水産増殖
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29 巻, 2 号
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  • 杉田 治男, 住田 忠, 小橋 二夫, 出口 吉昭
    1981 年 29 巻 2 号 p. 65-72
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    死亡魚が分解されるとき養魚池水の細菌相および水質に及ぼす影響を稚ゴイを用いて室内水槽で検討し, 次の結果を得た。
    1) 各水槽とも魚体の分解初期にT-COD, D-CODおよび細菌数が急激に増加し, その後漸次減少した。
    2) 止水状態では分解初期にDOが急激に減少したが, 通気および炉過槽を設置した水槽では比較的高い値を保った。
    3) 魚体の分解初期にはPseudomonas属, Moraxella属, Acinetobacter属およびVibrio-Aeromonas群が優勢であったが, 後期にはBacillus属およびClostridium属が優勢になった。
  • 杉田 治男, 住田 忠, 出口 吉昭
    1981 年 29 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
  • 高丸 禮好, 富士 昭
    1981 年 29 巻 2 号 p. 78-87
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    北海道函館湾上磯より採集したヒメエゾボラNeptunea arthriticaの生殖巣についてその相対重量と組織学的観察を行い, 次の結果を得た。
    (1) 生殖細胞形成過程を発育にともなう細胞学的特徴から雌では1) 卵原細胞, 2) 初期卵母細胞, 3) 卵黄形成前期卵母細胞, 4) 卵黄形成後期卵母細胞, 5) 成熟卵に, また雄では1) 精原細胞, 2) 第一次精母細胞, 3) 第二次精母細胞, 4) 精細胞, 5) 精子に区分された。
    (2) 生殖小嚢内にみられる生殖細胞のこのような発達過程を基準として生殖巣の発達段階を放出期, 回復期, 成長期および成熟期の4期に区分した。
    (3) 各発達段階の個体群中に占める割合の季節変化は雌雄によって異なり, 雄は11~1月に成熟期が高率となり, 雌の成熟期がピークとなる2~4月には徐々に減少した。
    (4) 生殖巣指数を生殖巣の軟体部に対する百分比で表わし, その季節変化をみた。生殖巣指数は組織学的に観察した生殖巣発達過程を反映し, 雄では9~10月に, 雌では1~4月に高い値を示した。
  • 内浦湾におけるワカメ養殖試験
    堀 俊明
    1981 年 29 巻 2 号 p. 88-97
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    福井県高浜町内浦湾奥にある関西電力高浜原子力発電所からの温排水が, 養殖ワカメの生長と成熟にどのように影響するかについて, 試験・調査を行った。その結果は次のように要約できる。
    1) 稼動時における同一水深のSt.1およびSt.2とSt.3との平均水温との差は, 水深0.5m層では, St.1とSt.3では3~4℃, St.2とSt.3では1.5~3℃, 2.0, 3.0m層ではSt.1およびSt.2とSt.3とでは1~2℃であった。
    2) 稼動時における水温の日較差は, St.1, 2で3~4℃, St.3で2~3℃に達する日がみられた。
    3) 着生密度は, 水深1.0m以浅ではSt.1, 2, 3の順で, 1.0~3.5m層ではSt.2, 1, 3の順で低かった。
    4) 葉体の生長は, 水深2.0m以浅ではSt.1, 2, 3の順で悪く, それを越えるとSt.1とSt.2とに差がなくSt.3に比べてともに悪かった。
    5) 葉体の成熟は, 水深2.0m以浅ではSt.1, 2, 3の順で良く, それ以深ではSt.1とSt.2とに差がなくSt.3に比べてともに良かった。
