水産増殖
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52 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 阿部 文彦, 枝川 大二郎, 菊池 誠治, 丸田 博一, 山岡 耕作
    2004 年 52 巻 2 号 p. 109-120
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    海藻生育と海洋生物蝟集を目的としたアマモ類似型海藻生育用基盤について野外研究を行った。2000年7月14日, 2×2mの鉄枠に固定した基盤を愛媛県御荘町室手湾の水深7mの砂底に設置した。長さ (長短) , 密度 (密疎) , 色 (緑白) に変化を持たせた6タイプの基盤区を作った。疎の基盤に生育した海藻の量は密の基盤より多かった。コアマモ域と砂底に調査区を設置し, 設置から1年間大潮ごとに各区で魚類のセンサスを行い比較した。基盤区では90種, コアマモ域では55種, 砂底では22種が観察され, 基盤区には有意に多くの魚類が蝟集することが明らかとなった。基盤の構造により比較した場合, 長密基盤区の種数, 個体数が最も多かった。2001年4月下旬に観察されたアオリイカの産卵は, 疎の基盤区で多くの卵が見られた。
  • 中屋 光裕, 高津 哲也, 中神 正康, 城 幹昌, 高橋 豊美
    2004 年 52 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    During the spring in the coastal waters of Hakodate Bay the shrimp Crangon uritai is the predominant predator on larval and juvenile marbled sole, Pleuronectes yokohamae. To investigate the prey preferences of C. uritai, P. yokohamae and two other prey species, a mysid Nipponomysis sp. and a gammarid Haustorioides japonicas, were used for predation experiments. Among the three prey organisms studied, Nipponomysis sp. was preyed on first, followed by P. yokohamae, and finally H. japonicas. Prey profitability did not differ between P. yokohamae and Nipponomysis sp., though H. japonicas was less profitable. Nipponomysis sp. was larger, more perceptible, and slower to escape than P. yokohamae. A relatively high abundance of mysid Nipponomysis sp. could restrict and reduce predation on P. yokohamae by C. uritai. Gammarid H, japonicas was able to escape relatively more easily, because its harder and slippery skin required more handling time than the other prey, possibly making it an undesirable food source for C. uritai. High perceptibility and low escape ability may be the most important factors affecting prey choice of C. uritai.
  • 古屋野 太一, 和田 哲
    2004 年 52 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    2002年4月から2002年12月まで土佐湾内の浦ノ内湾において, マガキガイの月ごとの密度変化と5年間の漁獲量の変化を調査した。その結果, 月ごとの密度変化は明瞭な季節的変動が見られず, 繁殖期に高密度となる他地域の研究報告と異なっていた。この理由として, 本種の漁獲が本調査地の高密度形成を妨げ, 本調査地では本種の再生産がほとんどおこなわれていないことが示唆された。しかし, 1998年から2002年までの漁獲日数あたりの漁獲量には変化が見られなかったため, 他地域から加入した幼生が浦ノ内湾における漁獲個体群の安定化に貢献していると考えられる。
  • 今井 正, 豊田 惠聖, 秋山 信彦
    2004 年 52 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    淡水飼育条件下において異なるアルテミアの給餌頻度でテナガエビ幼生を飼育することにより, 幼生の摂餌機会数の違いと生残の関係を調べた。淡水湖の諏訪湖, 汽水湖の佐鳴湖および河川の太田川に生息するテナガエビの幼生を淡水中でアルテミアを1日1回, 2回, 4回の3条件の給餌頻度で飼育した。諏訪湖産と佐鳴湖産では1日2回までの給餌ではポストラーバに到達できても20個体中1個体だけであったが, 1日4回の給餌にすると繰り返した3回の実験それぞれで20個体中1~5個体がポストラーバに到達した。これに対し, 太田川産では給餌頻度にかかわらず, 第2ゾエア期へ脱皮する個体すらなかった。淡水湖と汽水湖に生息するテナガエビの幼生は, 給餌頻度を増やすことで摂餌機会が増大し, 淡水中でもポストラーバまで生残可能となることが明らかとなった。
