前報で採卵, ふ化した材料を用い, 生海水を対照区に, 紫外線照射海水を飼育水として, 10トンコンクリート水槽で継続して稚貝飼育を30日間おこない, 下記の結果を得た。
1. 稚貝の飼育期間をとおして, 紫外線照射海水を飼育水としている水槽では, 現象として, 底砂の濁れが少ない, はい上り稚貝数が少ない, 原生動物が少なく, 細菌による残餌の赤変がみられなかった。
2. 生海水を飼育水とした水槽では, 飼育日数10日で, ふ化可能卵数から生存率が29.8%と稚貝初期で大きく減耗し, 飼育日数30日で17.1%, 単位面積当り1.9万個/m
2の稚貝の生産であった。
3. 上記に反して, 紫外線照射海水を飼育水とした水槽では, 天然採集卵および親貝から採卵したものとに生存率の差はみられず, また, 飼育口数20日で生存率70.6-93.4%と稚貝初期の減耗がおさえられた。
4. 稚貝の高密な水槽では, 餌不足もあり, 飼育日数25日前後に大きく減耗し, 飼育日数30日における稚貝の生存率は34.0-69.8%であり, 飼育水30トンで228.4万個, 単位面積当りの生産量は8.6万個/m
2であった。
5. 稚貝の成長は, 生存稚貝の密度の高い水槽ほど成長が悪く, 飼育日数30日で平均殻長2.4-2.8mmであった。
6. 稚貝の摂餌率は, 殻長1-2mmの大きさでは, 日に2回の摂餌で体重の80%程度であり, 殻長2-3mm稚貝では50%程度である。
7. 発泡スチロールケースのなかに, 海水を浸したタオルの間に稚貝を敷き, 約10時間輸送をおこなったところ, 殻長3mm以上の稚貝は90%以上生き残った。
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