    6) 佐渡, 五島, および有明海でのワカメ養殖場と今回の温排水試験域との水温の比較から, 調査水域の平均水温は養殖適水温とみなされる。
    7) 温排水によってワカメの着生密度, 生長, および成熟が受ける影響は, 平均水温の上昇だけではなく, 温度ショックによるものも考えられる。
    8) 養殖ワカメは, 温排水の生物に与える影響を調べる良い指標生物といえる。
    終りに, 今回の調査期間中終始御指導いただいた福井県水産試験場主任研究員安田徹博士に深謝の意を表します。また, 調査に協力していただいた同場前技師宮内幾雄氏と同場技師小松久雄氏に感謝します。
  • フラゾリドン
    古川 一郎, 木村 正雄, 松田 敏生, 柏木 哲, 大野 孝幸
    1981 年 29 巻 2 号 p. 98-108
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    平均体長70mm, 平均体重5gのモジャコを供試魚とし, 魚体重1kg当たり10mgの濃度のフラゾリドンを配合した餌料で飼育した群と薬剤投与をしない群を設定して60日間の飼育実験を行った。結果は次のように要約できる。
    1.実験終了時における供試魚の生残率は対照群の66%に対し, フラゾリドン群は90.9%と高く, 薬剤投与の効果が明らかに認められる。
    2.実験期間中の1日当たりの平均死亡率は対照群の0.69%に対し, フラゾリドン群は0.16%と低い。また死亡率が1%をこす日が前者では17日出現し, 後者では1日にすぎなかった。本剤が供試魚の死亡を抑制する上で効果があったといえる。
    3.死亡率と環境要因の関係を解析し, 後者らの前者に対する寄与率は両群とも25~26%と見積られた。したがって死亡率の主要な原因は環境要因以外の主として飼育管理技術上の問題に帰せられる。
    4.実験水域の環境条件下での対照群の自然死亡率は60日間で8.8%, 1日平均で0.15%と推算され, 人為的原因による死亡率は25.3%, 1日平均0.42%と計算される。フラゾリドン群では自然死亡率2.4%, 1日平均0.04%, 人為均原因による死亡率は6.7%, 1日平均0.11%と計算される。フラゾリドンを投与することによって環境要因による自然死亡率並びに人為的要因を主とした死亡率を4分の1程度に抑制できる。
    5.60日間の成長度を平均体重でみると, 対照群は5.5gから155g, フラゾリドン群は5.1gから210gに増重しており, 明らかに後者の方が高い生長率を示した。
    6.魚体重量 (生産重量) でみると対照群は当初の10.9kgから205kg, フラゾリドン群は10.2kgから381kgに増重し, 前者の1.9倍に達した。
    7.期間中供試魚の取りこんだ餌料量は対照群の381kgに対し, フラゾリドン群は570kgとなった。摂餌量に対する増重量の割合すなわち餌料効率は両群で違いはなく960kgを示した。
    8.フラゾリドンを投与した場合, 魚の食欲が増進し, 結果的に増重が向上したことが明らかにされた。
    9.実験期間中投与された給餌量のうち, 魚体に摂餌された量, 海水中に流失した量およびへい死魚がそれまでに取りこんだ餌料量を計算した。また給餌量1kg当たりの生産重量, 摂餌量1kg当たりの生産重量を計算し, 別表に示した。
    これらのデータはいずれもフラゾリドンの投与効果があることを示している。
    10.実験期間中, 投与したフラゾリドン量は75.3gで, うち32.2gが供試魚によって取りこまれた量で, 魚体重1kg当たりの濃度は4.78mgと計算された。
    以上要約した諸点を総合すると, 本実験水域の環境に類似した条件の下での養魚については本剤を適初に使用することによって, 生産上の損失を軽減させ, 生産高の面で効果をもたらすことが明らかになった。
  • 中川 平介, 笠原 正五郎, 宇野 悦央, 見奈美 輝彦, 明楽 公男
