水産増殖
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22 巻, 3-4 号
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  • 野村 忠綱
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 87-92
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    熊本県有明海沿岸のノリ漁場において, 気温, 水温とひび張込数がノリのひび当り生産枚数に及ぼす影響を主成分分析と重回帰の二つの手法を組合わせて用い検討し, 次のような結果を得た。
    1) 18漁協中17漁協において, 日平均気温の11月の平均値 (A) , 日平均気温の11月と12月の月平均値の差 (B) , 日平均気温の12月と1月の月平均値の差 (C) 日最高気温の月平均と水温の月平均値の差を11月と12月について求め両者を平均した値 (D) のおのおのが小さいほどひび当りノリ生産枚数は多くなる。
    2) 15漁協においてひび張込数が多くなるほどひび当りノリ生産枚数が少なくなる。
    3) 既報1) において気温, 水温の各要因のうち, (A) , (B) , (D) の値は小さいほど (C) の値は大きいほど不知火海奥部のひび当りノリ生産枚数が多くなるという記述を (A) , (B) , (C) は小さいほど, (D) は大きいほどひび当りノリ生産枚数が多くなると訂正した。
    4) 得られた重回帰式によりこの海域の最適ひび張込数を26×104枚と推定した。
  • 三浦 昭雄, 伏屋 満
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 93-100
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    1) ナラワスサビノリの養殖における芽変り現象と栄養繁殖性について, 1973年度に千葉県木更津市牛込において膳葉標本の観察, 葉長と葉幅の相対関係, 着生密度, 葉長組成などの時期的変化によって追求した。
    2) 研究材としてもちいたナラワスサビノリの秋芽網は, スサビノリの侵入混生によって芽変りしたことが確認された。
    3) ナラワスサビノリとスサビノリとの混生集団では, 葉長と葉幅の分散図および葉長幅比の度数分布図では連続的な変化を示して, 両品種は一つの集団としてしかみられなかった。
    4) 本研究材料では, 着生密度は, 網糸10cmあたり最大2, 000~5, 000個体に達した。また着生密度は漸次増大したが, 一定期間後に急激に増大することはなかった。
    5) 葉長組成は, 摘採期以前には, ほぼ正規型を, 摘採がはじまってからは正規型, L型およびそれらの複合型を示して激しく変動したが, いわゆる双峰性分布はみられなかった。
    6) 最小葉長群 (0.025~0.04mm) は最初の試料から最後の試料まで続いてみられた。
    7) 正規型 (複合型を含む) 分布の最頻値は, 一定期間後に0.25~1mmを示した以後最後までほぼ一定していた。
    8) 養殖ノリの着生密度と葉長組成の時期的変化は, 栄養繁殖をおこなう種類でも単胞子の放出期間と放出量とによって異なる。
    9) 本研究結果から, ナラワスサビノリの栄養繁殖性は, スサビノリとは明らかに相異するものであると考えられた。
  • 加藤 孝, 山田 毅, 倉掛 武雄
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 101-104
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    (1) ヒロハノヒトエグサの人工採苗用種苗器として, 粗面塩ビ板のかわりに, ポリエチレン粗面糸を使用した。
    (2) 同粗面糸は幅約500μあり, 遊走嚢の付着と生長に支障を来たさない。
    (3) 接合子付けが簡単で, その後の培養も取扱いや検鏡に便であり, 充分種苗器として利用できる。
    (4) 今回は恒温培養を主体としたが, 遊走子嚢の生長には常温でも照度, 明期の調節により培養が可能である。
    (5) のり網への採苗においても, 室内, 野外共に取扱いに便利である。
    (6) ポリエチレン粗面糸を種苗器とする場合, 塊状とするか, 枠による巻付式にするか, また大量培養の場合, タンク培養をどのような形にするかは今後さらに検討したい。
  • 坂井 英世
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 105-109
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    (1) 内部炉過循環式飼育槽を用いて, 健全な稚アワビを長期間育成できる技術を研究するために, 昭和46年8月から47年5月まで, 飼育水に塩化カルシウムを1g/lを添加して飼育実験を行なった。
    (2) 塩化カルシウム添加により飼育した貝の殻幅は, 無添加で飼育した貝より増加する傾向が現われた。これは外套膜上皮細胞が塩化カルシウムを同化して, 炭酸カルシウムの分泌を促進し, 殻縁部を成長肥大したものと思われる。
    (3) 塩化カルシウム添加により飼育した貝は, 無添加貝に比較して, アラゴナイトの結晶板の表面を著しく粗くして真珠光沢を失ない, さらに結晶板周囲の境い目が, ところどころ深い穴と溝を形成した。
  • 木村 知博
