Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
44 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 黒住 一昌, 四分一 泉, 登坂 久美
    1981 年 44 巻 5 号 p. 405-427
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    腸粘膜の杯細胞の起源については諸説があって, まだ完全には解決されていない. われわれはラットの空腸上皮を電子顕微鏡で観察し, 吸収上皮細胞と杯細胞の間に移行があることを示す形態学的証拠を得た. 腸の絨毛および陰窩の両者をおおう円柱上皮細胞は, いずれも吸収機能を示唆する像を有する. これらの細胞は遊離面の微絨毛間隙につながる表面陥凹を備えている. 吸収された脂質は細胞表面に近い細胞質内に出現する小胞の内部に存在し, この吸収された脂質に由来する乳糜粒 (カイロマイクロン) は, ゴルジ装置の近くにある大きな空胞に含まれている. ラット乳児の腸内腔に人工的に注入されたフェリチンは, 円柱上皮細胞の遊離面直下の細胞質に出現する空胞に取り込まれている.
    陰窩上皮に存する未熟な杯細胞は, 吸収上皮細胞に見られるものと全く同様な表面陥凹と水解小体 (ライソゾーム) を有する. このような未熟杯細胞によつて吸収された脂質滴は, 未熟な粘液果粒の間に散在している. 人工的に腸腔に注入されたフェリチンは, 杯細胞のゴルジ装置付近にある空胞内あるいは水解小体内に発見された. ラット乳児の腸絨毛にある杯細胞の微絨毛および細胞質の基質は, 周囲の吸収細胞のそれと同様に明るい. このように明るい細胞質を有する未熟な杯細胞と, 暗い細胞質を有する成熟した杯細胞との間には, 明らかに移行が見られる.
    以上の形態学的証拠は, すでに吸収細胞へ分化した円柱上皮細胞が, 粘液を分泌する杯細胞に変る可能性を示すもので, 陰窩底にある未分化な円柱上皮細胞のみならず, かなり分化して吸収機能をもつに至った円柱上皮細胞が, さらに杯細胞に分化し得ることを示唆する.
  • 電子顕微鏡による定量形態学的観察
    佐々木 和信, 松村 譲兒, 伊藤 隆
    1981 年 44 巻 5 号 p. 429-438
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    正常, 妊娠5日と15日および分娩後20日の雌dd-マウスで, 脾臓赤脾髄における赤血球産生を電子顕微鏡レベルで定量形態学的に検索し, 妊娠の赤血球産生に及ぼす影響を研究した.
    生後60日の正常赤脾髄では, 赤血球系細胞が最も多く, 血球系細胞の73.3%を占め, さらにその55.1%が有核赤芽球である. Stereology による解析で, 赤芽球は核径によって, 大・中・小の3型に分類できる. 赤芽球のうちで, 小型赤芽球が最も多く約50%を占め, 中型は約35%, 大型は15%を占める. 大・中および小赤芽球の核体積比はほぼ4:2:1である.
    妊娠期において, 赤脾髄の赤血球系細胞とくに赤芽球は著しく増加する. 赤芽球の総数は, 正常群で3.8×107, 妊娠5日で9.7×107, 妊娠15日で17.4×107である. 妊娠初期には, 小赤芽球に比べてとくに大・中赤芽球が著しく増加するのに対して, 妊娠末期では, 大・中赤芽球のみならず, 小赤芽球の増加が著しい. 分娩後20日で, 赤芽球は数においても, 各型の比率においても正常に復する.
  • 沢野 文夫, 藤田 尚男
    1981 年 44 巻 5 号 p. 439-452
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ラット甲状腺の濾胞上皮細胞内のペルオキシダーゼの局在, およびマウス甲状腺の濾胞上皮細胞内のチアミンピロフォスファターゼと酸性フォスファターゼの局在と, 長時間浸漬によるオスミウム酸染色の結果を比較検討した.
    細胞上部のほとんどすべての分泌果粒 (径100-200nm) はペルオキシダーゼ陽性を呈するが, 再吸収コロイド滴は陰性である. 加えて粗面小胞体腔, 核膜腔, ゴルジ装置のとくにトランス側から1-3層の層板の内腔, 濾胞腔周辺部のコロイドが陽性を呈する.
    チアミンピロフォスファターゼの反応産物は, ゴルジ装置のトランス側から1-3層の層板の内腔およびその近くの小胞に局在する. まれにリジッド層板にもみられる.
    酸性フォスファターゼはゴルジ装置のトランス側から1-3層の層板の内腔, トランス側の滑面および被覆小胞, リジッド層板, 水解小体, いくつかのコロイド滴に局在する.
    したがってチアミンピロフォスファターゼ陽性域と酸性フォスファターゼ陽性域はかなりよく重なる. 一方, 長期オスミウム酸浸漬によって染まるのはゴルジ装置のシス側の1-2層の層板の内腔である.
