Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
43 巻, 5 号
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  • 高野 吉郎, 小沢 英浩
    1980 年 43 巻 5 号 p. 385-399
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ラットとハムスター切歯エナメル質の成熟に関して, エナメル芽細胞が果す役割と, 周期的形態変化の意義を, とくに物質通過性に着目して検索した.
    エナメル質成熟期のエナメル芽細胞は, 遠位細胞膜が複雑な嵌入を示すRAと, 同部が平坦なSAの2型に分類されたが, SAはエナメル器中で, 歯軸に対して 横走あるいは斜走する数本の帯状の分布を示した. 静注されたホースラディッシュペルオキシダーゼ (HRP) は, SA部では細胞間を通過してエナメル質表面に達したが, RA部では遠位細胞間結合部を越えなかった. 静注5分後には すでにRAは細胞内にHRPを取込んだが, SAに取込みはなかった. しかし静注1時間後, 個々の帯状構造を構成するSAのうち, 切縁側に位置する細胞内にHRPの取込みがみられた. RA, SAいずれも 細胞内の大小果粒構造に 酸性ホスファターゼ活性を認めた. アルカリ ホスファターゼ活性は, とくにRAの遠位端の膜嵌入部に強くみられたが, SAの平坦な遠位細胞膜には同活性がなかった. コンタクト マイクロラジオグラムは. RA, SAにそれぞれ対応するエナメル質間に, 特別なX線吸収度の差を示さなかったが, テトラサイクリンによるラベリングは, RAに対応するエナメル質で強く, SAに対応する部では弱かった.
    以上のことから, ラットとハムスター切歯では, 主としてRA部でエナメル質からの有機性成分の脱却, ならびにミネラルの添加が活発に行なわれる一方, 周期的にみられたSA部には, エナメル質との間に活発な代謝はなく, SA部はむしろエナメル質の成熟のために働くRAの細胞内小器官の賦活, あるいは再生の場として機能している可能性が示された.
  • 和泉 徹, 三浦 和正, 服部 晃, 田村 康二
    1980 年 43 巻 5 号 p. 401-409
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ヒト心筋においても骨格筋でのネマリン小体に似たZ帯異常が存在する. 本研究の目的は, その形態的特徴と心筋の病態との関連を明かにすることにある. 各種心筋疾患者103例の右室生検標本を電子顕微鏡で検索すると, 10例 (9.8%) に, この異常を認めた. 形態上は細線維の織りなす編目構造を主徴とし, ネマリン小体の基本構造と酷似していた. しかし, この異常の多くは, 筋節配列間に介在する筋原線維内構築物である点や, 編目構造を構成する細線維が対になり, その間に多数のブリッジ形成のみられる点が小体と異っていた. 一方, この編目型異常は疾病の種類, 患者の年齢, 心筋細胞の肥大度と無関係に出現した. ただ, その異常の出現した心筋においては, 細胞の退行性変化の顕著なものが多かった. すなわち, このZ異常は心筋細胞に生じた代償機構の破綻を反映すると考えられた.
  • 飯島 浩一, 小川 哲朗
    1980 年 43 巻 5 号 p. 411-421
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    健康で成熟した雌ウィスター系ラットの視索上核にHRPを注入して, 標識細胞の有無と分布を青斑核を含む橋領域で追究した. 注入部位が視索上核を含む全15例で標識細胞が青斑核に見出されたが, 一方, 注入部位が視索上核を含まない全9例では青斑核に標識細胞が見出されなかった. 注入部位が正確に視索上核に限局した6例で, 同側の青斑核中にのみ少数の多極性神経細胞が明確に標識された. これらの所見は青斑核から同側の視索上核への遠心性投射の存在を証明する. また青斑核の腹背両区域の主として多極性神経細胞がこの投射に関与することが示唆された. しかし現段階では, 青斑核から対側の視索上核に投射する可能性はまだ否定されない.
  • 佐々木 和信, 伊藤 隆
    1980 年 43 巻 5 号 p. 423-436
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    マウス脾臓と腸間膜リンパ節, 腸骨リンパ節, 腋窩リンパ節および膝窩リンパ節において, 妊娠および授乳の及ぼす影響を定性ならびに定量形態学的に観察した.
    妊娠期脾臓重量は増加し, 妊娠15日でピークに達する. 分娩後, 重量は次第に減少し, 分娩後20日で正常に復する. 妊娠期において, 赤・白両脾髄の体積はともに増大する. 分娩後, 白脾髄の体積は急速に正常値に復する. 赤脾髄の体積は授乳群において一般に高値をとるのに対して, 非授乳群で急速に減少する. 妊娠期の脾髄には形質細胞が増加し, しばしばラッセル小体を有する. 形質細胞は白脾髄では縁帯および動脈周囲域に多数集積し, 分娩後急速に減少する.
    腸間膜リンパ節は妊娠期に軽度ながら有意の重量増加を示すが, 分娩後は授乳, 非授乳両群ともに重量を減少する. 妊娠とともに, 髄質は増大し, とくに髄索は多数の形質細胞によって満たされる. 形質細胞は妊娠10∼15日で旁皮質にも群在する. 細胞は分娩後急速に減少する. 形質細胞は妊娠期に腸骨リンパ節においても増加するが, 増加は腋窩および膝窩リンパ節では認められない.
