水産増殖
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43 巻, 4 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 澁谷 竜太郎, 関 伸吾, 谷口 順彦
    1995 年 43 巻 4 号 p. 415-421
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    海系アユと琵琶湖系アユのなわばり性の差について, 水温と関連について比較した。供試魚として, 海系および琵琶湖系天然種苗, 海系人工種苗, 海系クローンアユを用いた。鏡を用いたMIS試験の結果, 海系アユ天然種苗のなわばり形成率は24℃の水温区で最大値であったのに対し, 琵琶湖系アユ天然種苗では, 21℃の水温区で最大値を示した。攻撃性についても同様の傾向が認められた。クローンアユはその起源である海系アユと類似したなわばり性の温度特異性を示した。これらのことは, なわばりの形質における違いが2地理的品種の遺伝的差異によることを示唆していた。
  • 山崎 繁久, 坂元 洋満, 平田 八郎
    1995 年 43 巻 4 号 p. 423-428
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    モクズガニ種苗生産における適正塩分の範囲を知る目的で, 孵化およびゾエア期幼生の成長に及ぼす塩分の影響を調べた。抱卵全体の孵化がみられた親カニの割合は, 親カニの飼育塩分が34, 24, 12, 6, および0 psuの場合, それぞれ99, 97, 76, 17, および0%と, 12 psu以下では急激に低くなる傾向を示した。ゾエア期幼生の生存率では, 孵卵時の塩分と飼育塩分の双方が24 psuより高い場合に, 50%以上の生存率が得られた。また, ゾエア期幼生の期間も上記の塩分の組み合わせの場合により短期間になる傾向を示した。ゾエア期幼生の成長について, 孵卵時の塩分の影響とゾエア期幼生の飼育塩分の影響を比較すると, 概して, ゾエア期幼生の飼育塩分の方が強く現われる傾向がみられた。以上の結果から, 孵卵時の塩分もゾエア期幼生の飼育塩分も少なくとも24 psu以上に調整する必要のあることが示唆された。
  • 前川 行幸, 杉山 篤
    1995 年 43 巻 4 号 p. 429-435
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    潮間帯や潮下帯に生育するいくつかの海藻について, 高温耐性を光合成, 呼吸の面から調べた。また, 生育環境の温度を詳しく測定し, 垂直分布の要因としての温度環境について検討を行った。
    タイドプールに生育する海藻の高温限度はより高所に生育する海藻ほど高く, 高温に対し高い耐性を持つことが確かめられた。また, その限界温度は環境の最高水温と強い関連があることが認められた。一方, 干出する海藻については全般に高温に対して高い耐性を示したが, 生育位置による明確な差違はみられなかった。これらのことから, 潮間帯のタイドプールに生育する海藻は, 高温に対する耐性がその垂直分布を規制する重要な要因であることが明らかとなった。
  • 芹澤 如比古, 大野 正夫
    1995 年 43 巻 4 号 p. 437-443
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    コンクリート人工礁14基を1990年12月に土佐湾の池ノ浦湾の湾口部の水深約7mの砂地に設置した。設置後3ケ月でフクロノリが優占したが, 着生後2ケ月で消失した。その後ブロック上に, 顕著な海藻種の増加が見られ, 着生した海藻類の種数は, ブロック設置から2年で42種に達した。主な着生海藻は, アオサ, ミル, トゲモク, マクサ, タマイタダキであり, 土佐湾の内湾域の海藻植生と類似していた。1994年の6, 月に湿重量は最大の1m2当たり3004.5gに達した。しかし毎年夏期には, 大型海藻が消失するという現存量の変化と, 海藻種の種組成の季節的な変化を示した。
  • 小河 久朗, 金谷 夏広, 木内 悦子
    1995 年 43 巻 4 号 p. 445-448
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    エゾノネジモクの仮根形成に及ぼす温度と塩分の影響について調べた。仮根形成は温度が10~25℃, 塩分が19.5~52.2Sの範囲でみられ, とくに15℃, 26.1~39.2Sでよかった。仮根の伸長に対する温度の影響は低塩分条件下よりも高塩分条件下で大きかった。
