水産増殖
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52 巻, 3 号
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  • 道津 光生, 野村 浩貴, 太田 雅隆, 柏木 正章
    2004 年 52 巻 3 号 p. 215-219
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    コンブ群落形成域と隣接する磯焼け域より, 毎月30-50個体のキタムラサキウニを採集し, 餌料環境の異なる2つの生息場における成長を比較した。コンブ群落内のウニの消化管内容物の強熱減量は磯焼け域のものよりも高い傾向を示した。コンブ群落内のウニの殻径は8齢までは磯焼け域のウニに比較して有意に大きかったが, 9齢以降は成長差が認められなくなった。
  • 土井 敏男, 青山 茂
    2004 年 52 巻 3 号 p. 221-229
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    飼育下において, 摂餌開始期のケツギョSiniperca chuatsi仔魚の食性を調べるため, 異なる種類の餌料生物を与えた場合の捕食状況と初期摂餌後の生残率を観察した。ケツギョ仔魚は自身の肛門前長 (平均2.44mm) より長い仔魚類を捕食し, ふ化後15日以上生残した。また, 自身とほぼ同じ全長 (平均5.80mm) の仔魚さえも捕らえ, その体の一部分を消化して, 残った部分を吐き出した。一方, 本種仔魚は口径 (縦径: 平均1.2mm, 幅: 平均0.79mm) より小さな動物性プランクトン類をまったく捕食せず, ふ化後9日以内に餓死した。照明下と暗黒下での捕食状況を比較したところ, 本種の摂餌は, 暗黒下 (3~13%) より照明下 (37~47%) で有意に多く, 仔魚の捕食は主に視覚によると考えられた。
  • 加藤 元一, 岡内 正典, 中神 秀一
    2004 年 52 巻 3 号 p. 231-237
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    内圧式中空糸型限外 (UF) 濾過膜を用いた濃縮装置により, 餌料用単細胞珪藻類Chaetoceros gracilisChaetoceros calcitransの濃縮処理を行い, 濃縮効率と処理後の細胞増殖を調査した。500l原液の濃縮試験の結果, 濃縮後の細胞密度はCh. gracilisで13×107細胞/ml, Ch. calcitransでは16~18×107細胞/mlで, 両種とも濃縮処理による損失は認められず, 濃縮倍率は20~30倍, 処理時間は約30分であった。また, 再生試験の結果, Ch. gracilisでは30日以内, Ch. calcitransでは25日以内の保存を行った細胞は大規模培養の元種として利用できることがわかった。これらの結果から, 本濃縮装置を利用した処理技術は適切であり, 餌料培養の効率化に貢献できる。
  • 森 俊介, 山崎 綾乃, 芹澤 (松山) 和世, 福田 覚, 水田 浩之, 嵯峨 直恆
    2004 年 52 巻 3 号 p. 239-244
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    スサビノリ無菌培養株を無菌状態で培養した藻体を対照実験系とし, 共生細菌BPY-W6, BPY-W8を添加した株について, それぞれ葉長, 葉幅を測定し, これらのデータに基づき葉面積, 形態指標値を算出した。共生細菌BPY-W6, BPY-W8を添加した株の平均葉長・葉幅はどちらも対照実験株より大きかった。平均葉面積はBPY-W6を添加した株で121.4倍, BPY-W8を添加した株で76.8倍の大きさを示した。形態指標値より, BPY-W6を添加した株は卵形, BPY-W8を添加した株は楕円形に近い配偶体を形成する傾向が見られた。BPY-W6およびBPY-W8はともにスサビノリの成長に影響を及ぼすことがわかった。影響の度合は細菌株によって異なることが示唆された。
  • 高谷 義幸, 蛯谷 勝浩, 高橋 正士, 堀井 貴司
    2004 年 52 巻 3 号 p. 245-249
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    北海道白老町沖の水深7mと12mの海底に設置した実験区画に, 隣接海域から採集した後, 標識したウバガイ3, 460個体と3, 185個体を移殖放流した。
    放流後6日目の区画内の個体数は, 7m区で2, 200±658 (推定値±95%信頼区間, 以下同様) , 12m区で1, 872±668個体と推定され, 生残率はそれぞれ64±18%および59±21%であった。放流後27日目では7m区で2, 700±722個体, 12m区で1, 368±721個体と推定され, 生残率はそれぞれ78±20%および43±23%であった。
    放流後の減耗要因は, 底質の状況, 死殻の所見および捕食者の生息状況から, 放流後6日目までは, 7m区でヒトデ類やタマガイ類による捕食, 12m区では主としてヒトデ類による捕食であると考えられた。放流後6日目から27日目まで期間は, 7m区では減耗は認められなかったが, 12m区ではヒトデ類による捕食が続いていた。
    これらのことから, ウバガイの移殖放流を行うに当たっては, 放流場所の底質および捕食者の有無や分布状況を調査することによって適地を選定する必要があると考えられた。
  • 樋口 真理可, 古屋野 太一, 伊藤 篤, 和田 哲
    2004 年 52 巻 3 号 p. 251-258
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    高知県浦ノ内湾及び沖ノ島周辺で採集されたマガキガイの捕食者防御行動について室内実験をおこなった。本種は成長に伴い貝殻外唇部が肥厚するので, 外唇部が厚さと防御行動の関係に着目した。ほぼ同一サイズの個体を用いた室内実験の結果, 捕食者であるソメンヤドカリは外唇部の薄い個体を選択的に捕食したが, 外唇部の肥厚によって捕食者防御行動に対する明瞭な影響は認められなかった。また, 本種の行動に対する同一水槽内のソメンヤドカリの影響は認められなかった。ソメンヤドカリに捕らえられたマガキガイは多量の粘液を分泌したが, 粘液の有無による本種の行動においても有意な違いは認められなかった。一方, つぶしたマガキガイが入った水槽では, コントロール条件に比べて本種が有意に早く完全埋没 (自分の貝殻が底質表面から見えなくなるまで潜砂した状態) に至った。
