高知県中部の国有林において先駆性樹木7種について開花結実フェノロジーと5年間の結実年変動を調査した。一年を通じた観察によると,開花はイイギリが最も早く(4月),ヌルデが最も遅かった(8月)。実が熟するのはクマノミズキが一番早く(9月),その後アカメガシワ,クサギ,カラスザンショウ,イイギリ,ヤマウルシ,ヌルデが順々に結実し,ヌルデは翌年3月まで実がついていた。5年間の観察によると,アカメガシワ,カラスザンショウ,クサギ,ヌルデは毎年結実した。イイギリ,クマノミズキは隔年で同調して結実し,ヤマウルシは1回しか結実しなかった。イイギリは結実した個体の胸高断面積の相対成長率が,結実しない個体よりも低かったが有意な差は得られなかった。先駆性樹種は高い頻度で果実を生産しており,果実食の鳥類への餌資源の提供,周辺の人工林への埋土種子の供給を担っていると考えられた。
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