  • 奥村 重信, 今泉 均, 中園 明信
    1995 年 43 巻 4 号 p. 449-454
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    アカアマダイは飼育水槽内で産卵するが, 150m3円型水槽 (直径10m・深さ2m) に200尾前後の親魚を収容した場合の受精率は, 0~0.57%と非常に低かった。そこで, 天然での本種の生息状況を考慮し, 同水槽に雄1尾と雌数尾を収容し, 1991年から1994年までに6回の産卵実験を行った。
    1991年と1994年の産卵数は237万粒と153万粒で, 受精卵数はそれぞれ59万粒と27万粒であった。これらの受精率は24.7%と17.9%であり, 過去の例に比べて受精率の大幅な向上がみられた。しかし, 産卵期の直前や途中に親魚を交換した1992年と1993年の実験では産卵数も少なく, 受精卵はまったく得られなかった。
    これらのことから, アカアマダイを産卵させる場合は, 水槽内に多数の親魚を収容するよりも, 1尾の雄と数尾の雌を収容した方が受精率の高い産卵を得る機会が多かった。さらに, 親魚は産卵期の4~5カ月前に水槽へ収容し, その後は親魚を交換しない方がよいと思われた。
  • 藤原 正夢
    1995 年 43 巻 4 号 p. 455-460
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    トリガイの種苗生産過程で, 胚の異常発生や奇形幼生がしばしば認められ問題となっている。異なる産卵水温で得た受精卵を種々の水温条件下で発生させたところ, これらの出現と, 産卵水温と卵発生の水温との差に密接な関係が認められた。さらに, この温度差が9℃以上になると異常発生個体や奇形幼生が急増することが明らかとなった。また, トロコフォア以降のステージでは, 受精卵からトロコフォアまでのステージに比べ昇温の影響が少ないことが分かり, トロコフォア期以前の加温は好ましくないことが明らかになった。
  • 鈴木 伸洋, 岡田 一宏, 神谷 直明
    1995 年 43 巻 4 号 p. 461-474
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    人工授精により得られたトラフグの仔稚魚期の器官形成と行動の発現を観察した。
    体表の遊離感丘は形態的に孵化3日 (全長3.21-3.63mm) までに完成し, 仔魚は正の走流性を示した。そして, 網膜色素細胞の桿体細胞の分化とその数の増加に伴って負の走光性と底生性が発現した。摂餌は孵化3日からみられ, 卵黄が完全に吸収される孵化6日 (全長3.43-3.98mm) には摂餌器官と消化器官が機能的分化を遂げた。噛み合いの発現には, 歯芽の形成, 単独行動および栄養状態等が複雑に関係しているものと推測された。噛み合いによる斃死個体の著しい増加は嘴状の歯の形成前後 (孵化35日頃) からであるが, 体表の小棘鱗状突起と鱗の完成に伴う皮膚の肥厚と管器の形成時期 (孵化50日頃) には噛み合いによる斃死は減少した。
    尾柄部の黒色色素叢および体背腹面の体表の小棘鱗状突起の出現を指標として仔魚の概算的な日齢を推測することができるものと考えられた。
    体表の遊離感丘の出現分布域の拡大とその形態発育は, 成長段階に応じた本種の生息環境に対して適応をしているものと推測された。
  • 村田 修, 宮下 盛, 那須 敏朗, 熊井 英水
    1995 年 43 巻 4 号 p. 475-481
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    マダイの卵にヘダイの精子を媒精して作出した交雑魚 (マヘダイと呼ぶことにする) の養殖魚種としての特性を明らかにする目的で, その成長, 生残率, 外部形態, 環境ストレス耐性などについてマダイおよび雌性発生二倍体ヘダイと比較した。
    (1) 媒精した浮上卵の受精率はマダイ>マヘダイ>雌性発生二倍体ヘダイの順であったが, 雌性発生二倍体ヘダイの値が他の両者に比べ著しく低い (p<0.001) のは雌性発生の影響と思われる。
    (2) 孵化率はマダイ>マヘダイ・雌性発生二倍体ヘダイの順で, マヘダイの値は雌性発生二倍体ヘダイとほとんど差がなかったがマダイより低かった (p<0.05) 。
    (3) 孵化後30日目までの生残率はマダイ>マヘダイ>雌性発生二倍体ヘダイの順であったが, その後71日目から140日目までのそれはマヘダイおよび雌性発生二倍体ヘダイの方がマダイよりも高かった (p<0.001) 。
