水産増殖
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49 巻, 2 号
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  • 原 素之, 關野 正志
    2001 年 49 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    マイクロサテライトDNA(MS)マーカーは変異性の高や実験再現性の良さから,種々の遺伝的調査や効率的育種を進めるための有効なツールとして期待されている。しかし,MSマーカーは種特異的な場合が多く,分析対象種ごとに煩雑なマーカーの開発が必要であり,その普及を阻んできた。我々は,効率的なMSマーカー単離法を検討しながらアワビ類のMSマーカーを開発し,これを用いて,エゾアワビの遺伝的多様性評価やクロアワビの家系判別による形質評価への応用を試みた。その結果,アロザイムと比べ明らかに変異検出感度が高く多様性評価に有効であることが確認された。また,受精時から混合飼育した種苗について家系判別を行い,筋萎縮症発症時の生残グループの耐性を遺伝的に明らかにした。以上のことから,MSマーカーはアワビの遺伝育種研究においても有用であることを示した。
  • 香川 浩彦, 太田 博巳, 田中 秀樹
    2001 年 49 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ウナギは淡水養殖上,非常に重要な魚種で,日本の食文化に欠かせない食材である。しかし,ウナギ養殖の種苗となる天然シラスウナギ資源の減少や種苗価格の上昇から,人工種苗生産技術の開発が長年待ち望まれているにもかかわらず,未だに完成していない。ここでは我々の研究所で行っている雌雄のウナギの人為催熟技術や仔魚の飼育技術に関する研究について報告する。
  • 谷口 和也, 吾妻 行雄
    2001 年 49 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    磯焼け域における海中造林のため,海藻の多量の生殖細胞を集める新しいポーラス型海藻礁を開発した。海中林は,小型1年生海藻と殻状海藻による始相,殻状海藻による途中相前期,小型多年生海藻による途中相後期を経て形成されるが,磯焼け域ではウニの高い摂食圧によって途中相前期が持続した。磯焼け域で大粒径の起伏のあるポーラス礁を用いた結果,設置10ケ月後からアラメが優占した。対照とした普通型の礁では途中相前期が持続した。ポーラス礁における海中林の形成は,化学的防御物質を生産する小型多年生海藻の先行入植によってウニが排除されたためであると考えられた。
  • 吉崎 悟朗
    2001 年 49 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    遺伝子導人技法は,近年養殖対象魚種にも応用されるようになり,新たな育種技法の一つとして注目されている。本総説では,サケ科魚類における遺伝子導入技法の最近の進展,および今後の展開について紹介する。遺伝子導入魚を作出する方法としては,ガラスの微細なピペットにより,受精卵の胚盤に外来遺伝子を注入するのが一般的である。導入された外来遺伝子の一部は,その後宿主の染色体に取り込まれ,発現し,次世代へと伝達していく。カナダの研究グループはこの方法を用いることで,外来の成長ホルモン遺伝子を個体内で過剰発現させ,サケの成長促進を行うことに成功している。また,氷点下の海でも養殖可能なサケや,低酸素環境に耐性を示すニジマスの作出,さらにin vitroで培養した幹細胞をベクターに川いて遺伝子導入を行う方法の開発も近年試みられている。最後に本遺伝子導入技術の新たな応用の可能性について考察する。
  • 津田 藤典, 赤池 章一
    2001 年 49 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    1997年5月から1998年8月に,北海道積丹半島西岸においてフシスジモク群落の生活年周期および生産力について調査した。生活年周期は緩生長期,急生長期,成熟期,枯死脱落期の4期に分けられた。群落内の全長頻度分布では,全長10cm未満の藻体が常に35.4~98.8%の割合で生育していた。生育密度は新規加入群の影響で12月に増加し,4月にかけて漸減した。しかし,その他の期間は変化が少なく,1才以上群は安定していた。生殖器床は6月上旬(水温約13℃)から,8月中旬にかけて,卵放出は6月下旬(水温約18℃)から8月上旬(水温約23℃)にかけて観察された。本種の年間純生産量は950.2g乾重/m2と推定され,1998年7月における極大現存量の約1.1倍であった。
  • 藤川 裕司, 佐々木 正
    2001 年 49 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    人工種苗マダイの捕食者回避における学習の効果について,オニオコゼを捕食者として水槽実験を行った。平均全長56mmの小型個体では,捕食圧に曝される経験により被食個体数が明らかに減少し,少なくとも24時間はその経験を記憶している可能性が認められた。平均全長81~100mmの大型個体では,小型個体ほどの学習能力の高さは認められなかった。人工種苗マダイの捕食回避に関する種苗性を,放流前に捕食圧に曝すことにより,向上させることが可能であると考えられた。
