平均体長70mm, 平均体重5gのモジャコを供試魚とし, 魚体重1kg当たり10mgの濃度のフラゾリドンを配合した餌料で飼育した群と薬剤投与をしない群を設定して60日間の飼育実験を行った。結果は次のように要約できる。
1.実験終了時における供試魚の生残率は対照群の66%に対し, フラゾリドン群は90.9%と高く, 薬剤投与の効果が明らかに認められる。
2.実験期間中の1日当たりの平均死亡率は対照群の0.69%に対し, フラゾリドン群は0.16%と低い。また死亡率が1%をこす日が前者では17日出現し, 後者では1日にすぎなかった。本剤が供試魚の死亡を抑制する上で効果があったといえる。
3.死亡率と環境要因の関係を解析し, 後者らの前者に対する寄与率は両群とも25~26%と見積られた。したがって死亡率の主要な原因は環境要因以外の主として飼育管理技術上の問題に帰せられる。
4.実験水域の環境条件下での対照群の自然死亡率は60日間で8.8%, 1日平均で0.15%と推算され, 人為的原因による死亡率は25.3%, 1日平均0.42%と計算される。フラゾリドン群では自然死亡率2.4%, 1日平均0.04%, 人為均原因による死亡率は6.7%, 1日平均0.11%と計算される。フラゾリドンを投与することによって環境要因による自然死亡率並びに人為的要因を主とした死亡率を4分の1程度に抑制できる。
5.60日間の成長度を平均体重でみると, 対照群は5.5gから155g, フラゾリドン群は5.1gから210gに増重しており, 明らかに後者の方が高い生長率を示した。
6.魚体重量 (生産重量) でみると対照群は当初の10.9kgから205kg, フラゾリドン群は10.2kgから381kgに増重し, 前者の1.9倍に達した。
7.期間中供試魚の取りこんだ餌料量は対照群の381kgに対し, フラゾリドン群は570kgとなった。摂餌量に対する増重量の割合すなわち餌料効率は両群で違いはなく960kgを示した。
8.フラゾリドンを投与した場合, 魚の食欲が増進し, 結果的に増重が向上したことが明らかにされた。
9.実験期間中投与された給餌量のうち, 魚体に摂餌された量, 海水中に流失した量およびへい死魚がそれまでに取りこんだ餌料量を計算した。また給餌量1kg当たりの生産重量, 摂餌量1kg当たりの生産重量を計算し, 別表に示した。
これらのデータはいずれもフラゾリドンの投与効果があることを示している。
10.実験期間中, 投与したフラゾリドン量は75.3gで, うち32.2gが供試魚によって取りこまれた量で, 魚体重1kg当たりの濃度は4.78mgと計算された。
以上要約した諸点を総合すると, 本実験水域の環境に類似した条件の下での養魚については本剤を適初に使用することによって, 生産上の損失を軽減させ, 生産高の面で効果をもたらすことが明らかになった。
抄録全体を表示