水産増殖
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42 巻, 1 号
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  • 沼口 勝之
    1994 年 42 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1.アコヤガイのろ水率におよぼす水温の影響を明らかにするため, 水温10-33℃までの9温度区に馴致させたアコヤガイのろ水率を間接法により測定した。また, ろ水率の季節変化を明らかにするため, 5月から12月までの期間, 養殖いかだから取り上げたアコヤガイについて, 毎月のろ水率を間接法により測定し, 水温とろ水率との関係について検討を行った。
    2.アコヤガイの日間ろ水率は水温の上昇に伴って増加し, 25-28℃付近で最高値に達した。しかし, 31℃では極めて低くなった。水温とろ水率との関係から, アコヤガイの摂餌活動が最も活発な水温は22-28℃付近と考えられた。また, 28℃を越える夏季の高水温時あるいは13℃以下の冬季の低水温時には, アコヤガイの摂餌活動は不活発になると考えられた。
    3.時期別のアコヤガイのろ水率は5月から7月までの水温上昇期には増加した。しかし, ろ水率は8月にはやや減少し, 9月以降の水温下降期にはさらに減少した。
    4.水温はアコヤガイのろ水率に大きな影響を与えることから, アコヤガイの摂餌量の推定を行う場合は, 漁場の水温条件を十分加味したうえで検討を行う必要があると考えられた。
  • 中村 智幸, 丸山 隆
    1994 年 42 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1984年5月11日から6月9日にかけて, 群馬県信濃川水系野反湖において, ニジマスの自然産卵の実態を調査した。5月19~25日の問に, ニシブタ沢の流入する入り江で計4ペアの産卵行動 (追尾行動2ペア, 掘り行動2ペア) が観察された。また, 5月19日~6月9日の間にニシブタ沢とその入り江で計6個体の成熟魚が観察された。そのほかの沢では調査期間を通してニジマスは全く観察されなかった。これらのことから, 野反湖におけるニジマスの産卵期は春 (およそ5~6月) であり, その産卵水域はおもにニシブタ沢であると考えられた。
  • 林 宗徳, 松井 誠一, 竹下 直彦
    1994 年 42 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1989年6月~8月にかけて筑後川におけるエツの産卵場および産卵時刻を明らかにする目的で, 卵稚仔および流況の12時間連続調査を行った。その結果, 産卵場は河口から上流19~20km付近, 産卵時刻は6月では17: 30~21: 30, 7月では15: 30~19: 30, 8月では14: 30~18: 30と, 約4時間の産卵時間帯が存在し, それらの時間帯は産卵期の後半になるにしたがい, 早い時間帯となることが推定された。
  • 小河 久朗
    1994 年 42 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    タマハハキモクの仮根形成に及ぼす温度と塩分の影響について調べた。その結果, 仮根形成は温度が10~25℃, 塩分が16.3~55.1Sの範囲でみられ, とくに25℃, 32.0Sのときに最もよかった。仮根形成に対して, 温度よりも塩分の方が大きな影響を及ぼし, 低塩分側よりも高塩分側でその影響が大きく現れることが示唆された。
  • 牧之内 貞治, L. SAMUEL, H. JHON, S. TATAM
    1994 年 42 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1.集約および粗放池で養殖した成熟サイズ (年齢) にある池中養成ウシエビ (40~110g) の成熟・産卵周期と脱皮周期を眼柄処理したものと無処理のものを比較して調べ, それぞれの成熟 (生殖) と脱皮のリズムを明らかにした。さらに, 成長に伴う各卵巣の成熟度 (生殖腺指数, GSI) や色調を調べるとともに, 組織学的に観察した。同時に, 供試エビの経歴の比較と無処理での最小産卵サイズを調べる目的で5か月間飼育実験を行った。
    2.供試エビの経歴の比較および飼育タンクの形状比較では, 成熟度, 産卵率, 生残率, 脱皮周期に顕著な差はなかった。
