1.漁業餌料用としてのクルマエビの養成を目的として, 生簀式と箱網式の両者について, その養成成績の比較を行なった。
2.試験は昭和49年6月7日平均体長1.22cm, 平均体重0.013gのものから始め8月14日終了時には生簀式4cm, 0.86g。箱網式6.7cm, 4gとなった。また一尾当り平均増重倍率も生簀式68, 箱網式319であり箱網式が成長がよかった。
そしてこの箱網式の成長速度は広島県における粗放的養成や, 愛媛県における放流の場合の成長速度とほぼ同じである。
3.試験当初の体長変異係数は0.13であったが終了時には生簀式0.18, 箱網式0.13であり, 箱網式がバラツキが小さい。
4.減耗率は生簀式97%, 箱網式96%といずれも高率でこの原因としては密殖による共食いが考えられる。
5.餌料係数は箱網式は13で一般の粗放養成と同じ値であるが, 生簀式は92と異常に高い。
この原因は落下してマット内に入った餌の摂餌ができないからだと考えられる。
6.体長と肥満度との関係は生簀式 (相関係数0.4) の場合余り関係が認められないが, 箱網式 (相関係数0.63) では体長が大きくなる程肥満度も大となる傾向がかなり認められる。
7.生簀式の単位面積当りの生産量は8月14日平均体重0.86gで43g/m
2であった。
一方箱網式の単位面積当り生産量は8月14日平均体重4gで240g/m
2であったが, 食用エビまで養成すれば350g/m
2程度までになるものと思われ一般の粗放的養成の場合と同一成績と思われる。
8.生簀式と箱網式とでは成長度, 体長のバラツキ程度, 同じ体長の場合の肥満度のバラツキ具合, 餌料係数, 増重倍率, 総生産量でいづれも箱網式がすぐれている。この原因として生簀式はエビがもぐれないためのストレスに加えマット内へ落下した餌は捕食できない。これに対し箱網式ではエビは潜砂が可能で常時, 砂泥中に落下した餌料や天然餌料を摂餌できたからだと考えられる。
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