    成績をとくに妊娠における免疫反応と関連して考察した.
  • M. Mumtazuddin AHMED
    1980 年 43 巻 5 号 p. 437-444
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    This report deals with the ultrastructural changes observed in neurons of the posterior root ganglion of slow loris (Nycticebus coucang) following administration of tricresylphosphate (TCP) 0.2ml/kg body weight for 10 days. The observed changes involved the rough and smooth endoplasmic reticulum profiles, neurofilaments, Golgi complex as well as lipofuscin pigment. Nissl substance was markedly dispersed to the periphery of the neuron. Membranous profiles of the smooth endoplasmic reticulum were lost. Neurofilaments were markedly increased and manifested neurofibrillary tangles or else were scattered over the cytoplasm. Golgi complexes were dilated and there was a marked increase in lipofuscin.
    These observations suggest that TCP produces degenerative changes in the organelles of sensory neurons similar to those seen at the height of chromatolysis produced by mechanical interference in the dorsal root ganglia and other neurons.
  • 加藤 好光, 磯村 源蔵, 清水 信夫
    1980 年 43 巻 5 号 p. 445-458
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    アミン線維の検索のため正常成熟雄ラット (体重200g) の胸髄側角の一部 (Th1, Th3, Th6, Th9, Th12) をアミン螢光法 (湿式) により観察し, 同時にグリオキシル酸灌流固定と過マンガン酸カリ固定の併用法により出現するノルアドレナリン顆粒を指標として微細構造の検索を行なった.
    分節状に存在する側角には, 側索後半部からアミン線維が集まってきて側角細胞周囲に至り, それらを取巻き分布し, 更に内側へも向っている.
    電顕的観察において, 側角の主神経細胞は陥凹の激しい核, よく発達したゴルジ装置, そして, 長い小胞体を有する. 更にゴルジ装置の周囲には, 沢山の大小分泌顆粒が存在し, ミトコンドリアは比較的多く, 少数の多胞体, ライソゾームも観察された. しかし, まれに主細胞とは明らかに異なった細胞, すなわち細胞内小器官が前者のものに比し, 更に良く発達している細胞が存在する. それは, 短い小胞体を非常に多く含み, このため細胞質がいくぶん暗く見えるほどであった.
    側角に見られる軸索未端は, 大きく分けて, 以下の4種類に区別できた: 多くの小型有芯顆粒と少数の大型有芯顆粒を同時に含んだ軸索終末 (I型), 主として大型の小胞からなり, この中に有芯顆粒が殆ど認められないもの (II型), 有芯顆粒を持たず小型小胞の多いもの (III型), そして, 扁平な小胞が多く見られ, その中に大・小有芯顆粒を少数持っているもの (IV型, 稀であるが) である.
    I, II, III型の終末は, 主細胞の細胞体とその樹状突起に接着していた. また主細胞とは異なった細胞体, 並びに内部に短い小胞体, ライソゾームを含むことから樹状突起と考えられるその突起にも, それぞれI, II, III型のATが接着していた. 稀に, I型終末がII型のそれに, III型終末がI型終末に接着し, いわゆる axo-axonic contact と思われるものがあった. また, 樹状突起にさらに樹状突起と思われる突起が接着し, dendrodendritic contact を暗示させた. 側角には, 軸索終末同士が接着して, いわゆる cluster を作っている所が多く見られ, その中でI型終末だけが集合して, cluster を作っている所もある.
    胸髄側角の各レベル (Th1, Th3, Th6, Th9, Th12) 間のアミン線維, ノルアドナリン顆粒を指標とする微細構造について, 差異は認められなかった.
  • 内田 隆
    1980 年 43 巻 5 号 p. 459-478
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    数種の爬虫類 (イシガメ, クサガメ, カナヘビ, シマヘビ) の味蕾を, 微細構造学的および組織化学的に検索した.
    いずれの動物でも, 味蕾は少なくとも, I型, II型, III型の3種類の細胞により構成されていた. I型細胞は分泌性と考えられる電子密度の高い果粒を含むことを特徴とし, この果粒は過ヨウ素酸-クロム酸-メテナミン銀染色で陽性反応を示した. II型細胞は, 多数の小管状構造, 小胞構造, および層板構造を有していた. III型細胞は有芯小胞を含み, 神経終未との間に求心性シナプス結合を作っていた. また, カメ味蕾では, III型細胞に類似した細胞がしばしば基底部に観察された.
    モノアミン螢光組織化学によりイシガメの味蕾を検索すると, L-ドーパとナイアラマイド投与では, 一部の味蕾細胞に弱い黄緑色の螢光を認め, 電子顕微鏡による観察では, III型細胞の有芯小胞の増加が認められた. アセチルコリンエステラーゼ活性は, カメ味蕾に認められなかった.
    以上の結果より, 爬虫類の味蕾を構成している3種の細胞は, 哺乳類の味蕾で分類された3種の細胞にそれぞれ類似し, III型細胞が味細胞に相当し, この細胞はモノアミンを合成する能力を有していると考えられる. さらに, カメの味蕾では, 基底側に他の下等脊椎動物の味蕾にみられる基底細胞に類似した細胞を認め, 以上の諸点から比較解剖学的に, 爬虫類の味蕾は, 哺乳類と両生類または魚類との中間に位置すると思われる.
  • 1980 年 43 巻 5 号 p. 479-480
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
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