    3.池中養成ウシエビの最小産卵サイズ (年齢) は集約養殖池で6か月養成したもので, 無処理で8日目に産卵したBW57gの個体であった。
    4.産卵率は, 眼柄処理効果が明確 (約4倍) に認められた。なお, 両者とも未産卵個体の卵巣の状態は多くの個体がStageIIまでにいたったが, 以後StageIII~IVにまでに成熟する速度が遅くなって産卵にはいたらなかった。
    5.産卵周期は, 眼柄処理したものではいずれの個体も脱皮3~5日後から振動的に3~4日間隔で産卵を繰り返した。無処理の個体は脱皮4~5日後から脱皮問期に1~3回繰り返し産卵した。
    6.脱皮周期 (1~7回/尾) は, 眼柄処理したものがいずれも無処理のものより平均で約1日早かったが, t検定の結果, サイズ (CL) と脱皮日数間には有意差は認められなかった。
    7.産卵と脱皮リズムの関係は, 脱皮をはさんで前後8~12日間は産卵しないが脱皮問期に3~4日ごとに振動的に成熟・産卵周期をとり, 無処理もので3回/尾, 眼柄処理したもので最高14回/尾の産卵が可能であった。このことから, 天然界ではウシエビでは毎月1~3回産卵を繰り返しているのではないかと推察された。
    8.脱皮時前後や産卵直後の個体の組織像にも発育期や成熟期に達した卵細胞の存在がまばらに観察された。また, 発育期 (StageII~III) においても, 組織像から成熟にいたった卵細胞が観察され, GSIが4~5でも産卵が行われていると思われた。
  • 大貝 政治, 杉本 俊男, 村瀬 昇
    1994 年 42 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ノリ養殖に及ぼす放流水の影響をノリ葉体やノリ養殖場に出現する付着珪藻などの培養実験から検討した。
    その結果, ノリの殻胞子や葉体は放流水を海水に混入させて培養すると, 混入率10%までは成長がやや高まったが, 30%になると抑制された。珪藻4種についても, 同じような増殖傾向が認められたが, 混入率10%以下では珪藻の増殖のほうがノリの成長より高まった。混入率30%ではノリや珪藻の成長, 増殖が抑制されたが, この原因は前者については, おもに放流水に含まれる物質で, 後者では塩分濃度の低下によると思われた。しかし, 放流水はノリ養殖場でノリの成長などに直接害を及ぼすような30%以上の高い混入率となることは, その拡散状況からありえないことである。したがって, ノリ養殖に及ぼす放流水の影響は放流水がノリの成長に直接害を及ぼすことは少なく, むしろノリ葉体に付着する珪藻や養殖場に出現する植物プランクトンの増殖が高められることによって起こるノリの品質低下の害のほうが多いと考えられた。
  • 夏 春, 川合 研児, 楠田 理一
    1994 年 42 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ウナギのリンパ球の機能を解明する一環として, Ficoll遠心法によってウナギリンパ球を分離し, ウナギのリンパ球上にSRBC, IgM FcおよびCレセプターが存在するかどうかを調べた。さらに, ロゼット形成に影響を及ぼす要因についても検討した。なお, SRBCレセプターはEロゼット法, IgM FcレセプターはEAロゼット法, CレセプターはEACロゼット法によって検出した。
    その結果, ウナギのリンパ球のうち, Eロゼット形成細胞が2.31%, EAロゼット形成細胞が1.38%, およびEACロゼット形成細胞が4.69%検出された。そして, SRBCレセプターは, トリプシンに感受性のあるSRBC上の成分と結合すること, IgM Fcレセプターは酢酸に対して感受性を示さないこと, およびCレセプターと結合するウナギの補体成分は50℃の加熱に対して感受性を示さないことが明らかになった。
  • 夏 春, 川合 研児, 楠田 理一
    1994 年 42 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ウナギリンパ球の機能を解明する一環として, リンパ球上のPHA, Con A およびLPSレセプターの存在と, リンパ球のこれらのマイトジェンに対する増殖反応を調べた。リンパ球の分離は12-15-18-21%Ficoll密度勾配遠心法を用いて行った。リンパ球をFITCで標識したFITC-PHA, Con A およびLPSと4℃で15-60分間反応をさせ, 蛍光顕微鏡を用いてリンパ球を観察した。また, 6尾のウナギから分離したリンパ球を1から800μg/mlまでのPHA, ConAおよびLPSを加えた培地で72時間培養を行ったのち, 3H-チミジンを加えてさらに20時間培養した。