森林応用研究
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24 巻, 2 号
森林応用研究 24巻2号
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森林応用研究 24巻2号
  • 中西 麻美, 稲垣 善之, 柴田 昌三, 大澤 直哉
    原稿種別: 論文
    2015 年 24 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

    ヒノキが優占する二次林において広葉樹の更新を促すために群状間伐を異なる斜面位置で行なった。窒素循環への伐採の影響を明らかにするために間伐から10 年後のリターフォールと堆積有機物を調べた。伐採区のリターフォールの炭素量とヒノキ落葉の炭素・窒素量は対照区より低かった。更新木に高木・亜高木層の広葉樹が多かった斜面中部と下部の伐採区では対照区よりも広葉樹落葉の炭素・窒素量は大きく,リターフォールのCN 比は低かった。更新木に低木層の広葉樹が多かった斜面上部の伐採区では広葉樹落葉の炭素・窒素量とリターフォールのCN 比に対照区と差異は認められなかった。伐採区では対照区より堆積有機物の炭素・窒素量は低く,平均滞留時間は短かった。広葉樹落葉の窒素量が多いほどリターフォールのCN 比は低く,リターフォールのCN 比が低いほど堆積有機物の滞留時間が短い傾向を示した。伐採区での堆積有機物の滞留時間の低下は中部と下部で大きかったが,上部では小さかった。堆積有機物の分解における伐採から10 年後の各斜面位置の変化は,斜面傾度による元々の土壌肥沃度の違いというよりも,更新木の樹種構成に影響を受けていることが示唆された。

  • 稲垣 善之, 宮本 和樹, 伊藤 武治, 北原 文章, 酒井 寿夫, 奥田 史郎, 野口 麻穂子, 光田 靖
    原稿種別: 論文
    2015 年 24 巻 2 号 p. 11-18
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー
    森林生態系において樹冠葉量を正確に推定する簡易手法の開発が求められている。これまでの研究で,生枝下断面積(AB)と樹冠葉量は,森林の管理状態に関わらず高い相関関係を示しパイプモデルが成り立つことが明らかにされた。また,生枝下断面積を樹高(H),生枝下高(HB),胸高断面積(A1.3)から簡易に推定する手法が提案された。この二つを組み合わせた簡易手法を高知県の3地域に当てはめ有効性を明らかにした。生枝下断面積をA1.3[(H-HB)/(H-1.3)]から推定した結果,傾きが1に近い値を示す共通の直線式で推定することができた。樹冠葉量をA1.3やH×A1.3から推定した場合には,地域によって回帰直線の傾きや切片に差が生じた。樹冠葉量をABやA1.3 [(H-HB)/(H-1.3)]から推定した場合には,すべての地域で回帰直線の傾きが1に近い値を示し,地域によって切片に差が認められた。これらの結果は,生枝下断面積あたりの樹冠葉量は地域ごとに一定の値を示し,パイプモデルが成り立つことを示唆する。既往の研究を含めた6地域において生枝下断面積あたりの樹冠葉量は,年平均気温が高い地域で大きい傾向が認められた。
  • 𦚰田 健史, 松下 幸司
    原稿種別: 論文
    2015 年 24 巻 2 号 p. 19-27
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

    野球用木製バット(以下、バット)の材種と流通の現状と変遷を明らかにするため、国内主要バット工場6 社への聞き取り調査及び文献調査を実施した。材種に関しては、1979 年に国内製造されたバットはほぼ全量が北海道産材であったが、2005 年頃を境に、北海道産アオダモから北米産・中国産メイプル、中国産モウソウチクへと移行し、現在は外材が少なくとも約70%を占めていると推計される。流通に関しては、以下の点が明らかになった。外材の増加により、1985 年に比べ、北海道のバット材工場数が激減した。バット工場については、メーカーの下請けを維持する工場とメーカーの下請けから脱却する工場の二極化が起こっている。さらに、1985 年には、国内で加工・製造されていたバットが、現在では、バット材加工の多くが海外へと移行し、バット製造工程の一部も中国へ移転し始めていることが明らかになった。また、販売方法としては、インターネット販売が新たに登場した。このような状況で北海道産アオダモによるバット生産を継続するためには、アオダモの育成だけではなく、原産国表示によるブランド力の維持も重要ではないかと考える。

  • 高橋 絵里奈, 高橋 さやか, 竹内 典之
    原稿種別: 短報
    2015 年 24 巻 2 号 p. 29-33
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

    樹冠投影図の作成や樹冠直径など、樹冠の水平方向の広がりを測定する方法としては、航空写真を用いた計測や林内での目測が一般的である。しかし、それらの方法の正確度や精度は数m から数十cm 程度と推察される。林内において、非破壊で樹冠の水平方向の広がりを測定するには、任意の方向の手の届かない上方にある枝先の鉛直下を特定する必要がある。そこで、地上で枝先の鉛直下を特定する樹冠測定具「天望鏡(てんぼうきょう)」を開発した。天望鏡の正確度と精度を検証するために、手の届かない高さ(4.45m)に設定した目標をランダムに移動させて100 回測定し、天望鏡を用いた地上での計測値と4.45m での実測値を比較した。その結果、計測値と実測値との差は-1cm から4cm の範囲で、平均値は1.8±1.0cm であった。従って、計測値の正確度は1.8cm と正のバイアスがかかっていたものの、手の届かない高さの目標の鉛直下を±1.0cm の精度で測定することが可能であることが明らかとなった。

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