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 110-119
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    1) 広島湾, 福山湾周辺域において, 流入ならびに降水によって添加される淡水の海域における滞留・移流について, 成層期 (5~9月) , 循環期 (10~4月) に区分して検討した。
    2) 広島湾北部の淡水補給量の75%は太田川に依存している。広島湾西部でも75%が錦川, 小瀬川に依存しているが, この海域へ直接流入するものの他に, その約1.3倍の淡水が広島湾北部からの移流で補給されている。
    3) 海域の淡水現存量に対する海域外への1日当り淡水移流率 (%) は, 全期間平均で, 呉湾0.6, 広島湾北部3.4, 広島湾西部1.1, 広島湾南部1.6, 広島湾全域で0.9と推定された。成層期では循環期に比して移流率が高く, 淡水の特性としての成層による水平拡散の促進が考えられる。循環期の淡水移流率は海水交換率に近似してくるものとみられる。
    4) 各海域の淡水滞留日数 (Y: 淡水現存量/1日当り淡水補給量) と, 1日当り淡水補給量 (X) の関係は, Y=aX-bの関係で示される。海水の交換性の低い海域でb値は小さく, 呉湾で0.375, 広島湾北部で0.378, 広島湾全域で0.609, 福山湾で0.692となる。a値は対象とした海水容量, 淡水率, 淡水補給量等で変化する。
    5) 短期間の淡水移流率は, 風向・風力の影響も大きく, 昭和36年夏の広島湾北部海域での調査によると, 上層水塊の1日当り移流率は3~15%の範囲で, その変化のかなりの部分を占めているものとみられた。
  • 中期餌料としてのアサリ肉の効果
    平田 満, 藤田 忠勝, 浜田 盛治, 永田 房雄
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 120-123
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    1.マダイ種苗養成の中期餌料として, アサリ, エビ, アミ, 魚肉を処理したものを与え, マダイ稚魚 (8~12mm) の摂餌行動を観察した。
    2.これらの餌料のうち, 稚魚が最も良く摂餌行動を示すのは大きさが適当で, 浮遊時間の長いアサリ肉であった。しかし, アサリ肉は単独で与えると成長, 歩留りが悪かった。
    3.アルテミアとアサリ肉の混合投与により成長が促進され, アルテミア単独投与で起こる大量へい死を防止することと, 歩留りを良くすることができた。しかし病気にかかりやすい欠点や, 奇形が多発する傾向があった。
    4.コペポーダ, アサリ, アルテミアを混合投与することによって, はじめて病気に強く, 体長の揃ったマダイ稚魚を得ることができた。
  • 飯倉 敏弘
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 124-127
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    1) クルマエビの人工種苗 (体長9~15mm) の流れに対する行動と耐流性について実験をおこなった。
    2) 稚仔の流れに対する反応は同じクルマエビ属のP.duorarumと同じような傾向がみられた。
    3) 稚仔は潜砂することによって, 水中を遊泳する時よりも大きな流速に耐えて位置の保持ができる。
    4) 稚仔の潜砂可能な0.25mm程度の砂が移動をはじめる平均流速は30cm/sec程度であり, これ以上の流速になると砂の移動のため稚仔が潜砂しても強制的に移動させられると考えられる。
  • 1972年夏期における成体型の昼夜移動と傘径の関係について
    安田 徹
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 128-134
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    1972年の7月21日10時から翌22日の10時までの間, 福井県浦底湾口西部沿岸において, プランクトンネット (口径100cm, 網目5mm) の表面, 3, 7, 15mの各層同時水平曳きをおこない, ミズクラゲAurelia auritaの昼夜移動と時刻・水深別の傘径との関係を調査し, 下記の結果を得た。
    1) クラゲは, 日中10時には7mの中層, 12~14時には10m層以下の底層に主に分布した。16時以後から中層の出現率が増加し, 日没前の18時には同じ層の出現率が60%以上に達した。日没 (19: 00) から日出 (02: 00) までの間には, 60~80%のクラゲが底層で採集されたが, その後9時30分には, その主な分布層はふたたび中層へと変化した。
    2) 本種の深浅移動にもっとも関連の深かった要因は, 今回も水中照度であったが, 海面に低かん水 (17‰以下) が存在した場合には, その浮上が妨げられるものと考えられる。
    3) 今回採集されたクラゲは, 2~22cmの範囲内にあり, 越冬群 (14m以上) と当年発生群 (13cm以下) の2群が混在していた。前者の出現率は, 日中の11・14時には底層で, 日没前の16時には中・表層でそれぞれ高くなる傾向がみられた。
  • 鈴木 亮, 山口 元吉
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 135-139