そして, その放射活性を測定してリンパ球の増殖反応を判定した。FITC-PHA, FITC-Con A およびFITC-LPSと反応させたリンパ球は, いずれの場合でも15分間後には, ほとんどの細胞の表面に蛍光が拡散して分布した。60分間後には, 一部の細胞でキャップ状の蛍光像を示した。つぎに, いろいろな濃度のPHA, Con A およびLPSに対するリンパ球の増殖反応を測定したところ, マイトジェンを添加した実験区では無添加の対照区と比較していずれも高い増殖反応を示した。増殖反応のピークはPHAおよびCon A では10μg/ml, LPSでは5μg/mlであった。
    以上のことから, ウナギのリンパ球には, PHA, ConAおよびLPSに対するレセプターが存在し, これらのマイトジェンの刺激によって, 増殖反応を起こすものと考えられる。
  • 夏 春, 川合 研児, 楠田 理一
    1994 年 42 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ウナギリンパ球の長期間培養系を確立するために, フィトヘマグルチニン (PHA-P) で刺激したのちマウスインターロイキン2 (IL 2) の存在下で培養する方法について検討した。末梢血から分離したリンパ球の増殖性を, PHA-PとマウスIL 2の濃度を変えて調べたのち, それぞれの至適濃度で継代培養を行ったところ, リンパ球は26週間以上にわたり増殖を続けた。培養リンパ球は95%が表在性免疫グロブリンをもち, キラーヘルパー因子の産生性も示したが, ヒツジ赤血球に対するレセプターは保持していなかった。
  • 吾妻 行雄, 川真田 憲治, 元谷 怜
    1994 年 42 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    北海道西部日本海および南部太平洋産エゾバフンウニ人工種苗を, それぞれ津軽海峡東部戸井町および日本海中部余市町沿岸に放流し, それらの生殖周期を調べた。
    戸井町地先に放流した種苗は, 9~11月に産卵する日本海沿岸固有の生殖周期を保持し, 地先天然群とは明確に異なった。余市町地先に放流した種苗は, おもに8月に産卵する明確な生殖周期を示した。
    各放流地区の漁期における種苗の生殖巣の量的発達と成熟過程から判断して, 親ウニの産地が異なるこれら放流群の導入は不適であると結論した。
  • 木曾 克裕, 小坂 淳
    1994 年 42 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    河川残留型サクラマスの産卵の回数や生殖周期を知るため, 三陸地方南部の河川で採集した1歳以上の河川残留型雌を用いて, 卵巣組織の観察, 卵母細胞の卵径の計測, 鱗相の観察を行った。
    1歳の夏には卵巣の発達段階は第1次または第2次卵黄球期にあった。産卵直後の卵巣には排卵痕や吸収過程にある大形の卵母細胞のほかに周辺仁後期の卵母細胞が認められた。翌年の3~6月に採集した2・3歳の卵巣には排卵痕のほかに発達中の若い卵母細胞が認められ, 卵母細胞の発達段階や卵径組成は1歳魚 (未産魚) と一致していた。産卵後の河川残留型の鱗には産卵記号が形成されていた。2歳以上の雌には1個または2個の産卵記号を持つ個体が認められた。
    これらのことから, 河川残留型の雌の中には最初の産卵後に斃死しないで生涯に2~3産卵期にわたって産卵する個体があり, 1回産卵の降海型とは異なる繁殖様式を示すと考えられた。
  • Siti Shapor SIRAJ, 関 伸吾, Kok Jee ANG, 山田 行雄, 谷口 順彦
    1994 年 42 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    同じ親魚に由来するジャワゴイ極体放出阻止型および卵割阻止型雌性発生2倍体群, 正常2倍体群について鱗移植における反応の違いを検討した。正常2倍体では自己移植鱗はすべて受け入れたが, 他群の鱗は移植後12日以内にすべて拒絶した。卵割阻止型 (ホモ型) 雌性発生2倍体における同群内他個体移植は, 18日以内にすべて拒絶したが, 極体放出阻止型 (ヘテロ型) 雌性発生2倍体では拒絶に要する時間が延長し, いくつかの個体では20日以上生残するものもみられた。観察された同種内他個体移植の反応は, 4~7日の早い反応, 12日以上3週間末満の中位の反応, 3週間以上の遅い反応の3型に分けられた。
  • 田畑 和男
