日本の林業事業体の収益性について、様々な作業コストと、木材品としてのパフォーマンスを明確に分離して議論した。林業のコストには、素材生産コストと造林・保育コストが存在する。素材生産コストは丸太価格の中に含まれ、機械化を進めることで削減可能であるが、安全面を犠牲にしてはならない。日本の造林-保育コストは世界の中でも極めて高く、優良な苗の利用や下刈り削減技術の開発が重要である。木材商品としてのパフォーマンスは、土地生産性の指標となる平均連年成長量(MAI)の高い立地を選択して林業を行なう事で向上することになる。また製材品や丸太等に高い付加価値を見いだせればパフォーマンスは向上する。林業の収益性を上げるためには、デジタル技術を十分に活用し、コストとパフォーマンスの両面から対応していくことが鍵となろう。
本研究の目的は、地域スケールでスギ人工林の樹高成長を定量評価し、高精度な樹高推定マップを作成するための手法を開発することである。モデル地域において、ALSから取得した樹高データを応答変数、林齢、気候要因、地形要因を説明変数として機械学習の手法を用いて定量評価した。いずれの地域でもデータ特性や考慮されていない要因により誤差があったものの、バイアス補正後、樹高は高い精度で推定できた。規定要因の重要性は地域間で大きく異なっていた。開発したモデルを活用し、林齢20から100年生のスギ人工林の推定樹高を予測し、マッピングした。推定樹高のパターンは、規定要因の重要度の違いを反映し、地域によって異なっていた。場所ごとの推定樹高を評価し、将来の生産性を科学的に予測することは、それに応じた科学的な林業管理の検討を可能にするだけでなく、森林資源の持続可能で有効な利用にもつながる。
一部の原木市売市場において相対取引を増加させるなどの商社化と呼ばれる変化が報告されている。その中でも販売形態の変化要因について明らかにすることを目的に鳥取県内の3原木市売市場と鳥取県森林組合連合会(県森連)を対象に聞き取り調査を行った。鳥取県内のA材需要の低下とB材C材需要の拡大に対して、I市場と県森連は市売の縮小を行う一方で、協定販売によってB材とC材の取り扱いを増加させていた。それに対し、Y市場とK市場は販売形態の変化は小さかった。Y市場はA材からC材まで集積する木材工業団地に所在し、供給体制についても協同組合が整備されていることからA材の取扱量を保つことができており、かつ県内外の複数の大口の需要者が安定していたことから変化の必要性が低かったためと考えられる。K市場は集荷圏の狭さによる集荷力不足から交渉力が不利であり、B材C材に対応する必要性が高くなっていたものの、相対取引への取り組みは困難であったと考えられる。原木市売市場において需要の変化は販売形態を変化させる要因となり得るが、それに加えて十分な集荷力を背景とした交渉力が販売形態の変化の必要条件と考えられる。
森林の整備・管理活動の一つとして,ボランティアによる森林保全活動が挙げられる。この活動の主体の約半数は65歳以上の高齢者であり,今後の活動の維持・継続が課題であるといえる。本研究では,東北の中山間地域において実施されている森林保全活動を対象とし,アンケート調査を実施することで,過疎・高齢化が進む地域における森林保全活動が,地域住民に対してどのような負担をもたらすのかを分析し,今後の持続可能性について検討することを目的とした。その結果,負担を感じると回答した人は有効回答のうちの40.4 %と半数以下に留まったものの,負担の詳細に関する設問では高齢化による身体的な負担の増加や,地域からの参加者の減少に伴う一人当たりの負担の増加,義務感による精神的負担が明らかになった。一方で,先行研究において示されていた当該運動の地域づくりという側面について言及する回答もあり,地域において当該運動は「負担」としての側面と「地域づくり」としての側面をもつことが明らかになった。「負担」と「地域づくり」という当該運動の両義性を踏まえ,今後は地域住民の多様な負担を軽減することで運動を継続することができる可能性が示唆された。
林分収穫表に記載された材積は,特に高齢級の広葉樹林のデータが乏しい。そのため,林分収穫表の値と広葉樹林の実測値との差を明らかにすることを目的とし,6〜23齢級の暖温帯コナラ林,アラカシ林等7箇所を対象に,幹材積量の調査を行った。各林分で,バックパック型の地上LiDAR(LA03)を用い,10m×10mの調査区における樹木の胸高直径と樹高を測定し,大阪府の林分収穫表の値と比較した。その結果,LA03による平均樹高は,航空レーザー測量とおおむね同等の値を示しており,データの精度に支障はないことが示唆された。現地調査で得られた幹材積量は,大阪府の既存の林分収穫表の値よりも一貫して高い値を示した。この結果は,広葉樹林が6齢級以降も資源量が増大していることを示唆しており,資源活用や二酸化炭素吸収量算定においても重要な情報と考えられる。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら