水産増殖
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55 巻, 3 号
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  • Pallab Kumer SARKER, 深田 陽久, 益本 俊郎
    2007 年 55 巻 3 号 p. 319-324
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    飼料リン吸収率測定に適した採糞方法を決定するため, 実験1では第一リン酸カリウムを0.89%添加した卵白アルブミン主体の精製試験飼料をブリ (406g) に与え, 圧迫法 (給餌7hと24h) とコレクター法で採糞した。圧迫法では時間によって吸収率に大きな開きがあった。コレクター法の値は圧迫法の24hの値に近似していた。実験2ではブリ (917g) に市販飼料を給餌して, 6h毎の総糞中リン含量を測定したところ, 排泄リン量は経時的に減少した。したがって, 再現性の高いリン吸収率値を得るには, コレクター法による採糞が望ましいことがわかった。
  • 秋月 晃, 田端 正明, 川村 嘉応
    2007 年 55 巻 3 号 p. 325-330
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ノリ養殖において酸処理剤および酸処理技術の向上のため, 酸処理剤に使用されている有機酸のうち, 特に強い殺菌効果を持つと言われている乳酸と主な4種類の有機酸 (リンゴ酸, クエン酸, グルコン酸, 酒石酸) とによるアカグサレ菌の致死効果について検討した。その結果, 乳酸は他の4種類の有機酸に比べ, 同じpH値であれば強い致死効果を示した。また, 4種類の有機酸では, pH2.0前後でのみアカグサレ菌を死滅させたが, 乳酸ではpH3.0~5.0でも死滅させたことから, その成分自体が致死効果を持つと考えられた。
  • 斉藤 英俊, 泊野 洋治, 山地 幹成, 河合 幸一郎, 今林 博道
    2007 年 55 巻 3 号 p. 331-345
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    広島県沿岸域における着底後のアサリの資源動態および生息環境の基礎知見を得るために広島湾および備後灘で広域調査を行なった。自然加入個体とみられるアサリ (殻長: <20mm) の生息密度は, 広島湾では, 湾奥部で高密度 (≧40個体/0.1m2以上) に出現していたが, 湾中央部では低密度 (<20個体/0.1m2) となる傾向があった。一方備後灘では, 生息密度の分布状況に顕著な特徴がみられなかった。丸型指数 (殻幅/殻長) は, 肥満度 (軟体部重量/ {殻長×殻高×殻幅} ×100) との間に負の相関関係を示した。高い肥満度 (≧15) は, 広島湾では全地点でみられたが, 備後灘では東部のみでみられた。備後灘では, 泥分率, 極粗砂率, 強熱減量およびクロロフィルa量およびホトトギスガイ出現数から算定された環境特性の増加にともなってアサリの密度, 肥満度および相対個体数から算定された資源特性も増大したが, 広島湾では相関がみられなかった。
  • 真崎 邦彦, 山浦 啓治, 青戸 泉, 大隈 斉
    2007 年 55 巻 3 号 p. 347-354
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    マナマコ種苗の放流後における発見率の低下原因を究明するため, 1997年~1999年に肥前町大浦浜地先に造成された人工礁内と陸上水槽で放流試験を行った。人工礁内で稚ナマコを網袋に収容して飼育したところ, 112~214日後の生残率は, 平均体長13.3~16.5mmサイズの場合平均50.4% (37.1~63.6%) , 28.1~38.5mmサイズでは平均80.9% (64.3~98.0%) であり, 小サイズでも大きな減耗はみられなかった。また, 網篭の中に収容した稚ナマコは, 2日間でその約80%が網篭から逸散した。さらに, 積石した陸上水槽での稚ナマコの発見率は, 夜間約40%から昼間10%程度に低下し, 日周運動が確認された。これらから, 放流現場での発見率の低下は稚ナマコの斃死よりも, 急速な逸散と日周運動 (背光性) の影響を受けているものと考えられた。
  • 真崎 邦彦, 山浦 啓治, 青戸 泉, 大隈 斉, 金丸 彦一郎, 伊東 義信
    2007 年 55 巻 3 号 p. 355-366
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    '96年に佐賀県肥前町大浦浜地先に自然石で造成した800m2の人工礁に, マナマコ人工種苗を大量放流し追跡調査を行った。人工礁に放流されたマナマコは, ふ化22月後・放流11~16月後で体長160~170mm, 体重170~200g前後に成長することが示唆された。人工礁内や周辺の岩礁域で成長した放流マナマコは, 各区域のCPUEとその増加傾向から外海に開く水道の方向に移動すると考えられた。