    甲状腺濾胞上皮細胞のゴルジ装置には機能的な極性があり, またGERLはゴルジ装置の一部と考えるのが至当と思われる.
  • 伊東 且裕, 脇田 稔, 小林 茂夫
    1981 年 44 巻 5 号 p. 453-466
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    カニクイザルを材料とし, 歯根膜中の知覚神経と神経終末の分布様式と形態を鍍銀法により検索し, 次の結果を得た.
    1. 神経は歯槽底ならびに側壁にある開口部より歯根膜中に入る. ここで神経は血管に伴行するようになる.
    2. 歯根膜中での神経分布は一様ではなく, 根尖側1/3ではとくに密である. この領域で神経線維束は歯槽壁に近く, 単一線維はセメント質近くに観察されることが多く, 全体としてこれらは, 歯根を包むように分布する.
    3. 神経終末はその形態から次のように分類される. 1) 歯槽骨近くに見られることが多い自由終末もしくはボタン状の終末. 2) 歯根膜中間部ならびにセメント質近くに多く見られる樹状もしくは叢状の終末. これからさらにセメント質中に線維が延び出していることもある. 3) 少数のマイスネルの小体に非常によく似る特殊な終末. 4) 樹状もしくは叢状終末が規則的な間隔を置いて存在し, あたかもこれらの終末が各々の支配領域を分担しているかのように見られるもの. この型の終末は, とくに歯根膜の機械的刺激の受容装置であると思われる.
  • 石関 清人, 立花 民子, 坂倉 康則, 名和 橙黄雄
    1981 年 44 巻 5 号 p. 467-476
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ミニブタ骨髄細胞に核内封入体を見出し, その構造と化学的性質を電子顕微鏡と細胞化学的方法によって検索した. 封入体は主として顆粒球系列細胞に認められ, ときに巨核球や形質細胞にも見られたが, その他の骨髄細胞には観察されなかった. 核内封入体は幅0.2-0.5μm, 長さ0.5-1.0μmの20-40本の波状細線維様集合束から成り, とくに大型の封入体では核の全長にわたって伸展しており, ときには核膜孔に連絡するものも見られた. 封入体の出現率は顆粒球の幼若細胞ほど高い傾向を示した.
    一方, エポン包埋切片に対する酵素消化実験では, これらの封入体はRNase, DNase, ペプシン, トリプシン, プロテアーゼのいずれにも不溶性であり, 従来ある種の神経細胞において報告されきた線維性の核内封入体とは若干性状が異なるように思われた.
  • 千葉 晃, 本間 義治, 中井 康光, 塩田 清二
    1981 年 44 巻 5 号 p. 477-484
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    カワヤツメの第三脳室壁を走査電子顕微鏡で観察すると, 壁面の随所に髄液内 (脳室内)ニューロンが存在することがわかった. これらのニューロンの突起は, 上衣自由面にある線毛, 微絨毛および球根状突起の間を横切って走る膨瘤をもった大小各様の口径の線維である. 透過電子顕微鏡により, これら髄液内ニューロンの突起と, 視床下部に存在する髄液接触ニューロンの脳室内突起との間に, シナプス様の接触がみられた. したがって, 髄液内ニューロンと視床下部神経分泌系との相関が示唆された.
  • 武田 正子, 宍戸 洋子, 北尾 研二, 鈴木 裕子
    1981 年 44 巻 5 号 p. 485-495
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    生後0日から21日までのマウスにモノアミン前駆物質を投与し, 有郭乳頭の味蕾を電子顕微鏡および螢光組織化学的方法により検索した.
    第1期 (0-1日) の味蕾には味孔はまだ形成されていないが, 味 (第III型) 細胞の分化はすでに始まっていた. この細胞は神経終末との間に未熟型の求心性シナプスを有していた. しかしモノアミン前駆物質である5-HTPまたはL-DOPA投与後の味蕾には特異的螢光細胞は認められなかった. 第2期 (2-7日) の味蕾には味孔が形成され, さらに成熟したシナプス, 第I型細胞および第II型細胞が出現した. また5-HTPあるいはL-DOPA投与後の味蕾に螢光細胞が出現した. 第3期 (14-21日) では, 5-HTP投与後の味細胞に微細構造の変化が生じた. すなわち未処置例ではほとんど見られない小有芯小胞 (直径30-60nm) が胞体全体に散在性に出現し, さらにこれは前シナプス膜に集積する明小胞の間にも認められた. また胞体に散在する大有芯小胞 (80-100nm) の芯の電子密度が, 未処置例に比べ増加した. このような結果から, 味細胞によるモノアミン前駆物質の取り込み能力は, 味孔および成熟したシナプスの形成と同時に生じると考えられる.
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