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    1) ドジョウの雌親に, ゴナトロピンを種々の量注射して後, 種々の水温に保ち, 放卵魚率, 放卵が起こるまでに要する時間, 卵の受精率やふ化率を調査した。
    2) 注射後親魚を収容する際の水温が高い程, 放卵魚率の高い傾向がみられ, 25℃以上では, 体重1g当り5.0I.U.付近が適性注射量であるものと思われる。
    3) 注射後親魚を収容する際の水温と, 放卵が起こるまでに要する時間との間には相関がみられ, しかも20℃以下では, 個体による時間のバラツキがきわめて大きく, 25℃以上では, そのバラツキが小さかった。
    4) 20℃と25℃に保った親魚から得た卵は, 15℃と30℃に保った親魚からの卵よりも高い受精率やふ化率を示した。
    5) 以上の結果から, ドジョウの人工採卵に際して, ホルモン注射後水温を25℃前後に保つことが, もっとも得策であるように思われる。
  • 三好 勝
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 140-143
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    1.ウナギを海水から淡水へ, また淡水から海水ヘー度に移行させた場合, 環境に適応するまでに, 水分の吸収や脱水現象がおこり一時的に体重変化がおこる。この時間的変化について実験した。
    2.海水飼育材料は3カ月以上地下海水で飼育していたもので稚魚は平均体重0.43g, 養中は15.3g, 養太は195gのものである。淡水飼育材料は地下海水飼育後15日間淡水飼育を行なっていたもので, 稚魚は平均体重0.44g, 養中は13.5g, 養太は187.4gのものである。
    3.海水から淡水へ移した場合, 養太は2時間後に1%, 養中は3時間後に2%, 6時間後に5%増重する。このように魚体が大きいほど増重率が小さい。一方稚魚のみは淡水へ移すと同時に減重を始め時間の経過とともにさらに減重した。多分減重のまま斃死するものと推察される。
    4.淡水から海水へ移した場合, 稚魚は2~3日目に84%に減重し養中は2日目に93%に減重し, その後両者とも次第に回復している。養太はややおくれて3~4日目に96%に減重している。このように魚体が大きいほど減重し始めるのがおそく減重率も小さい。これは魚体重の増加につれて浸透圧調節機能が大きくなるものと思われ, 生残率が高くなる傾向に符号している。
  • 三好 勝
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 144-150
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    1.漁業餌料用としてのクルマエビの養成を目的として, 生簀式と箱網式の両者について, その養成成績の比較を行なった。
    2.試験は昭和49年6月7日平均体長1.22cm, 平均体重0.013gのものから始め8月14日終了時には生簀式4cm, 0.86g。箱網式6.7cm, 4gとなった。また一尾当り平均増重倍率も生簀式68, 箱網式319であり箱網式が成長がよかった。
    そしてこの箱網式の成長速度は広島県における粗放的養成や, 愛媛県における放流の場合の成長速度とほぼ同じである。
    3.試験当初の体長変異係数は0.13であったが終了時には生簀式0.18, 箱網式0.13であり, 箱網式がバラツキが小さい。
    4.減耗率は生簀式97%, 箱網式96%といずれも高率でこの原因としては密殖による共食いが考えられる。
    5.餌料係数は箱網式は13で一般の粗放養成と同じ値であるが, 生簀式は92と異常に高い。
    この原因は落下してマット内に入った餌の摂餌ができないからだと考えられる。
    6.体長と肥満度との関係は生簀式 (相関係数0.4) の場合余り関係が認められないが, 箱網式 (相関係数0.63) では体長が大きくなる程肥満度も大となる傾向がかなり認められる。
    7.生簀式の単位面積当りの生産量は8月14日平均体重0.86gで43g/m2であった。
    一方箱網式の単位面積当り生産量は8月14日平均体重4gで240g/m2であったが, 食用エビまで養成すれば350g/m2程度までになるものと思われ一般の粗放的養成の場合と同一成績と思われる。
    8.生簀式と箱網式とでは成長度, 体長のバラツキ程度, 同じ体長の場合の肥満度のバラツキ具合, 餌料係数, 増重倍率, 総生産量でいづれも箱網式がすぐれている。この原因として生簀式はエビがもぐれないためのストレスに加えマット内へ落下した餌は捕食できない。これに対し箱網式ではエビは潜砂が可能で常時, 砂泥中に落下した餌料や天然餌料を摂餌できたからだと考えられる。
  • 西内 康浩
    1975 年 22 巻 3-4 号 p. 151-152
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
    殺虫剤4種類すなわちBPMC, MTMC, EPN, PAPを用い, 土壌の混入による影響および薬剤処理後所定の日数を経過した場合におけるヒメダカに対する毒性消失の程度を調査した。その結果BPMC, EPNおよびPAPでは土壌混入 (15日後) により, 毒性消失のかなり顕著な傾向が認められた。しかし, 土壌を混入しない試験区では薬剤処理後の経過日数による毒性消失の程度は低いことがわかった。
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