胞と神経線維が密接する像もしばしば見いだされる. この所見は, いわゆる“刷子細胞”の特徴を示すとともに, “基底顆粒細胞”や“神経上皮小体”の細胞として記載されているものとも一致する. すなわち, これらの細胞は同一の細胞系に属するものを, 従来の研究者が異なる側面から捉えて, 異なる名称を与えたものと結論される. さらに, 本細胞が内分泌機能を有する細胞であることを示唆する 顆粒の開口放出像が得られた.
  • 田沼 裕, 大畑 まさ子
    1978 年 41 巻 4 号 p. 367-376
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    正常コウモリの小胆管上皮の中に, 細胞先端部の基底小体から起こる 長い単一線毛をもつ細胞が見られた. 基底小体 (遠位中心子) は近位中心子をともなうので, 基底構造は2中心子型である. 長い先細りの線毛の横断像の観察で, 線毛諸部の微小細管の配列が明らかにされた. すなわち 基底小体にもっとも近い最近位部では二重微小細管は9+0型に配列するが, 遠位部では二重微小細管の変化と減少がおこり, 全部単一微小細管に分離し, もっともしばしば見られるのは 単一微小細管の6+1型または7+1型配列である. 上記の二重微小細管の9+0型配列と2中心子型基底構造をもつ二つの特性から, 小胆管上皮細胞の単一線毛は感覚あるいは化学物質受容線毛であり, 運動毛ではないと結論した. 同様な線毛は諸種脊椎動物の大外分泌腺の導管系上皮に広く分布すると思われる.
  • 田沼 裕, 大畑 まさ子
    1978 年 41 巻 4 号 p. 377-384
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    正常なコウモリとニワトリの非分裂時期肝細胞における中心子の存在を電子顕微鏡で観察した. 両動物において中心子は肝細胞の毛細胆管に近い先端部細胞質領域にあり, コウモリでは中心子を輪状に囲む明暈が明瞭であるが, ニワトリでは不明瞭である. 肝細胞の中心子を見つけるのはあまりむずかしくないが, ニワトリでは毛細胆管を囲む4∼6個の肝細胞の細くなった先端部細胞質領域にあるので, コウモリの場合より容易に見つかる. われわれはニワトリの方が肝細胞における中心子の出現頻度が多いという印象をもった. コウモリとニワトリの中心子はほとんど双中心子で, 3個以上の中心子や中心子の増殖は見られなかった. 両動物の肝細胞の中心子から単一線毛が形成される像は見られなかった.
  • 1978 年 41 巻 4 号 p. 385-387
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
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