1.集約および粗放池で養殖した成熟サイズ (年齢) にある池中養成ウシエビ (40~110g) の成熟・産卵周期と脱皮周期を眼柄処理したものと無処理のものを比較して調べ, それぞれの成熟 (生殖) と脱皮のリズムを明らかにした。さらに, 成長に伴う各卵巣の成熟度 (生殖腺指数, GSI) や色調を調べるとともに, 組織学的に観察した。同時に, 供試エビの経歴の比較と無処理での最小産卵サイズを調べる目的で5か月間飼育実験を行った。
2.供試エビの経歴の比較および飼育タンクの形状比較では, 成熟度, 産卵率, 生残率, 脱皮周期に顕著な差はなかった。
3.池中養成ウシエビの最小産卵サイズ (年齢) は集約養殖池で6か月養成したもので, 無処理で8日目に産卵したBW57gの個体であった。
4.産卵率は, 眼柄処理効果が明確 (約4倍) に認められた。なお, 両者とも未産卵個体の卵巣の状態は多くの個体がStageIIまでにいたったが, 以後StageIII~IVにまでに成熟する速度が遅くなって産卵にはいたらなかった。
5.産卵周期は, 眼柄処理したものではいずれの個体も脱皮3~5日後から振動的に3~4日間隔で産卵を繰り返した。無処理の個体は脱皮4~5日後から脱皮問期に1~3回繰り返し産卵した。
6.脱皮周期 (1~7回/尾) は, 眼柄処理したものがいずれも無処理のものより平均で約1日早かったが, t検定の結果, サイズ (CL) と脱皮日数間には有意差は認められなかった。
7.産卵と脱皮リズムの関係は, 脱皮をはさんで前後8~12日間は産卵しないが脱皮問期に3~4日ごとに振動的に成熟・産卵周期をとり, 無処理もので3回/尾, 眼柄処理したもので最高14回/尾の産卵が可能であった。このことから, 天然界ではウシエビでは毎月1~3回産卵を繰り返しているのではないかと推察された。
8.脱皮時前後や産卵直後の個体の組織像にも発育期や成熟期に達した卵細胞の存在がまばらに観察された。また, 発育期 (StageII~III) においても, 組織像から成熟にいたった卵細胞が観察され, GSIが4~5でも産卵が行われていると思われた。
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