    1994 年 42 巻 1 号 p. 85-91
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海東部群に属する友ヶ島水道周辺海域で漁獲されたマダイは, 3回の漁獲集団間の遺伝子頻度が均一であったこととFst値が極めて小さかったことから, 遺伝的に均一な集団からなることが推定された。
    放流群は, 多くの親魚から生産されているにもかかわらず変異の減少が観察され, 放流群の平均ヘテロ接合体率は漁獲群に対して平均84%であった。放流群のEstの主対立遺伝子であるEst-Eは放流群間では不均一だが, 漁獲群を含めると均一であった。また, Est-FAdh-Bは放流群間では均一であったが, 漁獲群を含めると不均一となった。これらのことから, 人工生産放流群は天然群の遺伝子組成に影響をおよぼす可能性があるので, 遺伝子資源の保全および変異の減退に伴って起こる近交度の上昇回避の観点から, 放流用人工種苗の遺伝的変化を防止する対策が必要となろう。
  • 田中 啓陽
    1994 年 42 巻 1 号 p. 93-99
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    グルコースの好気的酸化分解に与えるN/P比 (5-200) の影響について, 動力学的モデルを用いて検討した。モデルは3つの一次反応式から成るとし, 各反応式のパラメーターを決定・評価した。パラメーターの決定はリーのグラフ法の応用によった。
    内生呼吸相の分解速度恒数はN/P比に関係なく類似の値 (ke=0.05-0.07day-1) を示したが, 微生物増殖相の2つの分解速度恒数 (kg1およびkg2) はN/P比が高くなると低減し, とくにN/P=200ではその低減の割合は著しかった (kg1=0.60day-1, kg2=0.20day-1) 。他方, モデルから求めた全最終酸素要求量は, N/P値が5および10においてグルコースの理論的酸素要求量の77%に相当したが, N/P>100ではその割合は低減し, N/P=200で65%を与えた。これらの結果から, N/P比の変化は微生物の合成過程のみならず, 全最終酸素要求量にも影響することが示唆された。
  • 松野 隆男, 津島 己幸, 秋山 敏男, 新井 茂
    1994 年 42 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    アスタキサンチンを0~400ppm添加した飼料でアユを11週間飼育した結果, 肉眼的にも分析結果からも明らかに黄色系着色効果が認められた。飼料中の適正添加量は20~40ppm, 9~11週間の給与で十分に効果が期待できる。また11週間の飼育期間中, いずれの試験区においても試験魚に特筆すべき異常は認められなかった。
  • 平野 克己, 高 平
    1994 年 42 巻 1 号 p. 107-111
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    アサヒガニの種苗生産に関する基礎資料を得る目的で, 日向灘南部の南郷漁協 (宮崎県南那珂郡南郷町) を中心にしてアサヒガニの漁獲量を調査した。
    その結果, 過去13年間の年間平均漁獲量は約360kgであり, 盛漁期は4~9月であった。年平均単価は1kgあたり2, 806円であるが, 2, 月と8月には3, 100~3, 250円と高く, 4月には2, 500円と最も安かった。甲長 (L, mm) , 甲幅 (CW, mm) と体重 (BW, g) の間には, 次の関係式が成立した。
    雄: CW=0.9806L-8.3240, BW=0.0003L3.0159
    雌: CW=0.8796L-1.3097, BW=0.0005L2.9352
    甲長が90mm以上では雄が多く, 雌は少ない傾向があった。6~8月の抱卵率は79%と高く, この時期のGSIも高く, 平均卵径は0.63~0.71mmであった。以上の結果から, 日向灘南部のアサヒガニの産卵期は, 夏季を中心に年1回と推定された。
  • 牧之内 貞治, Toni RUCHIMAT, TRIDJOKO, Sutarmat TATAM
    1994 年 42 巻 1 号 p. 113-119
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    光周期と照度が成熟ウシエビの生殖・産卵と交尾率に及ぼす影響を, 成熟速度, 産卵率, 産卵回数, 産卵時刻, 産卵行動, 放卵数, ふ化率, 脱皮周期, 生存率, 追尾行動などから調べた。
