森林生態系において樹冠葉量を正確に推定する簡易手法の開発が求められている。これまでの研究で,生枝下断面積(A
B)と樹冠葉量は,森林の管理状態に関わらず高い相関関係を示しパイプモデルが成り立つことが明らかにされた。また,生枝下断面積を樹高(H),生枝下高(H
B),胸高断面積(A
1.3)から簡易に推定する手法が提案された。この二つを組み合わせた簡易手法を高知県の3地域に当てはめ有効性を明らかにした。生枝下断面積をA
1.3[(H-H
B)/(H-1.3)]から推定した結果,傾きが1に近い値を示す共通の直線式で推定することができた。樹冠葉量をA
1.3やH×A
1.3から推定した場合には,地域によって回帰直線の傾きや切片に差が生じた。樹冠葉量をA
BやA
1.3 [(H-H
B)/(H-1.3)]から推定した場合には,すべての地域で回帰直線の傾きが1に近い値を示し,地域によって切片に差が認められた。これらの結果は,生枝下断面積あたりの樹冠葉量は地域ごとに一定の値を示し,パイプモデルが成り立つことを示唆する。既往の研究を含めた6地域において生枝下断面積あたりの樹冠葉量は,年平均気温が高い地域で大きい傾向が認められた。
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