  • 今井 正
    2004 年 52 巻 3 号 p. 259-264
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    秋田県鶴潟沼に生息するヌカエビの額角歯相の成長に伴う変化を調べて, その数が完成する大きさを明らかにした。上縁歯は第6ゾエア期で1本を生じ, 下縁では第8ゾエア期で1本を生じた。体長12mmに達すると雌雄の判別が可能になったが, 上縁, 下縁の歯数は共に雌雄で差がなかった。この時, 上下縁にはそれぞれ平均で10.0本と2.3本の歯を有していた。13mmになると下縁歯は2.4本となり, 抱卵個体が有する数と同じになったが, 上縁歯は未完成であった。15mmに達すると, 上縁歯も平均10.5本となり完成した。よって, ヌカエビの額角歯相は体長15mmで完成するから, 歯数を調査する場合, この大きさ以上の個体だけを用いる必要がある。
  • 鬼倉 徳雄, 岸 克行, 中村 亜希子
    2004 年 52 巻 3 号 p. 265-270
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    17種類の農薬について, ミジンコ2種の急性毒性試験および繁殖阻害試験, 魚卵仔魚短期毒性試験と単細胞緑藻成長阻害試験を行い, それらの毒性データについて主成分分析とクラスター分析を行い, 農薬毒性の分類を試みた。ミジンコ類については10ppbを下回る濃度で急性毒性を示した農薬が数種存在した。ミジンコの繁殖試験では多くの農薬で急性毒性値よりも低い濃度で毒性を示した。強い魚毒性, 緑藻毒性を示したのは1および2種であった (10ppb以下) 。各農薬の毒性データについて主成分分析を行ったところ, 寄与率が高かったのは3成分であった。それぞれミジンコ類への毒性寄与が大きい, 緑藻への毒性寄与が大きい, 魚への毒性寄与が大きい成分であった。また, その結果を使ってクラスター分析を行ったところ, 6つのクラスターに分類された。本研究のように数種の生物の毒性を評価することは, 生態系への配慮として重要であると考えられる。
  • Patricia Yumi Morimoto KOFUJI, 道広 夕海, 細川 秀毅, 益本 俊郎
    2004 年 52 巻 3 号 p. 271-277
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    コーングルテンミール (CGM) は魚粉代替タンパク質源として養魚飼料に多用されているが, ブリではその消化性が低い。本研究では, 消化性が劣る理由を明らかにするために, CGMに対するタンパク質消化性をin vivoin vitro法で魚粉と比較した。In vivo法では, 消化管内容物のpH, ペプシンおよびトリプシン活性および活性化トリプシンの割合に魚粉とCGMとの問で差が無かった。一方in vitro法では, 胃と幽門垂組織抽出物によるCGMタンパク質分解量が魚粉に比べ低かった。したがって, ブリのCGMに対する消化性の低さは, タンパク質消化酵素の分泌には関係なく, むしろ分泌された酵素のCGMに対する分解力が劣るためと考えられた。
  • 堀江 晋, 谷浦 興, 海野 徹也, 中川 平介, 荒井 克俊
    2004 年 52 巻 3 号 p. 279-286
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ドジョウMisgurnus anguillicaudatus自然四倍体 (4n) の産する二倍体 (2n) 配偶子の受精と染色体操作により作成した六倍体 (6n) 雌の卵と二倍体, 四倍体, および六倍体雄の精子を受精し, 各々, 四倍体 (6n雌×2n雄) , 五倍体 (6n×4n) および六倍体 (6n×6n) 子孫を作出した。そして, これらを1年間倍数体毎に個別の水槽で, そして, その後2年2カ月間同一の水槽で混合飼育し, 特性の比較を行った。その結果, 3年2カ月齢の六倍体の成長は五倍体, 四倍体に著しく劣り, 体重で約半分程度であった。また, 体長/頭長比が有意に低いことが判明した。
  • 中村 智幸, 片野 修, 山本 祥一郎
    2004 年 52 巻 3 号 p. 287-291
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    コクチバスによる在来魚への捕食圧を軽減するうえでの水草帯設置の効果を実験的に検証した。屋外実験池8面のうち4面に, クサヨシを1m2の範囲に100本植え, 他の4面は無植栽とした。そして, 各池にコクチバス3尾とフナおよびウグイを各20尾放流し, 1期14日間, 計2期, フナとウグイの被食数を調べた。その結果, 両種ともにクサヨシ帯を設置した池では, 被食数が有意に減少することが明らかになった。この結果は, 自然水域における水草帯の保全・拡大が, コクチバスによる在来魚への捕食圧を軽減するうえで効果的であることを示す。
  • 天野 春菜, 深田 陽久, 藤田 敏明, 小林 直人, 坂岡 桂一郎, 原 彰彦
    2004 年 52 巻 3 号 p. 293-300
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ハイドロキシルアパタイトおよびゲル濾過カラムを用いて, Vgの構成成分である卵黄蛋白Lvをメバチマグロ卵巣から精製した。精製Lvはゲル濾過において300kDa, SDS-PAGEでは105kDaであった。Lvを抗原とした特異抗体は, Western blottingでは雄血清とは反応せず, 雌血清とのみ特異的に反応した。雌血清で観察されたバンドは210kDaであり, Vgであると考えられた。精製Lvをスタンダードとしアクリジニウム標識抗体を用いて, simultaneous CLIAによるメバチマグロVg測定系を確立した。測定範囲は0.97-1000ng/mlであり, 卵抽出液と雌血清の希釈系列は精製Lvスタンダードカーブと平行性を示した。アッセイ内およびアッセイ間変動係数は10%未満であった。さらに, 本測定系はクロマグロ, キハダマグロおよびブリと免疫交叉性を示した。ハワイ沖で捕獲したメバチマグロ雌魚では7個体中3個体からVgが検出され, 雄個体からVgは検出されなかった。
