水産増殖
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29 巻, 1 号
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  • ―高浜原子力発電所の取・排水路における動物プランクトンの活性変化―
    安田 徹
    1981 年 29 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1977年11月7日から1980年8月2日までの間, 高浜原子力発電所の取・排水路でバケツ採水により動物プランクトンを採集して, その直後7回, 24時間放置後8回, 計15回にわたり運動状態から活性を比較・観察し, 排水路における死亡率の推定を試みた。
    また, 一部の代表種を3回にわたり染色して生死判定を行い, 死亡率の地点別変化状況を調べ下記の知見を得た。
    (1) 採集直後の試料を検討すると1978年4月下旬の幼体類の1例を除き, 排水路での死亡率がいずれも高いと結論され, 更に排水路末端に向うにつれて死亡率の増加が認められた。この傾向は染色によって判定した場合でも同様な結果が得られた。
    (2) 動物プランクトンの取水路から排水路末端での死亡率増加はおよそ12.7~38.7%, 平均23.8%と推定された。
    (3) 採集直後の運動状態と染色による判定結果からみて排水路末端に向うにつれて死亡率が増加すること, 更に昇温させない状態と昇温した状態との死亡率の変化状況からも判断して, 上記の死亡率増加は, 昇温よりも主として攪拌・混合等による機械的ショックが, より強く働いていると推定された。
    (4) 24時間放置して飼育した場合では, 特に夏~秋期には取・排水路での影響が採集直後に観察した場合より不明瞭となることがあるので, この方法は不適当と考えられた。
  • 土津井 憲彰
    1981 年 29 巻 1 号 p. 10-12
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
  • (III) 飼育水の水作りと攪拌の効果の検討
    慶徳 尚壽, 升間 主計, 勝山 明里
    1981 年 29 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
  • 数種餌料の摂餌刺激効果および餌料価値について
    梶川 晃
    1981 年 29 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    バイの稚貝と小型貝および大型貝を水槽に収容し, 各種餌料を投入して, 5分以内に摂餌行動を起こした個体数から, バイに対する餌料の摂餌刺激効果を検討した。また, 餌料のうち市販のうなぎ用配合飼料I, 配合飼料II, エビ, ヒレグロを餌として稚貝と小型貝を飼育し, それらのバイに対する餌料価値を検討した。
    1) 供試した餌料で摂餌刺激効果の最も高いものはエビおよびスルメイカ冷凍肉で, 次いでスケトウダラ冷凍肉と生きゴカイであり, ヒレグロ冷凍肉は最も劣った。
    2) 乾燥肉の摂餌刺激効果は同魚種の冷凍肉に比べて低く, 配合飼料とほぼ同程度であり, その煮沸肉はさらに低かった。また, その傾向は個体の大きさに関係なく, ほとんど同じであった。
    3) 飼育当初の摂餌量は摂餌刺激効果に影響されたが, 全飼育期間をとおしてみると, 稚貝の場合の日間摂餌率は配合飼料I区が最も高く, 次いで配合飼料II, エビ, ヒレグロ区の順に高かった。小型貝の場合でも配合飼料I区がヒレグロ区に比べて高く, 稚貝, 小型貝のいずれも配合飼料を良く摂取した。
    4) 稚貝の成長度 (殻長の伸び) は, エビ, ヒレグロ, 配合飼料I, 配合飼料II区の順に低下し, 小型貝の場合でも配合飼料I区はヒレグロ区に劣った。
    5) 餌料効率は, 稚貝の場合にはヒレグロ, エビ, 配合飼料II, 配合飼料I区の順に低く, ヒレグロ区と配合飼料I区の餌料効率には約2倍の差があり, 小型貝の場合でもヒレグロ区は配合飼料I区より2.4倍も優れていた。
    なお, 各餌料とも生存率は100%であった。
  • 飼料タンパク質の消化吸収率
    梶川 晃
    1981 年 29 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    前報の飼育試験に使用した餌料をバイ稚貝に摂取させ, 糞の排泄状態を観察し, 更に摂取餌料および排泄物のN量から, 餌料のみかけのタンパク質消化吸収率を検討した。
    1) 餌の体内滞留時間は, 配合飼料I, IIとも9~98時間, エビ14~30時間, ヒレグロ14~53時間であった。配合飼料は排泄物量も多く, 特に配合飼料Iでは, 摂餌後1日に総排泄量の5割強が排泄された。
    2) 排泄物のN含有率は, 配合飼料Iが最も高かったが4.75~2.39%と日を追って減少した。次いで配合飼料II, ヒレグロの順で最も低いのがエビの1.39%であった。
    3) 各餌料のタンパク質消化吸収率は, 配合飼料Iが60.7%, 配合飼料II79.2%, エビ99.8%, ヒレグロが99.4%で, 予期したとおり, 配合飼料の上記吸収率が低かったため成長が劣ったものと考えた。
  • コイの卵・仔魚および稚魚に対する陰イオン界面活性剤の毒性
    有馬 多恵子, 高橋 耿之介, 川名 俊雄, 若林 明子, 菊地 幹夫
    1981 年 29 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1) 6種の陰イオン界面活性剤を用い, コイ (Cyprinus carpio) の受精卵, 仔魚および稚魚に対する急性毒性を調べた。
    2) LASはABSよりも, またASはアルキル基の炭素数の多いほど致死毒性が強く, 6種の界面活性剤の致死毒性は,
    C16-AS>C14-AS>LAS>C12-AS
    ≧ABS>C10/12-AS