    1981 年 29 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    アユの抗病性に及ぼすクロレラ添加飼料の効果をみる目的で, 配合飼料 (対照区) 並びにクロレラ熱水抽出物を配合飼料に1%添加した飼料 (クロレラ区) で約2ケ月間飼育した上, それぞれ1ケ月半にわたる過密状態での飼育を行い, それらにおける成長, 抗病性, 血清性状などを比較し, 以下の結果を得た。
    (1) 平均体重12.9gのアユをクロレラエキスを添加した飼料により2ケ月間飼育した結果は, 体重増加率, 飼料転換効率共に対照区より劣り, 成長に関する限り負の効果を示した。
    (2) ビブリオ菌浴実験の結果, Vibrio anguillarum 103個/mlの濃度でクロレラエキス添加の効果が現われ, 菌浴後の死亡率が低かった。
    (3) 過密状態で飼育した結果, 対照区にくらベクロレラ区ではチョウチン病の発生が遅い上, 累積死亡率も著しく低く, 明確にクロレラエキス添加の効果が現われた。
    (4) 過密状態で飼育したアユの血清性状は, クロレラ区ではタン白質, 脂質量が高く, 過酸化脂質含有量は低いという結果を得た。グロブリン画分のリポタン白質量が対照区と比較して多いことを認めた。
    (5) クロレラエキスの投与により, アユに成長の抑制のような何らかの生理的変化をもたらし, その結果抗病性が付与されたと考えられる。
  • 堀木 信男
    1981 年 29 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1979年6月に紀伊水道およびその外域の18点で, MTDネットによる10~50m層までの多層曳によって採集された魚卵・稚仔魚を材料として, 垂直分布について検討した。
    1.15種類 (不明種が8種類以上) , 19, 808個の魚卵, 31種類 (不明種が数種類) , 24, 030尾の稚仔魚が採集された。
    2.各採集層における最優占種は, 魚卵が全層でトカゲエソ, 稚仔魚が50m層を除く各層でマルアジである。
    3.個々の魚卵・稚仔魚の垂直分布を次の4つのタイプに類型化した。
    A型: 中層に最も多く分布する型であり, ウルメイワシ, トカゲエソ, タチウオなどの卵, カタクチイワシ, エソ科, ハダカイワシ科, マルアジ, ネズッポ属などの稚仔魚が含まれる。
    A'型: 中層に集中して分布する型であり, コノシロ卵, ヒイラギ属, クモハゼ科などの稚仔魚が含まれる。
    B型: 中層から底層にかけて多く分布する型であり, カタクチイワシ卵, タチウオ, アカタチ, ワニギスなどの稚仔魚が含まれる。
    C型: 底層に多く分布する型であり, ワニギス卵, ウルメイワシ, サイウオなどの稚仔魚が含まれる。
    4.一般的に, 産出された魚卵は卵発生の中期に浮上し, そして, 後期 (ふ化直前) には沈降する傾向が認められる。
    5.稚仔魚はそれぞれ種独自の好適な環境を選択して移行 (浮上あるいは沈降) しているものと推察される。
  • 産卵前雌雄隔離法による採卵時期の調整
    田畑 和男, 柄多 哲
    1981 年 29 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    “産卵前雌雄隔離法”の要点を整理し, 以下に示す。
    1) 雌雄隔離開始時期は, 雌雄同一池放養時期の1ケ月前で所期の目的を達しうるものと考えられる。
    2) 雌雄同一池放養時の決定は, GIが20%に近ずく頃を目標にして調査を行い, GIが22~23になる期日を推定する。
    3) 雌雄同一池放養後の水温降下処理の併用は必要ない。
    4) 雌雄同一池放養から初回採卵までは中2日をおき, 初回採卵は3日目から始めるのが良いようである。
    5) 排卵確認の間隔は, 連日採卵をすることによって, 群採卵率, 平均採卵量とも低下する傾向があるので, 隔日に全雌について実施するのが良い。
    6) 底面の明るい池で飼育すると“サビ”が喪失し, 排卵率の低下をまねくので, 飼育に使用してきた池をそのまま利用するのが良い。
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