  • Hyuma KUDO, Masaaki OOMORI
    2004 年 52 巻 3 号 p. 301-302
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    In order to establish effective methods for masculinization in kokanee salmon (Oncorhynchus nerka), the effects of a single 2-hr immersion treatment of 17α-methyltestosterone (MT) on the sex of gonads during early development were investigated. All groups treated with 400μg/l MT at eyed eggs and juveniles stages (0, 10 and 16 days after hatching) showed higher percentages of male development (76.7-100%) ; this MT treatment resulted in 100% males in eyed eggs and juveniles 0 day after hatching. At all dosages of MT (50, 100, 200 and 400μg/l), eyed eggs showed higher percentages of male (76.2-97.0%) than the untreated controls (48-60%) ; the 200 and 400μg/l MT dosages produced a significantly higher percentage of males (96.1 and 97.0% each) than the other dosages. These results indicate that a single treatment of MT at a dose of 200-400μg/l is a highly effective method for masculinization in kokanee salmon at developmental stages from eyed eggs to just hatching.
  • 後藤 孝信, 池端 佑仁, 山東 佑輔, 木根 悠太, 原崎 孝
    2004 年 52 巻 3 号 p. 303-304
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    Enzyme activities relating to sulfur-containing amino acid metabolism were determined in the liver of eel Anguilla japonica. When taurine precursors were incubated with liver homogenate, no significant hypotaurine and/or taurine formations were observed; very small hypotaurine was formed from cysteamine. In contrast, detectable cystathionine γ-lyase activity was found when L-homoserine was used as a substrate. In transaminase activities, significant level of cysteinesulfinate transamination was detected in the liver of eel, and transamination of aspartate was eight times greater than that of alanine. Our data suggest a possibility that eel has a low capacity in biosynthesizing taurine in its liver.
  • Haruo SUGITA, Yoshiko NOGUCHI, Yoko ITO, Mikihei KUROSAKI
    2004 年 52 巻 3 号 p. 305-306
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    Forty-five of 360 isolates from flounder's intestines and seawater showed antibacterial activities against one to all of four pathogens, and they were members of family Vibrionaceae. The 16S rDNA of 15 isolates with high activities were sequenced and analyzed. As a result, eight sequences were 98.1 to 99.4% similar to Vibrio harveyi, five were 97.4 to 99.0% similar to Vibrio ichthyoenteri and two were 98.1% similar to Vibrio fischeri.
  • 松岡 正信
    2004 年 52 巻 3 号 p. 307-311
    発行日: 2004/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    カンパチ, イサキ, キジハタおよびヒラメにおける鼻孔隔皮欠損の出現率を調べた。カンパチでは60%とかなり高率であった。イサキでは37%, キジハタでは15%であった。ヒラメについては3機関の稚魚を調べたところ, 何れも1%前後と非常に低率であった。以上のように, 鼻孔隔皮欠損の出現率には魚種によって大きな違いが認められた。
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