    光周期 (13L, 15L, 17Lおよび1L, 12L, 23L) や照度 (2~5lx, 20~25lx) の比較で成熟ウシエビはその生殖・産卵リズムに顕著な影響は認められなかった。しかし, 交尾率に関しては短日区 (12L, 13L) で低い照度 (2~51x) がより効果的であった。
  • 日下部 敬之, 佐野 雅基, 矢持 進, 鍋島 靖信, 有山 啓之, 唐沢 恒夫
    1994 年 42 巻 1 号 p. 121-126
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    大阪湾南部の垂直護岸で周年にわたる仔稚魚の採集調査を行い, ハオコゼ, メバル, カサゴなどをはじめとする5目19科29種以上, 395個体の魚類を得た。
    優占種にはカサゴ目に属するものが多く, その種組成は季節的に安定しており変化に乏しかった。また出現魚類の大部分は稚魚以上の発育段階のもので, その全長範囲は比較的広かった。これらの特徴はこれまでに報告された砂浜における仔稚魚の出現特性と大きく異なっており, 垂直護岸はおもに岩礁性の魚類にとっての, 稚魚期以降の比較的長い期間を過ごす生活圏として位置づけられた。
  • 浜野 龍夫, 坪井 俊三, 今井 厚, 星野 尚重, 沖本 博, 陣之内 征龍, 林 健一
    1994 年 42 巻 1 号 p. 127-133
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    陸上植物の育苗培地用資材であるロックウールは自然砂に比較して軽く, 作業性にすぐれている。このため, ロックウールを潜孔・埋在性動物の飼育に利用することを目的にその水質保全効果を確かめた。循環水槽にロックウール・イワムシ・クルマエビを組み合わせて収容し水質の経時的変化を観察したところ, ロックウールを使用した飼育ではアンモニア態窒素濃度が抑えられた。とくに, イワムシとロックウールを組み合わせて飼育した水槽のアンモニア濃度は低かった。
    また, ロックウールか自然砂を入れたビンに海水と配合飼料を加え黒色還元層の発現状況を観察したところ, ロックウール中の還元層の発達速度は天然砂よりも有意に小さかった。これらのことから, ロックウールには水質保全効果があり天然砂に代わる底質材として有効であると判断した。
  • A.B. ABOL-MUNAFI, 楳田 晋
    1994 年 42 巻 1 号 p. 135-144
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    生簀網で飼育したキチヌの生殖巣の発育周期について調べた。体長14.0~33.0cmの機能的雄はすべて雌雄同体で, 全体の魚の39%であった。雌の体長は23.0~38.0cmであった。 GSIは10月に増大し始め, 11月に最高値を示した。産卵は10月末から11月末に生じた。総抱卵数は, 26.4cmの魚で629×104粒, 35cmの魚で1445×104粒であった。
  • 楠田 理一, 長戸 政臣, 川合 研児
    1994 年 42 巻 1 号 p. 145-149
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    眼球の突出および腎臓の退色を主徴とするマダイ病魚について, ウイルス学的検討を行ったところ, 培養細胞に強い核濃縮を特徴とするCPEを示すウイルスが分離された。分離ウイルスをマダイ稚魚に接種したところ, 自然感染魚と同様に眼球め突出および腎臓の退色が認められ, 斃死魚および約半数の瀕死魚からウイルスが再分離された。分離ウイルスは形態学的および物理化学的性状から, ビルナウイルス科に属するウイルスと考えられた。分離ウイルスは中和試験の結果から, YAVに近似すると考えられるが, 病状および性状から, これとは異なるビルナウイルスであると推察された。
  • 楠田 理一, 長戸 政臣, 川合 研児
    1994 年 42 巻 1 号 p. 151-156
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1991年9月に大量斃死し, 病理組織学的検討から, いわゆるイリドウイルス感染症であると確認されたマダイ病魚からBF-2細胞を用いてウイルスを分離したところ, 培養細胞に肥大および球形化を特徴とするCPEを示すウイルスが分離された。分離ウイルスをマダイ稚魚に接種したところ, 自然感染魚と同じ症状が認められ, 斃死魚からウイルスが再分離された。分離ウイルスはエンベロープをもたず, 断面が6角形の多面体で, 平均直径は170nmであった。IUdRで増殖が阻害され, クロロホルム, 酸およびアルカリに対して感受性を示し, 56℃で30分間の加熱に対して不安定であった。増殖至適温度は20~25℃であった。
