社会調査がこれほど頻繁にウェブで行われていることはこれまでになかった。そこで、回答誘導項目(IRI)を用いてデータスクリーニングの一環として不注意な回答者を選別に関する研究を実施した。この研究では2,490名をサンプルとした調査と2,000名をサンプルとした2回のウェブ調査が行われた。研究の目的は二項で、第一の目的は1回の調査で不注意回答者を選別するのに適切な回答誘導項目数についてで、第二の目的は選別されたグループ間における分析値の相違についてである。第1の研究では、回答誘導項目を用いた回答木分析を行い、1,935名が注意深い回答者と分類され、残りの555名が不注意な回答者としてデータから削除された。サンプル全員で構成されるグループと注意深い回答者のみで構成される3つのグループが24項目で構成される生活の質尺度(QOL)の分析で比較された。QOL得点の平均値は統計学的に有意であったが、1,935名の注意深い回答者は両グループに共通であるため、平均値の差は大きくはなかった。項目反応理論(2母数ロジスティックモデル)に基づいて求めた項目反応曲線を用いた比較では、注意深いグループと不注意なグループに明確な相違がみられたことから、不注意グルーㇷ゚に分類された555名をデータ分析から除外すべきという判断は支持された。第2の研究では、質問に誕生年月日を加えて、各回答者の年齢を算出した。この算出された年齢はウェブ調査会社に登録された年齢と比較され、誘導回答項目を用いて分類されたグループ間で正確性が比較された。注意深さ得点が高いグループでは一貫して正確度が高くなることが確認された。我々は、これらの結果に基づき、誘導解答項目は不注意な回答者選別に機能性が高いと結論した。また、1回のウェブ調査で使用すべき回答誘導項目数はおよそ3項目程度を推奨するとした。更に、注意深さの程度が明確に分類できなかった回答者の取り扱いについて考察が行われた。
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