  • 井口 恵一朗, 淀 太我, 松原 尚人
    2001 年 49 巻 2 号 p. 157-160
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ひそかに放流され定着したコクチバスの産卵環境について,長野県野尻湖ならびに青木湖にて4つの水域を設定して調査を行った。産卵水深,岸からの距離等は調査水域間で変異したが,産卵床はそれぞれの水域において集中分布する傾向を示した。その理由として,産卵床付近の底質ならびにカバー(遮蔽物)の有無に対する親魚の選択性が関与していることが明らかとなった。適当な産卵基質とカバーを備えた人工産卵床の運用により,コクチバス卵・稚魚の効率的な除去方法が提案された。
  • 斉藤 康憲, 田村 直健, 廣瀬 一美
    2001 年 49 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2011/01/31
    ジャーナル フリー
    本邦産オオクチバスには舌歯保有魚と未保有魚の混在が認められた。舌歯は基舌骨の狭窄部上を中心に,円形ないし楕円形の舌歯群を形成する。各舌歯は先端部がキャップ構造をした円錐歯で,舌歯群の中心に向かって緩やかに湾曲し,基舌骨に蝶番性結合をしていた。体長9~65mmの琵琶湖産仔稚魚を用いて,標準体長と舌歯数との関係について調べた結果,体長40mmまでの個体では舌歯数1~8本,41mm以上で3~33本と,体長40mmを境に保有数に大きな変化が見られた。霞ヶ浦産および芦ノ湖産個体の比較では,舌歯保有率および平均舌歯数において,芦ノ湖産の44.0%,10.1本に対し,霞ヶ浦産では82.4%,20.4本と,約二倍高い値を示した。湖沼ごとの性別の差を見ると,舌歯保有率では,いずれも雌雄ほぼ同じ値であったが,平均舌歯数は霞ヶ浦産で雄32.1本,雌8.7本と雄の方が,芦ノ湖産では,雄8.4本,雌35.0本と雌の方が多い数を示した。しかし,これらの数値に有意差は認められなかった(t検定,p>0.1)。本種の舌歯は存在形態や保有状況から,稚魚期における摂餌補助器官であることが示唆された。
  • 澤田 好史, 宮下 盛, 服部 亘宏, 中村 和矢, 小田 誠二, 村田 修, 熊井 英水
    2001 年 49 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    オニオコゼ(lnimicus japonicas)飼育仔稚魚の相対成長を解析した。体各部の相対成長における成長式の屈山点は,体長5.5-6.1mmおよび8.1-8.2mmの2つに集中した。これらの体長は,オニオコゼの初期生活史において,発育あるいは行動の変化が認められる体長と一致していた。体長5.5-6.1mmでは,仔魚は脊索が上屈する成長段階にあった。体長8.1-8.2mmでは,後屈曲期仔魚は稚魚になり,浮遊生活から底棲生活へと移行し始めた。体長8mm以下での上顎長と下顎長の急激な成長と,孵化から摂餌開始までの体サイズの急激な成長は,オニオコゼ仔魚が他種より早い時期に小さいサイズでアルテミアノープリウスを摂餌することを可能にしている。また,体長6.7-8.2mmまでの胸鰭の急激な成長はオニオコゼ仔魚が発達した大きな胸鰭を使って遊泳することを可能にすると考えられる。さらに,体長6.7-13.5mmでの胸鰭各形質の相対成長における大きな変化は,仔魚から稚魚への変態と浮遊生活から底棲生活への移行期に対応していた。
  • 水田 浩之, 鳴海 日出人, 山本 弘敏
    2001 年 49 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ホソメコンブの遊走子を異なる硝酸態窒素(0~100μM)およびリン酸態リン濃度(0~100μM)の人工海水中で培養し,生長や成熟に及ぼす影響を調べた。雌性配偶体は硝酸およびリン濃度がそれぞれ5.0μM,1.0μM以上の場合に成熟し,胞子体を形成した。この濃度は配偶体世代から胞子体世代へ移行する際の閾値を示している。しかし,これは窒素とリンの制限を同時に受けている場合の値であり,どちらか一方が十分に供給されると,それぞれの閾値は1.0μM,0.5μMへ低下した。このことは,閾値は制限する栄養塩が複数の場合,その相乗作用によって変動することを示している。また,貧栄養海水および5段階の栄養塩添加海水中で光量(0.76,7.74and14.8μE/m2/s)および水温(5~15℃)の影響を調べたところ,貧栄養あるいは低光量がそれぞれ単独に配偶体の生長・成熟を遅らせた。この結果は,栄養塩の体内への蓄積と積算光量がホソメコンブの配偶体の生長・成熟を制御していることを示している。
  • 安信 秀樹, 永山 博敏, 檍 秀隆
    2001 年 49 巻 2 号 p. 181-184