  • 木曾 克裕, 小菅 丈治
    2007 年 55 巻 3 号 p. 367-371
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    沖縄県石垣島周辺海域で籠, 一本釣り, 刺網, 電燈潜りなどで漁獲され, 魚市場に水揚げされたフエフキダイ科3種 (イソフエフキ, ハマフエフキ, タテシマフエフキ) の胃内容物と腸管内容物を比較した。空胃または空腸および漁獲に使用した餌だけが出現した個体を除くと, 3魚種とも餌生物が見られる個体の出現頻度は腸管内容物の方が高かった。腸管内容物として出現した生物の出現頻度からみて, フエフキダイ科魚類が捕食していた生物に関する情報を得る上で, 硬組織をほとんど持たない生物を除けば腸管内容物調査が胃内容物調査よりも効率的である。
  • 山元 憲一, 半田 岳志, 茅野 昌大, 白石 亮之
    2007 年 55 巻 3 号 p. 373-379
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    実験は, マナマコについて呼吸樹での換水と体腔内圧の関係を調べた。1換水周期での吸入水量と1換水周期の時間は1換水周期での吸入回数の増加に伴って増大した。しかし, 1換水周期での吸入回数に関係なく, 換水量は同じ値を示した。1換水周期での吸入回数に関係なく, 呼吸樹からの排出は体腔内圧 (mmH2O) が7.9~8.1に達すると開始し, 吸入は3.5~4.0に低下すると開始した。換水は体壁を押さえると停止し, 体腔内圧が7.6~7.8に低下すると再開した。これらのことから, マナマコは体の大きさを変化させても所定の体腔内圧に達するまで吸入を続けた後一気に排出することによって単位時間での換水量を一定に維持していることが明らかとなった。
  • 山元 憲一, 半田 岳志, 茅野 直登
    2007 年 55 巻 3 号 p. 381-385
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    タイラギを用いて, 餌の投与前後の換水運動を観察し, 同時に換水量, 酸素利用率, 酸素摂取量の変化を調べた。タイラギは, Chaetoceros glacilis (26, 519 cell/ml) を投与すると換水運動を時々換水を行う間歇型から連続型に変化させて換水量を38倍増加させた。この時, 酸素摂取量の増加は1.2倍にすぎなかった。餌の投与前後のいずれも, 海水の外套腔内への吸入とそれからの排出は完全に同調して行われていた。以上のことから, タイラギは摂餌時には連続型, 常時は間歇型の換水を行っていると推測した。
  • 中原 泰彦, 萩原 篤志, 三矢 泰彦, 平山 和次
    2007 年 55 巻 3 号 p. 387-394
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    本州中部以西から南西諸島に広く分布する3種の両側回遊性ヌマエビ類であるトゲナシヌマエビ, ヒメヌマエビ, ミゾレヌマエビの種やゾエア令期の判別方法を検討するために, 体各部の形態を比較した。3種とも形態が非常に類似していた。唯一, 頭胸甲背面正中線上の隆起の形態や位置によって種を判別することができた。ただし, 第1ゾエア期では隆起が出現せず, 第2ゾエア期においては隆起が不明瞭であったため, 形態による種の判別はできなかった。
    ゾエア幼生の令期については付属肢や尾部の形態などにより容易に判別が可能であった。また発達の様式はトゲナシヌマエビ, ヒメヌマエビではほぼ同様であったが, ミゾレヌマエビはゾエアの期間が短く, 令期数が少なかった。両側回遊型ヌマエビ類ゾエア幼生の種の判別は, これまで色素胞の位置関係によって第1, 第2ゾエア期まで可能であったが, 本研究によって第3ゾエア期以降でも種の査定とゾエア令期の判別ができるようになり, さらにはテナガエビ科など他のコエビ目の幼生との判別も可能となった。
  • 土橋 靖史, 高鳥 暢子, 栗山 功, 羽生 和宏, 辻 将治, 津本 欣吾
    2007 年 55 巻 3 号 p. 395-402
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    マハタ親魚を陸上水槽に収容し, 2004年から2005年の間飼育した。環境制御区は4月から7月下旬まで14.5℃~17.0℃の低温および6L: 18Dの短日処理を行った後, 9月までに18.5℃の加温および14L: 10Dの長日処理を行った。対照区は自然水温および自然日長とした。8月30日には, 環境制御区では卵黄球期の卵が採取されたが, 対照区では周辺仁期卵および過熟卵が採取された。HCG投与による人工授精では, 環境制御区では受精卵を得ることができたが, 対照区では受精卵を得ることができなかった。得られた卵の浮上卵率, 受精率, ふ化率とSAIおよび飼育試験の10日齢生残率は, 通常の5月採卵の値と比較して有意な差は認められず, 稚魚まで生産することができた。以上の結果から水温および日長調整により, マハタ親魚から9月に採卵できることが明らかになった。