  • 五利江 重昭, 反田 實
    2004 年 52 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海の播磨灘北東部海域で採集したマアナゴ稚魚の成長, ならびに成長段階ごとの食性を調べた。レプトケファルスは2001年3~5月に, 着底した稚魚は2001年4~9月と2003年5~8月に採集された。稚魚が採集された海域の水深は10~20mで, 底質は細砂~砂礫であった。5月に平均全長が80mmの着底魚は9月に約190mmまで成長するため, レプトケファルスは4~5月に変態を完了して底生生活に移行し, 年内に漁獲加入すると考えられた。稚魚の主な胃内容物は甲殻類と多毛類であり, 両者は摂餌数から見た胃内容物組成の60~100%を占めていたため, マアナゴ稚魚の重要な餌生物であると思われた。また甲殻類の内訳はヨコエビ類とエビ・カニ類であった。湿重量から見た胃内容物組成では, 全長130mmを境にヨコエビ類からエビ・カニ類や多毛類に移行する様子がうかがえた。
  • 山本 敏哉, 野崎 健太郎
    2004 年 52 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ヨシ群落が持つ魚類の初期の生育場所としての価値を評価するために, 琵琶湖において1994年の4月から7月に, 8グループの微小甲殻類の出現量の時間変化を調べた。8グループの中では, ゾウミジンコ, ノープリウス幼生, マルミジンコ科, カイミジンコ, アオムキミジンコが優占していた。ヨシ群落の岸近くにおいて, 微小甲殻類の現存量は全体として188~3290個体/lの間で変動した。季節的には4月下旬と5月下旬にピークがあったが, 6月以降は低い値で推移した。微小甲殻類は5月上旬から6月中旬にかけてヨシ群落内でも岸近くの方が多くなっていた。1960年代に同じヨシ群落で調べられた結果と比較したところ, 1994年の方が有意に出現量が多かった。特に, カイミジンコは1960年代には全く出現していなかったのと対照的であった。これらの大きな変化は近年の沿岸帯の環境および生物群集の変化を反映しているのかもしれない。
  • 古橋 真, 海野 徹也, 渡辺 崇司, 中川 平介, 酒本 秀一
    2004 年 52 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    魚粉配合量を変えて, タンパク質含量を45, 40, 35および30%に調整した飼料をアユに投与して, 成長, 飼料効率, 体成分から至適飼料タンパク質量を求めた。また, 飼料タンパク質が消化管の性状に及ぼす影響を調べた。飼料効率とタンパク質効率は, タンパク質含量が低くなるにつれて減少したが, 45~35%の問では統計的有意差は認められなかった。体長, 体重, 肥満度および肝臓体重比は減少する傾向が認められたが, 45~35%, そして35%と30%間では差はなく, 筋肉比と腹腔内蓄積脂質体重比は各区で同程度であった。飼料タンパク質量の減少と共に幽門垂の盲管数, 盲管の直径, 盲管内の襞の高さと幅は減少する傾向が認められた。腸管長は飼料タンパク質量の減少に伴い伸長する傾向がみられたが, 腸管内の襞の高さは有意に低くなった。本結果より, 成長から判断したアユ用飼料至適タンパク質含量は40%程度であり, また, タンパク質含量を35%まで減らしても, 成長には有意差が出るほどの影響はないことが分かった。
  • 遠藤 雅人, 斎藤 真由, 竹内 俊郎
    2004 年 52 巻 2 号 p. 159-165
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    タマミジンコ給餌におけるティラピア仔稚魚の最適給餌率の把握と同条件下における飼育時の成長式の確立を目的として水温28℃で飼育実験を行った。実験1では1日3回給餌時の飽食量と魚体重 (21.2~397.5mg) との関係を調べた。実験2では最適給餌率を把握するため, 魚体重32.3, 72.6および189.7mgのティラピア稚魚を供試し, 異なる給餌率 (飽食率の33.3%, 66.6%および100%) で飼育実験を行い, 餌料効率を調査した。餌料効率は全ての魚体重で給餌率が高くなるに伴い, 向上し, 飽食摂餌時にほぼ最大となることがわかった。このことから, 本飼育条件下では飽食率が最適給餌率であると結論付けられた。実験1の飽食摂餌時の魚体重別成長率から成長式を算出し, その適合性を調べるため, 開口直後の仔魚を用いて4週間の連続飼育を行った。その結果, 実測値と理論値は良く一致した (X2-test, P>0.05) 。
  • 荒山 和則, 河野 博