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Halocrusticida okinawaensisを原因薗とするガザミ幼生真菌症の防除対策として,pHを9.25に調整した海水で飼育する方法が普及しつつあるため,pH9.25の飼育水に収容したガザミゾエアの生残に及ぼす水温の影響を調べた。その結果,30℃でアンモニア態窒素濃度が高い場合(8μg/ml)は,高pHの悪影響が認められたが,20~30℃において一般的なゾエア期間の飼育水のアンモニア態窒素濃度(1μg/ml以下)では,pH9.25でもゾエアの生残に対する短期的な影響は認められなかった。一方,長期的な水温の影響については,27℃以上においてpH9.25区はpH8区よりも低い生残率となった。このことから真菌症の防除対策として飼育水のpHを9.25前後に調整するに当たっては,飼育水温が27℃未満であることが条件と考えられた。
  • 川辺 勝俊
    2001 年 49 巻 2 号 p. 185-189
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    1)活魚出荷サイズ(体重200~745g)のアカハタ天然魚を用いて,水温12.5~30.0℃における酸素消費量と平衡維持臨界値を求めた。
    2)単位体重当たりの酸素消費量R ml/kg/hは,水温T℃の上昇にしたがって指数関数的に増加し,下記の式で示された。
    R=5.3611*1.0913T(r=0.9495)
    3)水温15℃から25℃までの個体当たりの酸素消費量R'(R*W)ml/ind./hは,体重Wkgと水温T℃から下記の式で示された。
    R'=25.4585W+1.3027T-22.9348
    4)平衡維持臨界値は約0.26~0.93ml/lであった。
  • 佐藤 秀一, 石田 良太郎, 竹内 俊郎, 渡邉 武, 三橋 直人, 今泉 圭之輔, 青海 忠久
    2001 年 49 巻 2 号 p. 191-197
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ブリおよびヒラメ用配合飼料に無機質を添加する必要があるかどうかを検討する目的で,北洋魚粉のみをタンパク源とした飼料にリン,マグネシウム,亜鉛あるいはマンガンをそれぞれ無添加とした飼料を調製し,平均体重1.7gのブリおよび1.9gのヒラメ稚魚に8および5週間,給餌した。その結果,亜鉛あるいはマグネシウム無添加飼料で飼育したブリの成長が有意に劣り,ついでリン無添加飼料区の成長も劣った。一方,マンガンを無添加飼料では成長には影響があまりみられなかった。また,ヒラメでは,リン無添加飼料区で僅かに成長が劣った。脊椎骨中の亜鉛およびマンガン含量は両魚種とも,亜鉛あるいはマンガン無添加飼料区で最も低くなった。
    これら成長および魚体の無機質組成より,ブリおよびヒラメにおける魚粉中の無機質の利用性は高くなく,魚粉のみをタンパク源とした飼料はみかけ上,無機質を十分量含んでいても,利用性の高い無機質を添加しなければならないものと推察された。
  • 滝井 健二, 川村 幸嗣, 村田 誠, 瀬岡 学, 中村 元二, 村田 修, 熊井 英水, 吉澤 康子
    2001 年 49 巻 2 号 p. 199-206
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    平均体重22gのブリ稚魚を25日間飼育して,大豆トリプシンインヒビター(SBTI)に対する消化機能の適応について調べた。飼料へのSBTI添加はタンパク質消化率,増重率,消化器官重量,全魚体・肝臓の一般成分,摂餌後における消化管内容物のプロテアーゼ活性などに影響を及ぼさなかったが,添加量が増加するのに伴って摂餌3時間後の腸内容物量は減少し,逆に,摂餌3および6時間後の胃および幽門垂を含む腸組織のプロテアーゼ活性は増大する傾向にあった。以上の結果から,ブリはSBTI飼料に対して,摂餌後の早い時間より胃から腸への内容物の移行量を抑制するとともに,消化管のプロテアーゼの合成・分泌を促進して,消化吸収機能を充分に高く維持できることが示され,SBTIよりむしろ他の抗栄養因子によって,ブリ用飼料への大豆粕配合量が制限されている可能性が推察された。
  • S.M.A MOBIN, 金井 欣也, 吉越 一馬
    2001 年 49 巻 2 号 p. 207-218
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ワムシおよびアルテミア幼生を用い,給餌率を2,3の種苗生産施設で採用されている給餌量とその0.5,2.5,5倍に設定し,2回の飼育実験を行って,ヒラメ仔稚魚の成長,生残におよぼす給餌率の影響を検討した。その結果,平均日間成長率は給餌率の高い順に18.3,17.5,16.5および16.1%(実験1)であり,日令45における累積死亡率は給餌率が高い順に26,16.6,11.1および6.7%であった。2回の実験結果はほぼ一致しており,高い給餌率は仔稚魚の速やかな成長をもたらす反面,生残率を有意に低下させることが確認され,種苗生産過程において適正な給餌率の維持が大切であることが示唆された。
  • 秋山 真一, 滝井 健二, 眞岡 孝至, 大高 洽堂, 佐野 泰徳, 熊井 英水
    2001 年 49 巻 2 号 p. 219-224