  • 中坪 俊之, 廣瀬 一美
    2007 年 55 巻 3 号 p. 403-407
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    飼育下において, マンボウ8個体の全長を計測し, 追跡法により成長を調べた。140~1556日の飼育期間では供試魚はすべて直線的な成長を示した。同様の成長傾向を示した7個体の供試魚の成長データを基に, 推定年齢を算定し, 集団的にvon Bertalanffyの成長曲線の当てはめを行った結果, 次式が得られた。
    TLt=318.4× {1-exp [-0.149× (t-0.031) ] }
    マンボウが全長3mに達するためには約20年を要し, 今回用いた供試魚は, すべて成長期であることが推測された。
  • 上出 貴士, 竹内 照文
    2007 年 55 巻 3 号 p. 409-415
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    水温20.3~26.6℃で, 平均体重1589のマダイの胃でのEP飼料消化時間は24時間, 腸では72時間を要していると考えられた。懸濁物のC/N比が給餌後3時間まではEP飼料と同じであり, その後急速に上昇することから, 給餌後3時問までの懸濁物を残餌, それ以降を糞として区別した。給餌量に対する残餌の割合はEP飼料で3.6~15.6%, MP飼料で10.1~19.2%であった。糞はEP飼料では給餌量の4.1~14.7%が, MP飼料では2.6~10.8%がそれぞれ排泄された。MP飼料はEP飼料と比較すると, 乾重換算にして給餌量で1.9倍, 残餌量で3.5倍, 糞量で1.5倍, 懸濁物量で2.4倍となった。また, EP飼料を用いた実験において, 給餌後3時間までに排出されるNの48.3~57.4%が残餌として排出されることが明らかになった。従って, 残餌を抑制した給餌の励行が窒素負荷軽減に有効であると考えられた。
  • 井口 恵一朗, 武島 弘彦
    2007 年 55 巻 3 号 p. 417-421
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    Drifting larvae of amphidromous ayu, Plecoglossus altivelis must encounter seawater at the river mouth where adaptability to salinity has an influence over their early survival. Salinity tolerance of newly hatched larvae of ayu was investigated employing two different tests. One represented a traditional way, in which survival rates of larvae held in 120 % artificial seawater were compared between treatments at 18 or 26°C ×for 24 or 48 hours. Judging from the outcomes that fluctuated according to the conditions, this test was found to be less appropriate as a measure of salinity tolerance. Another approach was rather novel, using larvae exposed to 180% artificial seawater at 26°C. The mean survival period was successful in separating clutches by their salinity tolerance ability. In addition, time spent for the test was comparatively short, which could set larvae free from the limitation of energy expenditure. In case of evaluating the salinity tolerance of yolk-sac larvae with focusing on the performance of chloride cells, we propose the acute test based on individual survival periods because of its convenience.
