森林応用研究
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23 巻, 2 号
森林応用研究 23巻2号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
森林応用研究 23巻2号
  • 兵庫県及び大阪府を事例に
    石丸 嵩祐, 松下 幸司
    専門分野: 論文
    2014 年23 巻2 号 p. 1-10
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

    J-VER制度が2008年、環境省により導入された。地方自治体や社有林などの場合、一定規模のまとまりが期待できるが、私有林の場合、概して所有規模が小さい点が問題となる。本論文では、府県レベルにおいて森林組合が関係するJ-VER制度の現状分析を通じて、地方自治体・社有林以外における制度普及にあたっての課題を明らかにすることを目的とする。調査対象は、兵庫県森林組合連合会及び大阪府森林組合である。検討の結果、以下の課題が判明した。第一に、森林組合単独での事業実施は困難である。特に、クレジットの販売が困難と考えられ、プロバイダを利用するか、県レベルの組織の役割が重要である。第二に、J-VER制度は京都議定書に関連しているが、国際交渉の動向が不明である。吸収量の算定方法、クレジットの販売価格は、事業全般に影響を与える。第三に、森林施業計画の樹立または森林認証の取得が前提となっているが、この条件を満たす森林が限られている。以上の点を考慮すると、森林組合におけるJ-VER制度に基づく森林経営プロジェクトの急速な普及は難しく、森林吸収プロジェクトの導入をからめた森林施業の集約化が期待される。

  • 松本 剛史, 佐藤 重穂
    原稿種別: 論文
    2016 年23 巻2 号 p. 11-14
    発行日: 2016/08/31
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

    ニホンキバチやヒゲジロキバチの幼虫は,キバチ類が保持する共生菌キバチウロコタケ (Amylostereum laevigatum) が生育した材を利用して成長すると考えられている。その一方で,以前の報告では共生菌のスギおよびヒノキへの腐朽能力試験において,キバチウロコタケには腐朽能力があることが確認できなかった。そこで条件の異なった再試験の必要があると考えられ,キバチ共生菌キバチウロコタケの木材腐朽能力試験を行った。スギおよびヒノキ辺材の木材腐朽能力試験を行った結果,キバチウロコタケで材片の有意な質量減少が認められた。また,キバチウロコタケでは,バーベンダム反応では培地が褐変し,レマゾールブリリアントブルーR分解能試験では色素の脱色が認められた。以上のことより,以前の報告と異なり,キバチウロコタケはリグニン分解酵素群を持ち,また木材腐朽能力を持つ白色腐朽菌であることが示唆された。

  • 川口 英之, 鈴嶋 康子
    原稿種別: 論文
    2014 年23 巻2 号 p. 15-21
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

    雌雄異株の落葉小高木アオモジが分布拡大している鳥取県西部において,アオモジの生育密度が低い場所の雌と生育密度が高い場所の雌で,結果率を比較した。生育密度が高い場所の雌に比べて,生育密度が低い場所の雌の結果率は有意に低かった。観察した雌の幹直径,幹直径の成長速度,相対成長速度には,低密度と高密度の場所で有意な差がなかったが,最も近い雄との距離は低密度のほうが高密度よりも有意に長かった。以上の結果から,アオモジの結果率に生育密度が影響すること,および低密度の個体群において花粉が制限されることが示唆された。

  • 小笠 真由美, 三木 直子, 吉川 賢
    原稿種別: 論文
    2014 年23 巻2 号 p. 23-31
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

    二次林の照葉樹林化が進行する中、生育環境に対する常緑樹の水分通導機能の順応様式は不明な点が多い。本研究では、相対照度100%、10%および3%の下で生育させたアラカシおよびヒサカキの実生苗を対象に、水分通導機能の光順化を明らかにするために、通水特性、木部構造、葉量および葉のガス交換速度を調査した。アラカシでは、道管の直径は処理区間で異ならず、本数密度は100%区の個体で高かった。比断面積水分通導度(Ks)は処理区間で差がなかった。また、有意差はなかったものの、100%区の個体において総葉面積が小さく、比葉面積水分通導度(LSC)は高い傾向があった。さらに,100%区の個体では日中に気孔コンダクタンス(gs)の低下が見られた。ヒサカキでは、100%区の個体で道管の直径、本数密度がともに小さく、Ksは低い傾向があった。また,総葉面積は小さく、LSCは高かった。100%区のヒサカキでは日中のgsの低下は見られなかった。これらの結果から、アラカシは強光条件下でも木部構造と気孔による失水調節の両面により、顕著な葉量の調節なしに葉への水分供給性を高く維持するのに対し、ヒサカキは強光条件下で葉量を著しく抑制することで葉への水分供給性を高めることが明らかとなった。

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