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    沿岸魚粉の半量をCandida utilis(CYP)に代替しても消化率に影響は認められなかったが,Rhodotorula glutinis(RYP)に代替するといずれも低下し,特に,糖質消化率の低下が顕著であった。また,沿岸魚粉の半量および1/4量をCYPに代替した飼料区では,増重率は沿岸魚粉のみの対照飼料区より有意に高く,各種飼育成績,魚体の一般成分,血液性状,消化器官重量,消化管の生菌数に有意な区間差は認められなかった。一方,同様にしてRYPに代替した飼料区の成長や飼育成績は,対照飼料区に比べて劣悪で,腸の生菌数は減少する傾向にあった。CYPおよびRYPの必須アミノ酸組成に著しい差異が認められなかったことから,タンパク質源としての各種酵母粉末の栄養価は主に消化率によって制限され,その制限因子として細胞壁のマンナン,グルカン,キチンなど難消化性糖質と抗菌性物質の関与が推察された。
  • 細川 秀毅, 滝井 健二, 示野 貞夫, 竹田 正彦
    2001 年 49 巻 2 号 p. 225-229
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    マアジ筋肉エキス中のブリに対する摂餌刺激物質を検索するため,エキス成分の分析結果に基づいて調製した合成エキスを用いてオミッションテストを実施し,エキスの摂餌刺激性が主としてIMPに基因することを明らかにした。また,エキスにごく少量存在するADPとATPもそれらの濃度を増した場合には有効なことを示した。
  • 細川 秀毅, 示野 貞夫, 竹田 正彦
    2001 年 49 巻 2 号 p. 231-235
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    塩化コリンの添加量(mg/100 g飼料)が異なる精製飼料を用いて,ブリ稚魚のコリン欠乏症および要求量を調べた。欠乏症を調べる試験では,稚魚に塩化コリン無添加飼料(欠乏飼料)および800mg添加飼料(対照飼料)を与えた。対照区では20日間川頁調な成長がみられたが,欠乏区では5日以内に食欲減退および成長低下が発現した。欠乏区の半数の魚に8日目から対照飼料を与えたところ,これらの症状は3日以内に消失した。要求量を求める試験では,塩化コリンを0,10,25,50,100,200,300,400および800mg添加した飼料で稚魚を17日間飼育した。増重量と肝臓コリン含量を基準としたコリン要求量は,飼料100g当たり210~290mg(塩化物として)と推定された。
  • 笠井 久会, 渡辺 研一, 吉水 守
    2001 年 49 巻 2 号 p. 237-241
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    バッチ式海水電解装置を用い,3%食塩水を電気分解して得られた電解水の魚類病原細菌あるいはウイルスの殺菌・不活化効果を検討した。同時に飼育用水ならびに飼育排水の殺菌効果も検討した。1%濃度以上の食塩水を電気分解すると海水程度の次亜塩素酸が生成した。有効塩素濃度0.21mg/l,1分間の処理で供試細菌が99%以上,0.42mg/l,1分間の処理で供試ウイルスが99%以上不活化された。飼育用濾過海水については0.54mg/l,1分間の処理で99%以上,飼育排水についても0.64mg/l,5分間の処理で99%以上の殺菌効果が得られた。また,流水式海水電解装置との比較試験により,両装置はほぼ同等の殺菌能力を有すことが明らかになった。
  • 工藤 飛雄馬, 井ノ口 伸幸, 木島 明博
    2001 年 49 巻 2 号 p. 243-251
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ニジマスにおいて5×5組の総当たり交配を行い,ふ化後76,161,192,252日目の尾叉長と体重について二因子分散複合体を用いた狭義の遺伝率を推定した。その結果,尾叉長の狭義の遺伝率は0.030~0.295,体重の狭義の遺伝率は0.013~0.123であった。また,遺伝率は成長段階によって変化することが示された。
    完全同胞による広義の遺伝率と変動指数の信頼性を明らかにするために,5×5組の総当たり交配から親魚が重複しない5組の完全同胞を120組取り出し,完全同胞による尾叉長と体重の広義の遺伝率を推定し,総当たり交配から求めた狭義の遺伝率と比較した。その結果,飼育期間をとおして広義の遺伝率は狭義の遺伝率より高い値を示したが,母性効果や他の生理的要因などの影響が少ないと考えられた時期において,広義の遺伝率は狭義の遺伝率と近い値となることが示された。また,この時期において,広義の遺伝率と変動指数は高い正の相関関係を示し,さらに,変動指数の値は狭義の遺伝率とほぼ同じ程度の値を示すことから,変動指数は遺伝率を示す指標として用いることが可能であると考えられた。
  • 工藤 飛雄馬, 井ノ口 伸幸, 木島 明博
    2001 年 49 巻 2 号 p. 253-260
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    海水耐性形質の遺伝的変異を捉えることのできる評価方法として,平均死亡時間を使うことが可能であることを示した。そこで,総当たり交配によりニジマスの海水耐性の狭義の遺伝率を求めたところ0.538となり,高い遺伝的変異性が認められた。
    同一親魚による狭義の遺伝率と広義の遺伝率の関係を調査した結果,広義の遺伝率は過大評価するのの,過大評価を考慮することによって,海水耐性形質の遺伝的変異性を把握できることが分かった。