    の順であった。
    3) 卵のLASに対する感受性は発生の初期ほど強かった。
    4) LASおよびABSに対する感受性は卵, 稚魚, 仔魚の順に, C12-ASに対するそれは稚魚, 卵, 仔魚の順に, C14-ASに対するそれは仔魚, 卵の順に弱かった。
    5) C10/12-ASは致死毒性は弱く, ふ化の遅れ, ふ化仔魚のわん曲, 仔魚の横転時間の延長等をひき起こした。
    6) C10/12-ASおよびC12-AS以外は24時間TLm値と48時間TLm値が同じ値であった。
    7) 各界面活性剤の濃度の増加と奇形出現率との間に相関は認められなかった。
  • 放流アカガイの減耗要因について
    高見 東洋, 井上 泰, 岩本 哲二, 桃山 和夫, 中村 達夫, 吉岡 貞範
    1981 年 29 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1) 殻長20~40mmまで育てたアカガイの人工種苗を用い, 放流後の減耗要因を追究するために, 天然アカガイが生息する水深13mの下松市深浦地先および水深21mの光市戸仲地先に放流して潜水による追跡調査を実施した。
    2) 放流施設は, 両場所とも海底に1辺10mの区画を4面作り, m2当たり50個, 20個, 10個および5個の放流密度とした。
    3) 下松市深浦地先には, 平均殻長31.3mmの1年貝を1978年6月2日に, 光市戸仲地先には, 平均殻長37.8mmの1年貝を1978年5月19日に放流した。
    4) 両場所ともに, ヒトデの食害によって1~2ヵ月間で放流貝がすべて死殻となった。しかし, 同場所のかご養殖のものでは, 94~98%と歩留りは高かった。
    5) 底層の水温, 溶存酸素量, 全硫化物等からみた場合, アカガイに悪影響及ぼす環境条件は見出せなかった。
    6) ヒトデの蝟集量は, アカガイの放流密度が高いほど多くなる傾向がみられ, 光市戸仲地先の場合, 最高1m2当たり11.25個体のヒトデが集った。
    7) 蝟集したヒトデは, アカガイを食い尽すと共食いを始め, 腕の1~3本欠損したものが約30%を占めた。
  • 食害生物特にヒトデの駆除効果について
    高見 東洋, 井上 泰, 岩本 哲二, 中村 達夫, 吉岡 貞範
    1981 年 29 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1) 放流したアカガイをヒトデから保護するために, 下松市深浦地先の水深13mの海底にロープで10×10mの放流区画を3面, 2×5mの区画を1面作りヒトデの防除試験を行った。
    2) ヒトデの防除方法は, 区画の外周り等にヒトデ・トラップを設置した区 (北区) , ヒトデ・トラップの他に高さ3mの網によるバリケードを設置した区 (中央区) , テント状に全面を網で覆った区 (西区) , 無防御区 (東区) およびかご養殖区である。
    3) 1980年6月4日にアカガイの人工種苗 (平均殻長32.1mm, 8.5g) を1m2当たり20個の密度で放流し, 環境やヒトデの蝟集と食害状況, アカガイの歩留り等を定期的に潜水等で調査した。
    4) ヒトデは, アカガイを放流するとほぼ一定方向から次第に蝟集し, ヒトデ・トラップによる捕獲量は, 4日連続した調査では1日目が最も多く, 2~3日目は少なくなり4日目には全く捕獲できなかった。一定間隔をおいて調査すると7月上旬をピークに漸増し, 9月に入って減少した。
    5) ヒトデ・トラップを3m間隔で放流区画の外周をとりまき, 更に放流区画のロープ枠上に設置して捕獲することでヒトデの侵入をかなり防止できた。
    6) 高さ3mの囲網は, 完全なヒトデの侵入防止にはならなかった。
    7) ヒトデ・トラップに餌として投入したアサリが, 捕食される状況からヒトデの活動期をみると, 6~7月は特に捕食が活発であったが8月中旬からの捕食量は少なくなった。
    8) 1~2日間といった短期間に引き上げるトラップの餌としては, 魚肉の成績がよく, 長期の場合は, アサリ生貝がよかった。
    9) 蝟集量は, 1日最高106個体で6月4日~10月30日まで27回の調査による合計は, 1, 168個体となった。
    10) アカガイの再捕率は, 148日目 (10月30日) で北区85%, 中央区125%, 西区95%および東区100%であり, ヒトデ・トラップの影響で, 無防御区の東区もヒトデの侵入がかなり防止された。
  • ―特に比成長について―
    大屋 二三, 岡 健司
    1981 年 29 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    新潟県沖合で採集したサヨリの受精卵を, 1975年5月29日から92日間ガラス水槽内で飼育し, その発育過程・死亡・成長を観察した。
    1) ふ化仔魚は全長平均8.1mmで, ふ化直後より餌をとりはじめた。ふ化後6日目には下顎が突出しはじめ, 28日目には体各部は完成してサヨリ特有の下顎の伸長が著しくなった。
    2) 卵黄の吸収される期間は死亡個体は確認されず, ふ化後4日目から7日目にかけて大量のへい死が認められた。
    3) 全長の成長曲線はふ化後30日までロジスチック式TL=37.9/1+e1.30-0.05Dで示され, 体重―全長関係はBW=1.275×10-6TL3.2597で示された。
    4) 比成長ではBL/TL, AL/TLで等比成長, HL/TLで優比成長, MH/TL, AH/TLで劣比成長であった。
    5) 体重減少および死亡個体数の増加から, ふ化後4日目から7日目がいわゆる‘critical periods’とみなせるようであった。
    6) 全長に対する下顎を含まない頭長が強い優比成長から徐々に全長20mm位で等比成長になるものと思われた。
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