針広混交林の誘導を目的として針葉樹人工林の列状間伐が行われている。本研究では,列状間伐実施4年後の40年生ヒノキ人工林において,間伐列・残存列における下層木本群落構造と光・土壌環境の斜面方位による違いを明らかにすることを目的とした。4m^2方形区では樹高は南斜面で北斜面より高く,樹高,個体数,種数と均等度(J')は間伐列で残存列より高かった。一方繰り返し6方形区の合計(24m^2)では樹高以外に違いは見られなかった。4m^2方形区の光環境条件と土壌pHは南斜面で高く,土壌の含水比,全炭素/全窒素比および有効態リン酸濃度は南斜面で低かった。また,含水比は間伐列で残存列より高かった。方形区あたりの下層木本群落構造に立地環境条件が及ぼす影響を主成分分析と一般化線型モデルにより解析した結果,個体数は明るく乾燥した場所では減少し,可給態窒素量が多いと増加すること,均等度は可給態窒素量が多いと低下すること,および樹高は可給態窒素量が多いと高くなることが示唆された。斜面方位による立地環境条件の違いは長期的には植生構造に違いを生じさせる可能性が有り,列状間伐の実施において考慮することが望ましいと考えられた。
抄録全体を表示