    変動指数は狭義の遺伝率よりも低い値を示し,過小評価するものの,過小評価を考慮することにより,遺伝的変異性を把握することができると考えられた。
    本研究で対象としたニジマスの養殖系統には,海水耐性形質において高い遺伝的変異性が保有されており,個体もしくは家系選択によって海水耐性品種の作出が可能であると考えられた。
  • 原田 和弘
    2001 年 49 巻 2 号 p. 261-262
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Green mussels, Perna viridis, attaching to cultured Japanese oysters, Crassostrea gigas, have been observed forming a mass covering the cultivated oysters of Hyogo Prefecture in recent years.Generally aerial exposure is used to rid culturing oysters of marine sessile organisms.The aerial tolerances of green mussels and of the cultured oysters were investigated in the open in the autumn of 1999.
    To remove the green mussels (less than 15mm) attached to the cultured oysters, exposure for 24hr to the air at maximum temperatures exceeding 20°C was effective.
  • Noritaka HIRAZAWA, Tatsuyoshi HIRATA, Kazuhiko HATA
    2001 年 49 巻 2 号 p. 263-264
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    The effect of dietary caprylic acid on the growth, condition factor and anatomical parameters of the tiger puffer Takifugu rubripes was examined. Tiger puffers, having a mean body weight of 34g, were fed the diet containing caprylic acid (5g/kg basal diet) to apparent satiety twice a day for 45 days. A control group was fed the diet withith control group was fed the diet witha mean body weight of 34g, were fed the diet containing caprylic acid (5g/kg basal diet) to apparent satiety twice a day for 45 days. A control group was fed the diet with no caprylic acid adsorbed. The difference in survibal between the two groups was not statistically significant. Daily feeding consumption and feed efficiency showed no difference. The difference in body weight, body length, condition factor, hepatosomatic index and hematocrit value was not statistically significant. These results suggest that dietary caprylic acid has no harmful influence on the growth, condition factor and anatomical parameters of the tiger puffer.
  • 片山 知史
    2001 年 49 巻 2 号 p. 265-269
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    青森県小川原湖に生息するワカサギの降海回遊魚と湖内滞留魚を識別する形態的差異を見いだすために,脊椎骨数の計数を行った。しかし,ほとんどの年級群において有為差が認められず,両者の問に脊椎骨数の差異は無いものと判断された。
    ワカサギが天然分布する日本の湖沼について,過去に報告されている各地の脊椎骨数のデータを併せてMultiple comparison testを行い,平均脊椎骨数を比較した。その結果5つのグループが検出されたが,それらは南北の地理的傾斜に対応していなかった。
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