1) 千葉県下でアワビ蓄養を行なっている仲買業者39名に面接し, こずみについて聞取り調査を実施し, またこずみ現場の調査を行なって次の結果を得た。
2) 1967年現在, こずみが行なわれている地域は安房郡白浜町および同千倉町であり, こずみは地域的に限定されたアワビの蓄養方法である (図1)。
3) こずみを行なっている業者数は白浜地域で8名 (こずむ平かご数約310), 千倉地域で5名 (約160) の計13名である。
4) 平かごは底面積ほぼ1m
2, 容積約0.4m
3の竹かごで, この中にクロの場合100-120kgを収容して蓄養する。こずみはアワビを収容した平かごをほぼ最干潮線付近の海底の凹地に置き, 平かごの周囲に転石を積み囲んで固定して蓄養する方法である (図2, 4)。
5) 夏期大潮時には, こずみ場の水質は潮汐に伴って変化が著しく, 低潮に向って水温・pH・溶存酸素量が上昇し, 塩分量は低下する。上潮時には外海水の流入によって, 水温・pH・溶存酸素量が低くなり, 塩分量は高くなる (図5)。
6) こずみ期間は普通約3カ月までで, その間のアワビの重量減少率は約10%と考えられる。こずみ期間が長くなる程死亡率が高くなる傾向を示す (表5, 図6)。
7) 白浜千倉地域にこずみが発達した理由を地形条件および仲買業者の経営特性から考察した。
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