    2004 年 52 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    館山湾の砂浜海岸砕波帯において, シロギス仔稚魚とその主要餌生物の鉛直分布を明らかにするとともに, シロギス仔稚魚にとっての餌料環境について検討した。調査の結果, 合計319個体のシロギス仔稚魚が採集されたが, 全ての個体が底層から採集された。また, シロギス仔稚魚の消化管内容物を調査したところ, カイアシ類 (アカルチア科, パラカラヌス科, オイトナ属) と多毛類幼生及びアミ類が主要な餌生物であった。これらの鉛直分布を調査したところ, 主に表層よりも底層に分布していることが判明した。このことから, 底層はシロギス仔稚魚に優れた餌料環境を提供していることが考えられた。一方, シロギス仔稚魚とその主要餌生物が表層よりも底層に多く分布したのは, 砕波帯内の流れによってもたらされる受動的な現象ではなく, 水流が弱いと考えられる底層において能動的に定位行動を行った結果であると考えられた。
  • 楠田 聡, 小出 展久, 川村 洋司, 寺西 哲夫, 山羽 悦郎, 荒井 克俊
    2004 年 52 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    イトウ精子の凍結保存における適切な保存液を開発するため, 受精率を指標に耐凍剤の種類を検討した。300mMグルコースを90%, 耐凍剤 (DMSO, メタノール, グリセリン) を10%含む保存液で精液を4倍に希釈し, 予めドライアイスに開けた小孔に100μlずつ滴下し凍結した。滴下3分後に各ペレットを液体窒素に投入し, 2時間以上浸漬した。各種ペレット4粒を30℃の120mM NaHCO3 16ml中で解凍し, 20gの卵に媒精した。卵は8℃の水中に14時間以上静置した後, ブアン氏液で固定し, 卵割の有無を指標に受精率を算出した。受精率は耐凍剤がメタノールの場合に最も高く, DMSO, グリセリンの順に有意に低下した。メタノールを含む保存液で凍結した精液は, DMSOを含む保存液で凍結した精液より約2倍高い受精率を示した。以上の結果は, メタノールがイトウ精子の耐凍剤として適していることを示唆している。
  • 斎藤 大樹, 荒井 克俊, 山羽 悦郎
    2004 年 52 巻 2 号 p. 177-184
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    20℃におけるシマウキゴリの胚発生過程を詳細に観察した。さらに, 卵割期における単一割球の標識実験により, 胚盤における分化の方向性が決定される時期を明らかにした。その結果, 未受精卵の段階から細胞質が卵黄から分離していること, 体節形成期に至るまで胚細胞中には卵黄顆粒が分布しているが体節形成期以降消失し胚体が透明化すること, 第3卵割以降, 卵割の様式が不規則になることが明らかとなった。また, 16細胞期から32細胞期に標識された細胞追跡の結果, 胞胚期から初期嚢胚期まで, 標識細胞は未標識の細胞と胚盤内で大規模な混合を起こすことが明らかとなった。この結果は, 初期嚢胚期まで胚盤の細胞は分化多能性を有していることを示唆している。
  • 芹澤 (松山) 和世, 山崎 悟, 北出 幸広, 芹澤 如比古, 桑野 和可, 嵯峨 直恆
    2004 年 52 巻 2 号 p. 185-198
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ウシケノリ目植物の15分類形質を57株のSSU rRNAによる分子系統樹を基にACCTRAN最適化配置によって復元した。系統樹では, 多くの株が3つのクレード, すなわち, 1つのウシケノリクレードと2つのウシケノリーアマノリ複合クレードに分岐した。これはウシケノリ属やアマノリ属が各々単系統ではないことを示している。復元の結果, 配偶体の形態 (属の分類形質) の進化は少なくとも円柱状から葉状へ2回, 葉状から円柱状へ1回起き; 配偶体の細胞層 (フタエアマノリ亜属の分類形質) の進化は一層から二層へ1回起き; 配偶体の葉緑体数 (フタツボシアマノリ亜属の分類形質) の進化は, 1個から2個へ2回, 異なる系統で起こったと示唆された。他の分類形質についても, いくつかのまとまりは確認されたが, 同じ形質状態を持つ株が様々な系統で見られ上記の分類形質はどれもSSU rRNAの系統を反映していないと結論づけられた。なお, 本報はウシケノリ目植物の分類形質の復元に関する初めての報告である。
  • 秋本 恒基, 林 宗徳, 岩淵 光伸, 山元 憲一
    2004 年 52 巻 2 号 p. 199-200
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    Median lethal oxygen-saturation (LC50) in the pen shell Atrina (Servatrina) lischkeana increased from 4.9% to 9.8% for 48 hours and from 7.4% to 14.9% for 72 hours with the rise in the water temperature from 20.0°C to 27.5°C. However, all of these survived at 20.0°C for 24 hours and at 22.5 - 27.5°C for 12 hours in 0% oxygen saturation, and at 20.0 - 27.5°C for 3 days in 20% saturation. Based on the reaearch in the Ariake Sea, the mortality of the pen shell in the Ariake Sea was supposed not to be directly caused by hypoxia.
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