クロメ・アラメの種苗培養・中間育成・本養成について1970年・1974-1976年の4か年にわたって, 西彼杵郡三和町川原漁場および島原市猛島漁場において実験を行なった。特に1974年10月に採苗したクロメ・アラメ種苗は延縄式の方法によって3年体まで継続養成して葉体の成育過程・葉体各部位の生長・単位当り現存量・生育密度などについて調べ次のことがわかった。
1) 芽胞体の発芽は水温20℃の培養開始で最も早く20日でみられ, 25℃の開始では30日, 16℃の低水温の開始では最も遅れ40日を要した。17℃の恒温では25日で発芽がみられた。
2) 幼芽の生長は沖出し時に芽胞体の大きさ30-190μの範囲では, 沖出し水温19℃で最も早く, それ以下の沖出し水温では段階的に生長が遅れた。
3) 1年目のクロメ・アラメの体長は, 冬-春季に生長し, 夏の終りから秋季にかけて葉状部の末枯れが著しく体長は短縮した。
4) 1年体の再生長は両者とも11月頃からはじまり, 2年目の冬-春季に急速に生長して側葉も次第に数を増した。アラメは2年目の12-1月にかけて茎葉移行部で完全に二又した。
5) 2年目の生長は1年目の生長傾向と相似し, 夏-秋季に末枯れして体長は短縮したが, 生育盛期の4, 5月には両者とも大きく生育し体長50cm, 個体重量230gになった。3年目の4, 5月にはさらに大きく生育し, アラメは体長70cm, 個体重量300-600gになった。クロメは2年目の夏季以降は中央葉は末枯れして体長は短縮し3年目の5月でも34cmにとどまったが, 側葉は著しく伸長し葉幅は70cmになった。個体重量は2年目の1.5倍に増重して300-400gになった。
6) 2年目以降の葉片数の季節変化は両者とも小さく, 常に一定数の葉片をつけており, 夏季の未枯れ期でも古葉の消失を新葉の生成によって補充していると考えられる。
7) 茎長は両者ともあまり伸長がみられず, 2年目の終りから3年目の5月で約9cmで短い。
8) 養成親ロープのクロメの現存量は2年目の5月に6.8kg/m-32本/mでピークに達し, 3年目の4月には7.4kg/m-25本/mとなった。アラメは3年目の5月に4.1kg/m-13本/mであった。
9) 中間育成中のタネ糸上の発芽数は体長2-3mmのときに100-200本/cmであったが, 体長1cmになる頃には著しく減少して10本/cm前後となった。養成にはいってからは親ロープ上に2年目で32-36本/m, 3年目で25本/mの生育がみられた。
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