イワノリ類は沖縄島西海岸域で北~北西に面した沿岸のみに偏在し, 礁縁から約50m以内の距離にある岩礁や消波ブロックの潮間帯から飛沫帯にかけて帯状で形成され, 礁縁から約100m以内にある基質にそれが点在するようになる。生育量が多い場所は風浪に対する露出度が高く, そして日照がよくあたる岩礁面であるという点で共通している。
本種が沖縄島に生育していない理由は, 巨視的にみれば沖縄島軸が約45度で走るため冬季の強い北東季節風の影響が緩和され東海岸側に生育に適したhabitatがないと推定された。イワノリ類とほぼ同じhabitatをもつハナフノリは沖縄島の東西海岸に生育していること, 勾配が緩やかな地形にも生育している状況から, 耐乾燥度の面から比較すると, ハナフノリ>イワノリ類の関係が成立する。
垂直分布は, 1日に1回干上がる場所の平均干潮位から平均満潮位の間とその上部の飛沫帯であり, 繁茂する場所は日当たりのよい岩礁面である。その帯状構造は, 地域の生育環境に対応して一定の法則性をもって出現していることから, その濃淡は沿岸波浪の強さ, 地形の向き, 生育環境を推定する指標になることを強く示唆した。
季節的消長は, 12月に幼藻体が認められるようになり, 4月に最大湿重量が760g/m
2に達し, 6月上旬に消失した。一方, 多孔性の琉球石灰岩では12月中旬に発芽し, 3月上旬にピークになり, そして5月中旬に消失した。生育期間は千枚岩, 消波ブロック上で長く, 琉球石灰岩で短いが, それは岩質の保水性と関係する。沖縄島北部の主な岩質は保水性の高い千枚岩, 中南部域は多孔性の小さい琉球石灰岩である。中南部域で本種の生育量が極端に少なかったのは岩質が保水性の小さい琉球石灰岩であることに起因していたことになる。着生基質は千枚岩, 琉球石灰岩, 消波ブロック, コンクリート面, 木片などである。
沖縄島中南部域において, 1972年以降大規模に消波ブロックが投入されてきた礁面にイワノリ類の帯状が出現し, 生育量が天然産を凌駕するようになった。それの生態をサンゴ礁地形, 地質など多方面から検討した結果, イワノリ類は食用海藻資源として半永久的に利用が期待できることが判明した。
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