    これらの形態学的および物理化学的性状から, 分離ウイルスはイリドウイルス科に属するウイルスであると考えられた。
  • 勢村 均
    1994 年 42 巻 1 号 p. 157-164
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    イタヤガイの幼生飼育に適した海水の処理法を検討するため, 孔径0.4μmの精密濾過器で濾過した海水 (0.4μm濾過水) , 0.4μm濾過水を紫外線照射した海水 (紫外線照射水) , 孔径1μmのフィルターで濾過した海水 (1μm濾過水) , 3μmのフィルターで濾過した海水 (3μm濾過水) を用いて飼育したときの, 飼育水中の生菌数の変動と, 幼生の生残および成長を観察した。その結果, 幼生飼育中の生菌数は, 1μm濾過水では105CFU/mlとなることはなかったが, ほかの飼育水では, 1×105CFU/ml以上に増加した。水槽底への幼生の集積は, 生菌数が1×105CFU/ml以上に増加し, 特徴的なコロニーが出現し始めたあとに観察された。
    以上のことから, 幼生の不調および斃死の原因として, 飼育水中の生菌数が急激に増加し, その状態で推移することが幼生に何らかの悪影響を及ぼしている可能性が示唆された。
  • 河野 博, 大野 淳, 中尾 忠司
    1994 年 42 巻 1 号 p. 165-169
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    人工飼育したスマ仔魚について, 内部栄養から外部栄養への転換に関する形質の変化を形態学的に調べた。フ化時に934.9×10-4mm3 (油球をふくむ) あった卵黄はフ化後急激に減少し, フ化後95時間までに消失した。油球 (フ化時: 75.1×10-4mm3) は徐々に吸収され, フ化後118時間までに消失した。開口はフ化後46.5時間に認められたが, すべての仔魚が摂餌を開始したのは71時間後であった。これらの形質の変化を熱帯性海産魚類4種と比較したところ, スマ仔魚では外部栄養をとりはじめて内部栄養を完全に吸収するまでの時間が長く, 栄養転換がスムーズにおこなわれていると考えられた。
  • 原田 勝彦, 宮崎 泰幸
    1994 年 42 巻 1 号 p. 171-177
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    クロアワビ, Haliotis discus稚貝に対する果物25種類36品種の果肉, 一部で外皮の水抽出液の誘引活性を行動学的に調べた。果肉においては, バラ科22品種の中でリンゴ (ゴールデンデリシャス) , 桜桃 (ナポレオンと佐藤錦) , ナシ (西洋梨, 幸水と20世紀) , スモモ (ソルダムとソールダー) , 桃 (白鳳) およびイチゴ (とよのか) の10品種に, ブドウ科3品種の中でブドウ (巨峰とマスカット) の2品種に高い誘引活性を認めた。その他6科11品種の中でメロン (マスクメロン) , カキ (富有) およびイチジク (ドーフィン) の3品種にも高い誘引活性がみられた。これらの品種の中で最高の誘引活性を示した品種は桜桃 (ナポレオン) であり, 濃度の増大とともに誘引活性が増大した。
  • 武田 博, 袈裟丸 倉基, 黒木 暘, 湯田 光, 山田 卓郎
    1994 年 42 巻 1 号 p. 179-183
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    養殖オオニベの背肉における一般成分, 無機成分および脂肪酸含量の季節変化を調べた。養殖オオニベ背肉の水分, 粗タンパク質および粗灰分は年間を通じてほぼ一定であった。いっぽう, 総脂質は20℃以上の高水温期に低く, 20℃以下の低水温期に高かったが, 総脂質含量は年間を通じて2%以下と低かった。そのNaおよびCa含量は高水温期に, K含量は低水温期に高かった。総脂質中の主な脂肪酸はC16: 0, C18: 0, 18: 1n9, C20: 5n3およびC22: 6n3であり, 飽和脂肪酸含量は高水温期に高かった。
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