  • 中本 崇, 稲田 善和, 牛嶋 敏夫, 萩原 篤志
    2007 年 55 巻 3 号 p. 423-429
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ミジンコを高密度で培養するため, 通気による個体への物理的ダメージを避け, 本種の遊泳速度 (約3cm/s) 以下の流速で, かつDOを十分供給するため, 二重, 三重, 四重パイプの通気装置を試作した。28℃下でクロレラを給餌し, 培養を3日間行い, 0.5m3水槽では, 三重, 四重パイプの通気装置で湿重量2, 8509 (28.5個体/ml) と2, 900g (29.0個体/ml) , 1.0m3水槽では四重の装置で7, 650g (38.2個体/ml) の収穫が得られ, ミジンコの高密度大量培養に成功した。
  • 杉田 毅, 山本 剛史, 古板 博文
    2007 年 55 巻 3 号 p. 431-440
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    高脂質低タンパク質飼料がマダイ稚魚の成長および肝膵臓の酵素活性に及ぼす影響を検討するため, 粗脂肪 (CF) 15%, 粗タンパク質 (CP) 52%の飼料を対照に, 魚油でCFを20および24%に増大してCPを43および37%に削減した飼料, ならびに同飼料に添加した魚油の45%をパーム油で代替した飼料を作製し, 平均体重11.4gのマダイに12週間給与した (2水槽/飼料) 。増重率, 日間成長率および飼料効率は対照区で最も優れていた。肝膵臓における脂肪酸合成酵素およびアミノ基転移酵素の活性は, 試験飼料区において低く, 特にパーム油添加飼料区において顕著であった。一方, 糖新生酵素活性は, パーム油添加飼料区において顕著に減少した。これらの結果から, マダイ稚魚は高脂質低タンパク質飼料を効率的に利用できないこと, パーム油は魚油よりも肝膵臓における脂肪酸合成, アミノ基転移および糖新生を強く抑制することが示された。
  • Agus KURNIA, 佐藤 秀一, 倉本 大輔, 半澤 敏
    2007 年 55 巻 3 号 p. 441-447
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    合成および天然由来の異なるアスタキサンチン (Asx) 源のマダイの色揚げ効果について検討した。飼料中のAsx含量を30 mg/kgとなるように合成アスタキサンチン, パフィア酵母およびAsx産生海洋細菌 (Paracoccus sp.) を添加した飼料をマダイ (91.8 g) に12週間給餌した。その結果, パフィア酵母およびParacoccus sp.を添加した飼料で, 皮膚のAsx含量が合成Asx添加区に比較し高くなった。なかでも, Paracoccus sp.を添加した区で最も高くなった。Paracoccus sp.にはAsx以外のカロテノイドも豊富に含まれることより, 他の色素もマダイの色揚げに関与しているのではないかと推察された。
  • 楊 淑娟, 瀬岡 学, 高岡 治, 池 承哲, ビッシャシュ アマル, 滝井 健二, 熊井 英水
    2007 年 55 巻 3 号 p. 449-458
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    北洋魚粉・大豆油飼料へのドコサへキサエン酸 (DHA) と大豆レシチン (SL) の添加が, イシダイの卵質や産卵成績に及ぼす効果について検討した。飼料D1 (2%DHA+3%SL) , D2 (3%SL) およびD3 (2%DHA) を, 各3♀ (体重867g) : 3♂ (1269g) からなる3親魚群に, それぞれ1日1回飽食給与して12週間飼育したところ, D1とD3区では浮上卵率と無給餌生残指数 (SAI) が高く, D2区では卵重とSAIは有意に低くて産卵数は多かった。一方, D1とD3区ではD2区より卵・卵巣・筋肉DHA含量が高かったが, 卵・卵巣・筋肉リン脂質含量に飼料間差はみられなかった。以上の結果から, 大豆油を主な脂質源とする親魚飼料へのDHA添加が卵質や仔魚発育の改善に効果を持つことが示唆された。
  • Amal Kumar BISWAS, 池 承哲, 瀬岡 学, 滝井 健二
    2007 年 55 巻 3 号 p. 459-465
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    大豆粕による魚粉代替とフィターゼ添加が消化吸収に及ぼす影響をマダイ (平均体重78g) で検討した。魚粉 (FM) 70% (F) , FM55%+大豆粕 (SM) 15% (S15) , FM45%+SM25% (S25) , FM25%+SM45% (S45) およびS25+3000TFUフィターゼ (S25+P) の各飼料を, 6週間給与して水温21℃で飼育した。SM配合量が増加するのに伴って, タンパク質・エネルギー消化率とともに摂餌量と飼育成績が低下した。しかし, S25+P区の消化率, 摂餌量, 終了時の魚体重はF区に近いレベルにまで改善し, 飼育水へのリン負荷量は他区より有意に低下した (P<0.05) 。このように, FMのSMへの代替は栄養素やエネルギーの消化率を低下させるが, フィターゼの添加で消化率とともにリン負荷量を改善できることが示唆された。
  • 木村 創, 山内 信, 能登谷 正浩
    2007 年 55 巻 3 号 p. 467-473