    (4) 成長は孵化後約10ケ月目まではマヘダイ>マダイ>雌性発生二倍体ヘダイの順であったが, 1年2ケ月目からはマダイの方がマヘダイよりも徐々に大きくなり, 孵化後2年6ケ月目におけるマヘダイの平均体重はマダイと雌性発生二倍体ヘダイとの中間となった (p<0.01) 。しかし, 孵化後3年目の4月前後では雑種不妊の影響で体重の増加がみられず雌性発生二倍体ヘダイに近づいた。
    (5) 環境ストレス耐性では, 海水の比重低下に対するマヘダイの耐性が雌性発生二倍体ヘダイよりも弱くマダイよりも強いことを認めた (p<0.01およびp<0.001) 。しかし, 水温の上昇および低下, 並びに溶存酸素量低下に対するマヘダイの耐性は他の両魚種とほとんど差がなかった。
    (6) 外部形態や体色などからマヘダイは雌性発生二倍体ヘダイに近く父系遺伝が強いことが示唆された。
  • 内村 祐之, 阿部 俊之助
    1995 年 43 巻 4 号 p. 483-489
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    二倍体と三倍体アコヤガイに, 同じ大きさの核を挿核し, 毎月, 真珠を採取して重量を測定した。三倍体の真珠重量は, 秋季に二倍体を上回った。この時期, 二倍体は, 三倍体に比べ呼吸酵素活性が高く, 血リンパ液の溶存酸素量が少ないことから, 三倍体より酸素消費量が少ないとは考えられなかった。また, 二倍体は性成熟が進行し, 軟体部の成長は停止した。このことが, 三倍体の真珠が二倍体より大きい原因となったと考えられた。
  • 高木 基裕, 幹田 和彦, 関 伸吾, 谷口 順彦
    1995 年 43 巻 4 号 p. 491-497
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    マダイの改良種苗の遺伝変異保有量をDNA-FPを用いて推定した。野生集団のBSIは養殖集団のBSIと比較して特に低かった。選択育種系の系統内のBSIは非選択系と比較して遺伝変異性がやや低かった。さらに, 選択育種系のうちS2はS3と比較してより遺伝変異が低下していた。また, S2とS3の系統間のBSIは系統内のBSIレベルと同等であり, S2がS3を導入した後, 独自に選択育種したものであることを反映している。以上の結果はアイソザイム分析による結果とよく対応しており, DNA-FPが遺伝変異の検出において感度の優れた遺伝標識であることを示唆している。
  • 田中 健二, 中川 武芳, 大岡 宗弘, 徳倉 富夫, 田中 勝祐, 瀬古 幸郎
    1995 年 43 巻 4 号 p. 499-509
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    産地市場で上下二つのランクに格付けされた養殖ニホンウナギについて, 体色を始めとした品質特性の季節変化を把握し, 官能検査との関連性について検討した結果, 以下のとおりとなった。
    体色の色度aは, 夏から秋にかけて値が下がり, 上下ランクの差が小さくなった。また, 体色の色度bは, 夏に値が下がり, 上下ランクの差が小さくなった。これらのことから, ウナギの体色は, 夏から秋にかけて青くなる傾向があるものと推察された。
    生肉の硬さは, 夏に柔らかくなり, 上下ランクの差が小さくなった。また, 加熱した肉の硬さは, 夏から秋に柔らかくなる傾向が見られた。
    可食部分の一般成分のうち粗脂肪は四季を通して, 上ランクの方が下ランクよりも多く, 水分と粗タンパク質は逆に上ランクの方が下ランクよりも少なかった。また, これらの上下ランクの差は, 夏に小さくなる傾向があった。
    可食部分の遊離アミノ酸では, 冬に生肉のヒスチジン量が多かった以外, 明瞭な季節変化は見られなかった。また, 加熱することで, ヒスチジン量は減少した。
    可食部分の脂肪酸組成には, 季節変化は認められず, 加熱による変化もほとんどみられなかった。
    官能検査では, 品質特性の変化に対応し, 上ランクが下ランクよりも評価が高く, その差は, 夏に小さくなる傾向があった。
  • 渡邉 武, 青木 秀夫, ウイヤカーン , 舞田 正志, 山形 陽一, 佐藤 秀一, 竹内 俊郎
    1995 年 43 巻 4 号 p. 511-520