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    和歌山県田辺湾における養殖ヒロメは海水温が20℃以下となったとき海面で養成を行うことにより天然に採取されるものより1ヶ月早い2月初旬に出荷できる。著者らは年内出荷を目的に20℃より高水温期に養成を試みたが, 種苗が消失する現象が認められた。本試験では早期生産の可能性と生長不良の原因を明らかにすることを目的に海水温が22℃, 21℃, 20℃, 18℃となったとき網生簀の内と外で養成を開始し, その後の生長を比較した。その結果, 網生簀の内で養成を開始した種苗は消失することなく, 22℃の比較的高温においても1月中旬に出荷サイズ (平均葉長35cm以上) となった。すなわち高水温であっても網生簀の内で養成することにより促成栽培が可能であることが明らかとなった。一方網生簀の外で養成した種苗のうち, 22, 21℃では養成開始直後から胞子体先端にハミ跡が観察され, 沖出し1ヶ月後には幼胞子体は消失した。この消失の原因はブダイとアイゴの摂餌試験結果からアイゴの捕食と推察された。
  • 後藤 孝信, 秋山 絵里, 佐藤 千恵子, 宇川 正治, 高木 修作
    2007 年 55 巻 3 号 p. 475-476
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    Juvenile yellowtail was fed on a diet containing soybean protein concentrate (SPC) supplemented with graded levels of taurine for 21 weeks, and the hepatic enzyme activities were determined. Fish fed the taurine unsupplemented SPC diet showed inferior growth performance with lower hepatic taurine level, but the dietary taurine improved the condition. Among the dietary treatments, no significant difference was observed in hepatic cholinesterase and leucine aminopeptidase activities. However, the increased dietary level of taurine significantly elevated hepatic aspartate and alanine aminotransferase activities. These data indicated the possibility that taurine enhanced the growth rate of yellowtail via improving amino acid metabolism.
  • 長澤 和也, 海野 徹也, Mark J. GRYGIER
    2007 年 55 巻 3 号 p. 477-481
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    河川に放流されたアユの生態や行動を研究するときに, 放流されたアユを明確に識別することが重要である。ここでは, これまでに出版されたアユの寄生虫に関する文献調査に基づき, 琵琶湖に固有な2種の寄生虫, Raphidascaris gigi (アニサキス科線虫) とアユ杯頭条虫Proteocephalus plecoglossi (杯頭条虫科) を自然標識として用いることによって琵琶湖産アユと他のアユ (天然遡上アユあるいは人工孵化アユ) を識別する可能性を示唆した。特にRaphidascaris gigiはアユの腹腔内に幼虫として留まっているため, アユの放流時から斃死までの長い期間にわたって有用な生物標識として使える可能性が高い。
  • 服部 克也, 蒲原 聡, 原田 靖子, 柿沼 誠
    2007 年 55 巻 3 号 p. 483-487
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ノリ養殖におけるあかぐされ病の病害軽減を目的として, PCR法により2004年と2005年において愛知県内漁場15定点の海水中の遊走子を病害蔓延菌量レベル (数百個/500ml) で検出を試みた。2004年においては, 12月14日で全ての定点が陽性となり, 病害は蔓延状態となった。水温は平年 (1994年から2003年の平均) に比べて約2℃高く, 塩分濃度は約2psu低かった。2005年においては水温の急激な低下に伴い, PCR法で陽1生反応を示す漁場が減少し, 12月13日に全ての定点が陰性となり, 病害は終息した。水温は平年に比べて約2℃低く, 塩分濃度はやや高かった。病害傾向を予測するためには, PCR法により漁場海水中の遊走子量を監視するとともに, 水温や塩分濃度などを同時に監視して総合的に考察していく必要がある
  • 2007 年 55 巻 3 号 p. 489-506
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2010/03/09
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