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ブリ用ソフトドライペレット (SDP) における魚粉の代替タンパク質源として大豆油粕 (SBM) , コーングルテンミール (CGM) , ミートミール (MM) を併用した場合の利用性を検討した。SBM, CGM, MMを組み合わせて合計42-47% (魚粉代替率54-62%) 配合したSDPを用いて平均体重約42gと14gのブリをそれぞれ44および146日間飼育し, 成長, 増肉係数, 魚体の一般化学成分および血漿化学成分を測定した。その結果, 各試験飼料に対する供試魚の摂餌性はいずれも優れていた。魚粉代替飼料区の成長および増肉係数は魚粉飼料区とほぼ同程度と優れ, 血漿化学成分から評価した供試魚の生理状態にも異常はみられなかった。また魚粉代替タンパク質源として濃縮大豆タンパク質を50%配合した試験区では, 飼育成績, 供試魚の生理状態は魚粉飼料区よりやや劣ったため, その利用性についてはアミノ酸組成の見直しも含めてさらに検討する必要があると判断された。以上の結果から, ブリ用SDPではSBM, CGM, MMを併用することによって魚粉の約60%を代替できることが明らかになった。
  • 中川 平介, GÓMEZ-DÍAZ Gabriel
    1995 年 43 巻 4 号 p. 521-526
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    体重0.4-0.7gの稚オニテナガエビを種々のレベル (0, 5, 10, 15, 20%) のスピルリナ粉末 (SP) を添加した精製飼料で60日間室内水槽で飼育した。SPは添加量に関わらず成長, 飼料効率, タンパク質効率の向上に有効であった。10, 15%の添加により生残率に向上がみられた。筋肉成分に影響はなかったが中腸腺の成分はSPの添加量によって変動がみられた。中腸腺の遊離脂肪酸とトリグリセリドはそれぞれSPの15%, 5%の添加で最高値を示した。しかし, 15%以上の添加では中腸腺の脂質含量が減少した。オニテナガエビに対する飼料添加物としてのSPの投与は成長や飼料効率の向上に有効であることが認められ, SP中の微量栄養素の有効性が示唆された。
  • 青野 英司, 高橋 巧, 川崎 順治朗, 杉田 治男, 出口 吉昭
    1995 年 43 巻 4 号 p. 527-533
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    東京湾沿岸域のマハゼ, マガキとその生息水の細菌相を年間を通して調べた。マハゼ腸内では7月を除く夏季から秋季にかけてVibrio-Aeromonas群が優占したが, 冬期にはそれらが減少し, 顕著な季節変動を示した。これに対しマガキでは四季を通じてFlavobacterium, Pseudomonas, MoraxellaおよびVibrio-Aeromonas群などが優占し, 生息水の細菌相と類似していた。マハゼおよびマガキではVibyio-Aeromonas群の生菌数が総生菌数と同様の変動を示し, また夏季にその占有率が著しく上昇したが, マガキの生息水ではそのような傾向が見られなかった。また夏季の内, 7月にはマハゼおよびマガキにおいてVibrio-Aeromonas群が著しく減少したことから, これらの細菌相は季節以外の何らかの要因によって容易に変動することが示唆された。しかし, 同じ月にマガキの生息水では, 総生菌数の減少にもかかわらず, Vibyio-Aeromonas群の減少は見られなかった。そのためマハゼおよびマガキと生息水の細菌相では, Vibyio-Aeromonas群を構成する細菌種間に相違があることが示唆された。
  • 松岡 学
    1995 年 43 巻 4 号 p. 535-541
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    過去約30年間 (1961-1993) における愛媛県下の海産養殖魚におけるウイルス病, 寄生虫症および非感染症の発生状況をまとめた。ウイルス病では, 1972年以来リンホシスチス病, 口白病, ウイルス性腹水症, イリドウイルス感染症などが発生した。特にイリドウイルス感染症は多くの魚種に発生し, 比較的被害率が高いことから問題となっている。寄生虫症では, 養殖開始当初より発生しているブリの“はだむし”や“えらむし”のほかに, 近年の養殖魚種の多様化に伴って新しい疾病が次々に発見されてきた。餌料の品質の向上に伴い, 餌料性疾病の発生は減少している。
  • 1995 年 43 巻 4 号 p. 543-550
    発行日: 1995/12/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
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